「小さなすれ違いと大きな恨み」
それは…ほんの少しのすれ違いから始まった。
小さな小さなすれ違い。
そこから大きな物へと変化して―――――
――――――――――…
その2人は、かつては親友だった神様と閻魔様。
かつて、人間だった時に引き起こしたすれ違い。
それが、死んでからもなお続いて――――
死んでから始まった神様と閻魔様の大戦争――――――…
―――――――…
「月、おはよう!!」
月と呼ばれる少女に声をかけた少女――――那留は後の閻魔様。
那留に声をかけられた少女――――月は後の神様となる少女であった。
幼馴染であり、親友でもある那留と月。趣味も同じで、大体の意見が同じだった。
「おはよう那留(ニコッ」
いつも通り他愛ない話をしながら登校する。
いつも通りのはず、だった――――――…
「―――――ということで、私は野菜を植える、山崎君の考えの方がいいと思います」
総合の時間、花壇に何を植えるかを話し合っていた。
でた意見は、野菜を植える。花を植える。この2つだった。
「私も山崎君の意見に賛成かな~野菜だったら食べれるし、ね。月」
月も同じ意見で居てくれるだろう。そう那留は思って月に声をかける。
全てはここから始まった――――…
「私としてはね、やっぱり花壇だから花を植えたいな。だって野菜を植えても、嫌いな人だっているでしょう?枯れたら食べられなくてガッカリするでしょう?雀等の鳥に食べられたり、モグラなどに根を食いちぎられたら終わりでしょう?花なら、観賞するだけだし、枯れても特にガッカリすることも無いでしょう?だから私は、花を植えたいな」
初めてだった。月と那留の意見がここまで食い違ったのは。
そこから少しずつ、少しずつ―――――…
「周りはやっぱり☆で埋めようよ」
「いや、花の方が良いんじゃない?作るという楽しみも味わえるし、一色だけではないから楽しみを味わえるよ」
月は、那留の意見を反対する。
「そうだね。月の意見に賛成かな」
そして、皆はいつも月の意見に賛成した。
―――――…
「山田君格好良くない?」
「私は、沖田君の方が格好いいと思うな」
好きな人も、好みも今までずっと一緒だった。
気になる人も、何もかも。
だから、こんなに意見がすれ違うなんて今までなかったのに―――――――…
「将来は漫画家になりたいなー!!」
「私は小説家になりたいな」
今までずっと将来の夢も同じだったのに…
少しずつ、少しずつすれ違って行く。
ある日の学校の行き道。
いつも通り月と那留は並んで歩く。
「月ー!!」
「どうしたの?」
同じクラスの子に声をかけられ振り向く月。
ここから本格的なすれ違いは始まる―――――…
振り向いた際、ドンッと月と那留が当たった。
はじき飛ばされた那留。
「那留!?ごめんね。大丈夫!?」
急いで声をかける月。
「う…うん。大丈夫」
そう言って立ちあがろうとした瞬間―――――…
グチャ
えげつない音がした。
乗用車より大きい車は、視野の範囲が狭い。だから、座っていた那留に気付かなかった。
そして那留の右手は―――――…
「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
車に、潰されてしまった――――――…
「誰か!!救急車を呼んで!!」
そう月が叫んだ。でも那留は、その声を聞く前に、痛みで気を失ってしまっていた――――――…
―――――…
「右手の骨はボキボキに折れていて、元の形に戻れるか分かりません。神経が麻痺しています。右手はもう使い物にならないかもしれませんね―――――」
「―――――ッッ!!」
漫画家を目指していた那留。
右手で何年も、何年もかけて絵を描いてきた。
今更、左手で出来るものか。左手で、あれ以上の絵が描けるものか。
漫画家を諦めなきゃいけない。
あっさりと夢を諦めなくてはいけないなんて。那留は泣き崩れた。
――――もしかして月はわざと私にぶつかったんじゃないの?――――
許さない―――ゆるさない―――許サナイ―――ユ ル サ ナ イ――――
偶然が、大きな恨みを作ってしまった――――…