03 家族大集合②
「親父殿に挑戦したいのは山々だが、今日の主役はどうしたんだよ? オレはアーサーに会いに来たんだぜ?」
「うむ……。そのアーサーなのだが……」
儂は可能な限り詳しくブライアンとメルヴィンに事情を説明する。儂では足りないところは妻が補足してくれる。いつもながらありがたい。
「アーサーが……」
さっきまでの威勢はどこに行ったのか、途端にしょぼくれた顔を見せるブライアン。
だが、次の瞬間には殺気すら纏った表情で儂を見上げる。
「それでよお、親父殿? オレたちのアーサーを傷付けたバカ野郎はどこのどいつだ? 落とし前って言葉をちゃあんと教えてやらねえとよお?」
「待て、ブライアン! まだ問題があったと決まったわけではないのだぞ!?」
「そうですよ、兄上」
暴走するブライアンを治めようとすると、話を聞いていたメルヴィンが黒い笑顔を見せて口を開く。
「落とし前など生ぬるいことを言わずに、ちゃんと社会的に抹殺するべきです。そして、殺してくださいと懇願するほど拷問にかけましょう。ちょうど、人体で試してみたい薬がありまして――――」
「二人とも、やめんか!」
儂が一喝すると、二人が動きを止める。
こういうことは情報を集めて素早く確実に始末するのに限るというのに。
まったく、まだまだ教育が足りんな。もうしばらく、儂が国王を続けねばならんか……。早く妻と楽隠居といきたいものだが、ままならんもんだ。
そんなことを思っていると、後ろのアーサーの寝室のドアからガチャリと鍵を開ける音が聞こえてきた。
◇
「え……?」
なんだかうるさくて眠れなかったから寝室の扉を開けると、そこには父上も母上もブライアン兄上もメルヴィン兄上が揃っていた。滅多に揃わないエインズワース王家勢揃いだ。
いったいどうしたんだろう?
「アーサー!」
まさかみんなが揃っているとは思わず固まっていると、父上がガバッと腕を広げて突っ込んできた。
「うあっ⁉」
その瞬間、目の前が真っ暗になった。
「ぬお⁉ アーサーが消えたぞ!?」
「親父殿!? まさか、潰しちまったんじゃねえだろうな!?」
「それはいくら父上でも許せませんよ⁉」
なんだか上が騒がしい?
上を見上げると、必死な顔をした父上たちがわたわたしていた。
父上たちは何をしているんだろう?
というか、ここはどこ?
そこは、見渡す限り真っ暗な空間だった。上を見上げると、まるで猫の形に空間が開いていて、父上たちの姿が見える。
本当にここってどこ!?
「ここです! 僕はここにいます!」
僕はちょっと怖くなって父上たちに手を伸ばすと、父上たちが揃って驚愕した表情を浮かべていた。
「これは!?」
「あらあら、すごいことになっていますね」
「猫のぬいぐるみの影からアーサーの手が出てやがる! いったいどうなってんだ!?」
「これは……。まさか、これがアーサーの『魂の魔法』では?」
手を伸ばしていると、父上が僕の手をしっかりと握ると、一気に引き上げてくれた。
「うわ!?」
「お! 出てきたぞ!」
「あなた、あんまり強く握ると、アーサーが痛がってしまいますよ?」
「すげえな、アーサー。どうやったんだ?」
「影の中に潜る魔法? しかし、どう――――なっ!? ぬいぐるみが動いた!?」
メルヴィン兄上の驚いた声にみんなが下を向く。
そこには、抗議するように父上の足をペシペシ叩くミアの姿があった。
「あら本当。ぬいぐるみが動いていますね」
母上ののほほんとした声が場に響く。
「えっと、ミアが動いているのは、僕の『魂の魔法』の糸で縫ったからです」
「糸? ぬいぐるみを動かす魔法?」
父上が自分の足をポフポフ叩くミアを見ながら呟く。
「そいつはすげえな!」
「しかし、そうだとしたら、猫のぬいぐるみの影にアーサーが潜っていたのはいったい……?」
ブライアン兄上は嬉しそうに父上と同じようなニカッとした笑みを見せ、メルヴィン兄上は思案顔だ。
「あら? そうよね。ミアちゃんが動くのですもの。あなたも動きますよね」
母上の視線の先では、白い大きな犬のぬいぐるみ、ノアが寝室から暢気な顔で歩いて出てきた。
母上は僕がこの二匹のぬいぐるみを特別に大切にしているから、予想が付いていたのだろう。
そう。僕はこの二匹のおかげで自分の本当の『魂の魔法』の力を知った。二匹は僕の恩人だ。
「おお! 犬のぬいぐるみも動いておる! たしか、アーサーが特別好きだったぬいぐるみだよな? そうか。アーサーの魔法はぬいぐるみを動かせるのか!」
父上は嬉しそうに僕の脇を掴むと、その場で高い高いしながらぐるぐると回り出す。
「あわわわわ!?」
父上の嬉しい気持ちはわかったけど、僕は目が回っちゃうよ!
「ワフ!」
「にゃー!」
「あらあら。あなた、ノアとミアが怒っていますよ?」
「おお? すまんな。許せ」
ノアとミアのおかげで父上から解放されたけど、僕は目が回ってしまった。
そのまま尻もちを突こうとすると、サッとノアが滑り込んできて、僕がお尻を打つことがなかった。
「ありがとう、ノア」
「ワフ!」
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