「Sucesor」
ドッタンバッタンと朝(?)から騒がしい。
その騒音のせいで目が覚めた。
死んでいても眠たくなるんだな。と要らない知識が増えた。
「おはよう。よく眠れた?」
「ナヴィー…」
ニッコリと清楚に微笑む。同性の私でさえもあまりの綺麗さにうっとりとしてしまうほどの笑顔。整った顔。
彼女は天界の王、俗に言う「神様」だそうだ。
そんな彼女がエプロン姿。鍋を持っている。
「フフッこれが何なのか気になるのかしら?」
全てを見透かした様に聞く彼女。嘘はつけそうにない。まぁつく必要もないが。
「はい。その鍋の意味、騒音がとても気になります」
「あらあら、敬語なんかじゃなくてもいいのに(クスリ」
何故か、ナヴィーは大人びた喋り方をする。
「この鍋はね、料理が入ってるだけなのよ」
「…そんなに大量の料理が必要ですか?」
確かに天界には沢山の人(?)が居る。
ナヴィーに私、沢山の天使達。
それにしてもこの料理の量は多すぎると思う。
「そうよ。特に今日は、ね。」
意味深に呟く彼女。
ナヴィーは全てが謎に包まれている。そんな感じがする。
「なにかあるんですか?」
「…」
黙りこんでしまった。何かまずかったのだろうか――――と月は心配になった。
数分間の沈黙の後、ナヴィーが先に口を開いた。
「私がもうすぐ消えるから――――」
「――――は?」
ナヴィー曰く、神様の任期は人間界での1000年らしい。
ナヴィーは今年で1000年目との事。次の人に神様の座を渡さなければならない。と。
連続で神様の座に着くことは出来ないというルールがあるらしい。
その次の神様を決めるのがこの今日のお祭りから6ヵ月後までの間と。
本来、天界に魂が留まるのは人間界で言う600年。
神様になって天界に留まらせて貰ってるだけだと。
神様ではなくなったら私は、天界から排除される。とナヴィーは零した。
「まぁ、それが定なんだもの。こんな愚痴零してもしかたないわよね(フフっ」
これは偽物(作りもの)の笑顔だ――――――っと月は直感的に理解した。
本当は消えたくないのだ、と。
まだ神様をやりたいのだ、と。
まだ皆を眺めて笑っていたいのだ、と。
ナヴィーはきっとそう思っている。と思った。
「さ、行きましょう。月」
「ナヴィー。今日のお祭りで大体誰が神様になるのか決まるの?」
「まぁ、そうね。ほぼ私が勝手に決めるんだけど」
「神様になった人は譲れないの?」
「神の座の継承式をして、継承終了と同時に消えるから、無理よ」
うつむいて答える。
「こんな暗い話は終わり。折角の祭なんだから楽しみましょう(ニッコリ」
今までの話をなかったことにしたいと思っているのか、無理に笑顔を作っていた。
月は、ナヴィーを追いつめる行為だと思ったのか、失礼だと思ったのか
それ以上は問い詰めなかった。
「精一杯目一杯アピールしてね。月が神様になることだってあるんだから^^」
「私なんか無理ですよ(苦笑」
「分からないわよ?」
「無理ですって(笑)あ、これ持っていきますね」
「ありがとう(ニッコリ」
パタパタパタ...
月の足音が小さくなっていく。
完全に聴こえなくなったころ、孤独の神様は呟いた。
「もう、決まっている」と――――――――