前編
一瞬にして目を奪われるほどの衝撃。
風に揺れる金髪
きらめく赤い目
高い身長
長い脚
小さい顔
大きな目
女の私が見惚れるほどきれいだった。
「桜です。よろしく。」
透き通るような声で彼女は自己紹介をする。
彼女が歩いてのをクラス中が見ていた。
「よろしくね。」
隣に座った彼女は笑顔で言った。
「………うん…。」
うつむきながら小さな声で答えるしかなかった。
彼女はそれからずっと輪の中心。
彼女は私にはまぶしすぎた。
私とは世界が違う人。
ここ数日、見ていれば見るほどそう感じる。
丁寧な言葉遣い
人を楽しませるコミュニケーション能力
人を虜にする、笑顔。
どれも私が持っていないものばかり。
羨ましかった。
本に出てくるお姫様みたいで。
きらきらしていた。
聞けばどこかのお嬢様らしい。
海外からなぜこんな普通の高校に入学したのか。
親が「普通」を教えるためか。
そんなこと私には関係ないけれど、いやでも考えてしまう。
いつも暗かった景色が、彼女が来てから余計に暗くなった。
彼女が私の光まで吸い取っていくような気がして。
他人には持っていないものを持っているのに。
どうしてまだ他人からとっていくのか。
私は放課後、いつも屋上に来る。
成績が優秀であれば、先生からの信頼を得ることなんて簡単。
なんとでも言えば屋上のカギなんてすぐに貸してくれる。
その時に作った合い鍵を持って、私は今日も屋上に向かう。
屋上の扉の前で、見慣れた金髪が見えた。
「……桜さん?」
私の声に振り向いた彼女に、いつもの光がない気がした。
「あ、!えっと…」
すぐに光をともした彼女は私の名前が思い出せないのか、困った表情をする。
「どうしてここにいるの?」
「屋上に出たかったんだけど、ここの屋上にはカギがかかっているのね!」
困った表情を隠しながらここに来た理由を伝えてくれる彼女。
こういうのも、私には持っていないモノの一つ。
「内緒だよ?」
そう言って私はカギを開けて扉を開く。
「!いいの?lovely!!」
彼女は屋上へ飛び出していった。
屋上に吹く風
照らす太陽
すべてが彼女を輝かせた。
「んーーっ!」
大きく伸びをした彼女は私のほうを振り向いてこういった。
「ありがとう!…ここに来たかった意味、教えるね。」
そう言って彼女はポケットから四角い モノ を取り出した。
誤字脱字報告してくれるとうれしいです




