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5章 謝罪方法=焼きそば

《第5章》

 近所のスーパーに到着した俺とロロは、とりあえず野菜売り場を徘徊していた。野菜1つ1つの値段表示に視線を送りながら、割引きになっているものを探す。

 クソ。なかなか見つからねぇな。やっぱ時間帯の問題か。

 ダメ元でロロにも聞いてみる。

「ロロ。そっちは見つかったか? 」

「いえ。こちらも見つかりません」

「そうか。なら、しゃあない。普通に買うか」

「主! あちらに気になるコーナーがありますっ! 」

「ん? どうし、ーーッ⁉︎ 」

 ロロが俺の袖を引っ張って示した場所には、『処分品セール』と書かれているコーナーがあった!

 これは安いものが期待できる! 安く買い物ができるぞ!

 と、思ったが。ふと俺は思い出す。俺は一体、どういう目的で昼飯を作ろうとしているのかを。

 そうだよ! アイーシャに謝る為に昼飯作ろうとしてんのに、賞味期限犠牲にして価格優先とか謝る気0じゃねぇか! 全然反省してねぇじゃねぇか! 何やってんだ俺のバカ!

「ロロ。やっぱり普通に買おう。そっちの方が美味いもんが作れそうだ」

「そうですか。まあ、主はそう言うだろうと思っていましたよ」

 俺は『処分セール』の選択肢を捨てて、目の前の野菜達に目線を移した。昼飯は男の料理である焼きそばを振る舞おうと思っているので、それに使う玉ねぎと萌やし、ピーマンを選ぶ事にした。

 3人分だからな。玉ねぎは2玉、萌やしは1袋、ピーマンは細めに切るから2つもありゃ足りるか。

 買う個数は決まったので、あとは産地を確認するのみ。

 うむ。これで良いな。

 そして、選んだ野菜達を買い物カゴに入れて、次は肉を探しに精肉コーナーに向かった。

 肉は豚バラで良いかな。

 精肉コーナーに着いた俺は、豚バラ肉の小間切れと書いてあるパックが集まっている場所に行き、産地、新鮮さ、1パック当たりの量を見て慎重に選ぶ。それらを総合的に判断して、俺はその中から1つを取って買い物カゴに入れた。

 で後は、麺か。麺は焼きそば用の麺で良いか。

 麺類売り場にやって来た俺は、焼きそば用の麺を手に取り、賞味期限を確認してから念の為4袋カゴに入れた。

 よし。こんなもんかな。ソースとかは家にまだ余ってるのがあるし、足りなければ詰め替え用のもあるからそれを使えば良い。

「もう良いか」

「そうですね」

 そして、俺とロロはレジに向かった。

 ピッ。ピッ。と言う電子音と共に商品のバーコードが読み取られていき、最終的な合計金額が表示される。

「合計で、948円になります」

「えーと。それじゃ、1000円で」

「1000円お預かりいたします。52円のお釣りです。ありがとうございましたー」

 俺は釣り銭を受け取り、買い物カゴを持って、袋詰めをするスペースに向かった。

「ロロ。買い物バッグ」

「はい。主」

 ロロは返事をして、可愛らしい淡い水色のワンピースのポケットから正方形に小さく折り畳まれた買い物バッグを取り出す。

「サンキュ」

 俺はそれを受け取って、中に買ったものを入れていく。基本として、重いものを下に、軽いものを上に置くのが普通だ。俺はそのセオリー通りにものを入れた。

「さ、帰るぞ」

「はい」

 少し軽めのバッグを持ってスーパーから出る。

 アイーシャ、喜んでくれりゃ良いが。

「ん? 」

 スーパーを出てしばらく歩いていると、俺はある1人の人影を見つけた。だが。

何だ? この感じは……。ただの人間の筈なのに、それとは違うもっと異質な何かを感じる……。

「……ッ⁉︎ 」

「おや」と言うように、その口が動いた気がした。そして、その直後には、その人間はゆうに5mはあろうかと言う距離を移動して、俺の前に立っていた。が、その人間の意識は俺ではなくロロに向いていた。

 その人間は、身長は俺と同じくらいの少年だった。特徴的なのは、その髪の色と瞳の色で、いずれもロロのものと同じ色をしていた。しかし、俺の意識はそこには向いていなかった。

 なんと、普段は滅多に顔に出してまで敵意を表現しないロロが、今はその目に完全な敵意を宿して目の前にいる少年を睨みつけているからだ。

「ロロ? 」

「ハハ。良い目だなぁ、オリジナル。どうやら新しいご主人様とは上手くやってるみたいだな」

「あなたには関係ありません……! 」

 明らかな怒気を含んだその言葉を受けた少年は、それを楽しむように笑みを浮かべ言う。

「そんな酷い事を言うなよ、『姉ちゃん』? 」

「あなたは、私の『弟』なんかじゃない……! あなたは最低最悪の過ちを犯した! 」

「姉? 弟? おい。それって一体、どういう……」

「お前は黙ってろ。人間如きが」

「何を、……。うっ! 」

 少年が俺を睨んだ瞬間。俺の頭を突如として猛烈な頭痛が襲い、それと共に体全体を麻痺したような感覚が支配した。まともに立つ事もできず、俺はその場に倒れた。

「カ、あグ、ア……」

 な、何が、起きてんだ……?

「やめて! 主を殺さないで! 」

「酸素って、人間がこの世で生きていく上で重要なもんだけどさー。酸素を単体で吸うと、すんげぇー猛毒なんだってな! 」

「が、あ…………」

「やめて‼︎ 」

「どうすっかな〜。姉ちゃんがその気じゃないんだったら、このままこいつの息の音を止めーー」

「やめろ‼︎ 」

 ロロが一際大きく叫んだと思った時には、目の前に立っている少年の上半身の左半分が綺麗さっぱり消し飛んでいた。それと同時に俺を襲っていた麻痺は消えたが、頭はまだ少し痛んでいる。

 ロロが、能力を使ったのか……?

 だが、そんな事が気にならなくなる程の出来事が目の前で起きていた。その少年の断面からは、全く、1滴たりとも血液が流れていなかったのである。

「全く。随分な事をしてくれるなぁ〜。いくら再生能力特化だったあいつを『食った』からって、消し飛ばされると構成から組み直さないといけないから困るんだよ」

 少年は残った半分の口でそんな事を言った。すると、断面からボコボコと盛り上がっていくようにして、少年の上半身の左半分が元に戻っていった。完全に体が元通りになった少年は、ロロに向かって拍手をしながら言った。

「いやー。力の使い方を忘れていないようで良かった。力の方もほとんど衰えてない。200年程使ってないようだったから、忘れてるんじゃないかと心配してたんだよ」

「早く。私の目の前から消えてください。さもないと今度は体全体を消しますよ……? 」

「おー怖い怖い。流石はオリジナルってとこか。んじや、お言葉通りここは退散するとしますか」

 立ち去ろうとする少年に、俺は痛む頭を押さえながら問う。

「お前はロロの何なんだ? 」

 少年は、一旦立ち止まったものの、俺の方を見る事なく答えた。

「言ったろ? 『弟』だよ」

 そう言った直後には、自分の事を『弟』と言った少年はこの場からいなくなっていた。すると、ロロが突然ドサリとその場に膝をついて、大きく息を切らせていた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「おいロロ。大丈夫か? 」

「何とか、大丈夫、です……」

「無理すんなよ。ほら、おぶってやる」

「はい。すみません……」

 そう言って、ロロは素直に俺の背中に乗った。

「よっと。んじゃ、行くぞ」

 そうして少し歩いて、俺は背中にいるロロに言った。

「ロロ。さっきのあいつ、誰なんだ? お前の『弟』だとか言ってたが」

「確かにあの人は私の『弟』です」

「て事は、ロロには他にも兄弟がいるのか? 」

「はい。あの人以外に、あと5人いました」

「いました? 」

「はい。3人は生き残っていますが、後の2人は、あの人によって『食べられました』」

「な……。そいつは、自分の兄弟を『食った』のか? 」

「はい。『食べて』、その能力を奪いました。恐らく、私を、対立を止められなかった不甲斐ない『姉』を」

「へぇー。そう」

 すると、俺の反応が気に食わなかったのか、ロロが俺の耳を無言で引っ張った。

「いてててて! 痛いって! やめろ、落としたらどうすんだ! 」

 俺が慌てて言うと、ロロは自分にも被害が及ぶ事は流石に避けたいようで少しして手を離した。

「あー、痛。落としたらどうすんだよ、全く」

「主の反応があまりにもドライだったので、ついカッとなってやりました」

「何だその殺人犯みたいな動機は。だが、うん。まあ、確かに軽く思ってたのは否定できないな」

「どうしてですか? 理由によっては今度は鼻をつまみますよ? 」

「ああ。簡単な事だ。お前の兄弟が困ってて、そんでお前自身も困ってんなら、俺が救ってやる。まとめて全部救ってやる。ただそれだけの事だ」

 それを聞いたロロは、初めはクスクスと小さく笑っていたものの、堪え切れなくなったのかとうとう大きな声で笑い始めた。

「ふふ。あははははは! 」

「な、何だよ」

「いえ、すみません。忘れてましたよ。主がそういう人間だという事を」

 そう笑い混じりに言うロロ。俺は途端に自分の言った事が恥ずかしくなって黙り込んだ。

 ロロは、そんな俺に構わずに続ける。

「ええ。すっかり忘れてましたよ。主は初めからそうでしたね。では、今回もよろしく頼みます」

「おう。任しとけ」

 そう言った俺は、家の前でロロを下ろして帰宅した。

 さて。途中で問題はあったが、昼飯を作るのに変わりはない! で、アイーシャに謝る!

 台所に立った俺は、手を洗って気合を入れ直した。


 ○ ○ ○


「できた」

 俺は、出来上がった焼きそばを皿に盛り付け、テーブルに置いた。そして、廊下に出て2階に向かって言った。

「アイーシャ、昼飯できたぞー。食べてくれー」

「今行くわね〜」

 アイーシャの声がすると、すぐに階段の上にアイーシャが姿を現した。

「あ! 美味しそうな匂いがするわ〜」

「美味そうな匂いがするのは分かったから目をつぶって階段を下りるな! 」

「でも〜、落ちたら龍海君が受け止めてくれるんでしょう? 」

「お、おう。やってやろうじゃねぇか」

 俺は倒れるだろうがな。

 しかし、結局階段から落ちる事なく1階に下りたアイーシャは、リビングに入るととても嬉しそうな声を上げた。

「あら〜、焼きそばね〜! 1度男の人が作ったのを食べてみたかったのよ〜」

「え? アイーシャ、焼きそば食った事無かったのか? 」

「カップは何回かあるけど〜、こうして男の人が作ったのを食べるのは初めてね〜。だって〜、焼きそばは男の料理って言うじゃない? だから〜、1度食べてみたかったのよ〜」

「そうか! だったらじゃんじゃん食ってくれ! まあ、一応、詫びのつもりでもあるからさ」

 恥ずかし混じりに頬を掻きながら言う俺に、アイーシャはきょとんとした顔で言った。

「あら〜? もしかして龍海君、まだあの事気にしてたの〜? 」

「あ、ああ。酷い事言っちまったからな。悪かった! 本当にごめん! 」

「良いのよ〜? そんなにしなくても〜」

「いや、でも! 」

「あの時言ったでしょ〜? 良いのよ〜って。だから気にしなくて良かったのに〜」

 若干申し訳なさそうに言うアイーシャ。だが、どこか嬉しそうでもあった。

「どうやら、主の思い過ごしだったようですね」

 リビングに入って来ながら言うロロ。その指摘に俺は少し気恥ずかしさを感じながら、2人に言った。

「さ、冷めない内に食べようぜ! 熱いものは熱い内が1番だ! 」

 俺は2人をイスに促して、自分もイスに座る。

「それじゃ、いただきます」

 そして、焼きそばを1口すする。

 うむ。安定の美味さだ。ナイス俺!

 他の2人の反応はと言うと。

「安定した美味しさ。グッジョブです主」

「絶妙な焼き加減ね〜。ソースも麺によく絡んで、とても美味しいわ〜」

 なかなかの高評価をいただけた様子。俺は内心でガッツポーズを取った。

 よし。アイーシャにも許してもらえたし、とりあえずは一安心だな。という事で。さっさと食って宿題を片付けねぇとな。

 俺は、美味しそうに焼きそばを食べているアイーシャに言った。

「アイーシャ。また、宿題手伝ってくれるか? 」

「もちろん、良いわよ〜」

 アイーシャは、驚く事も嫌がる事もせず、笑顔でそう言った。


 その後、俺は何故か無駄に張り切っていたアイーシャの授業によって、寝るその瞬間までノンストップで勉強をする羽目になった。

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