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 〇・五章 十年前を振り返り、十年後からの独り言

 十年前を振り返ると、思わず溜息が出る。

 振り返ると言うか、振り返させられたと言った方が正確だろうけど。あの一年は、僕にとって背負うべき咎で、刻まれた傷痕なんだから仕方がない。何を言っているんだろう、僕は。こう言う言い回しを好む年齢は、とうの昔に卒業した筈なのに。

「しっかし、僕達、良くこんな出会い方で進展しましたね……」

 ……十年も一緒に居る所為か、若干相手の口調が伝染ってしまっていた。それもまた十年前を『思い出し』、そう感じた。

 そして自分たちを客観視出来るようになって初めて、僕等の異常性に気付く。

 小学生と高校生という要素を除いたとしても、それ以外の部分がとても異質だ、と。

 片や全てを犠牲にしようとも突き進み、片や相手の異常性に気付きつつも拒絶しない。

 お互い普通ではない要素があったからこそ、上手く噛み合ったのだとは思う。愛する事に飢える者と愛される事に飢える者。ベクトルが綺麗に合致した。僕等が出会ったのはいわゆる一つの運命なのかもしれない、と思ってしまう程。決して綺麗なお付き合いとは呼べないものではあったけど、そこには他者が決して踏み入れられない純真があった。

 世間は絶対に僕等を認めないし、許さない。きっと『気持ち悪い』と一蹴するだろう。僕等も誰かに理解を求める様な事はしない。二人だけの世界があれば、それで満足だったから。

だからこそ、僕等は全速力であの一年を走り抜けた。

 そして、まさか『こう言う形』で、それらを振り返り、懐かしさに打ちひしがれる事になるとは全く予想していなかった。

 本当に、人生とはどう転ぶか分からない。

 ただ一つ、この十年で学んだ確かな事は起こりようのない奇跡は絶対に起こらないという事。

 そんな『零の可能性』と見比べてしまうと『千分の一の奇跡』であろうと見劣ってしまう。

 ないものばかりを強請ってしまうのは、人間の性で、罪なんだろう。

「はぁ……。もう、こんな事を考えるのはやめようって、思うんですけどね」

 どうしても、有りもしない『もしかしたら』を考えてしまう。

 と、余り夜遅くまで起きていると、彼女も起きだしてきてしまう。

 僕は大人しく電気を消し、彼女が眠る寝台へと潜り込んだ。

 夢の中でまた、過去の記憶が蘇る事を願って――もしくは怯えて――

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