表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

第3話 艦魂という存在

悲鳴を聞いて、姉の河内と明石が摂津の元に駆けつけた。

駆逐艦連中は操艦に手一杯で来れなかった。後で考えれば、これは幸いした。


艦魂は、艦に宿るものなので、その艦を離れる事が出来ない。

ただし、艦同士なら別で、自由に行き来出来る。摂津が姉の戦艦「河内」を訪ねたり、その逆も可能だ。

もちろん防護巡洋艦「明石」にも行けるが、摂津はやらないだろう。

往来するには、テレポーションというか瞬間移動というか、艦魂だけが持つ能力を使う。

その移動距離はやはり限りがあるものだが、艦隊の範囲内であれば、まずは可能である。


駆けつけた二人の見た光景は、胸を両手で抱え、素っ裸で(うずくま)る摂津と、

それを呆然と見下ろす士官服の男であった。


「あ、貴方なのっ! 私の妹を裸にし、襲おうとしたのは!」


河内の剣幕に我に帰った男は、慌てて弁解する。


「待て! 俺は別に何もしていない!」

「待ても何も、この状況は・・・ 問答無用っ!」


河内は今にも男に飛び掛っていきそうな勢いである。

いろいろと口うるさく説教する河内だが、その反面、妹を深く愛していた。

妹の事となると見境無くなるのは、彼女の悪い癖だ。

それを制したのは、明石だった。


「待って下さい河内中将。

どうやら摂津少将は、身包み剥がされて襲われそうになった訳ではない様です」

「どうしてそうだと解るの? 明石中尉」

「脱がした服がありません」


明石は端的に答えた。


「でも、別の場所で脱がして・・・」

「それでしたら、あれは何でしょうか?」


明石は砲塔の隅に畳まれた軍服を指差した。


「あれは摂津の軍装みたいね・・・ だったら・・・」

「俺が甲板に出た時、彼女は既に素っ裸で立っていたんだ」


男の説明もあって、河内は一つの結論に達した。


「だったら摂津、貴方は又、裸になっていたの?」

「・・・うん・・・ごめんなさい・・・お姉ちゃん・・・」


摂津は仁王立ちする姉を上目遣いで見上げ、悪戯がばれた子供の様に、ペロリと舌を出した。


「まったく、この()はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


今度は河内の叫び声が艦隊中に轟いた。



「艦魂か・・・」


男は呟く様に言った。


「うん、そうだよ。多聞さん。

私や河内お姉ちゃん、それに明石さんは、艦魂と呼ばれる存在なんだ。私たちの事、聞いた事無い?」

「無い訳じゃないが、噂でしか聞いた事がないからなぁ。艦魂が見えるという者も知らないし・・・

しかし、まさか俺に艦魂が見えるとはね。びっくりだ。びっくりといえば、君の姉さんも凄いな!」


男は山口多聞と名乗った。海兵40期卒の少尉だ。

摂津は、彼を苗字ではなく名前で呼ぶ事に決めた。多聞という名前が気に入ったからだ。

その山口が摂津の姉である河内に驚いたというのは、事の次第を知った河内が、

例によって妹の摂津を、ある意味被害者でもある山口でさえ、うんざりするくらい説教した一件だ。

その後、河内は山口に対し、深々と頭を垂れて詫び、明石と共に自艦に帰っていった。


「うん。口うるさいのが玉に傷だけどね。でも、何よりも私を大事にしてくれる大好きなお姉ちゃんだよ」


摂津はにっこりと、山口に笑顔を向けた。


「しかし、俺には君たち艦魂全員が見れる訳ではないらしい。

実際、はっきり見えるのは、君と、姉さんだという河内艦の艦魂だけだ。

もう一人、明石艦の艦魂も来ていたらしいが、うすぼんやりとしか見えなかったし、

声もぼそぼそとしか聞こえなかった・・・」

「ええっ! そうなの?」

「ああ、どうやら見える見えないに相性があるらしい。君以外に姉さんも見えたのは、姉妹だからだろう」


山口の口から「相性」と言われて、摂津は胸に高鳴りを感じた。

彼は摂津の好みのタイプではない。

自艦に乗艦してくる者の中には、「私が見えてくれないかな?」そう願いたい者が何人かいた。

いわゆる好みのタイプという奴だ。

しかし彼らは皆、摂津を風の様に素通りするだけだった。

願う者と願われる者が適う事の無い存在。

それでもなお相性というものが有るとすれば、これはひょっとして・・・


「だけど正直、俺はその明石艦や駆逐艦連中の艦魂が見えた方が良かったな。

俺は水雷科出身だから、その方が話が合うだろうし・・・」


山口は摂津に、いきなりグーで殴られた。

艦魂が見える人間については、悩んだ末、制限を設ける事にしました。

本文中にもある通り、見えるにしても艦魂全員でなく、一部の艦魂しか見えないのです。

これはハーレム化を防ぐ為です。

本作では特に、見える側の人間が実在の提督ですしね。

テレポート等の艦魂の能力は、諸先生方の作品に準じてます。

ただし、人間を抱えてまでは出来ないとするつもりです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ