18 お引っ越しお手伝い
「ノア! ミア!」
「ワフ?」
僕本人が手伝えないなら、ノアとミアに手伝ってもらえばいいじゃない!
ノアは不思議な光で汚れを落とせるし、ミアは影の中にものを入れて運ぶことができる。引っ越し作業では即戦力の二人なのではないだろうか。
「ティファニ、やっぱり僕も引っ越し作業を手伝うよ」
「なりません! このような下働きのようなマネはお控えください。アーサー様は王族です。人に仕事を任せるということを学んでいただかなくては」
「大丈夫だよ、僕自身は手を出さないから」
「と、おっしゃいますと?」
ティファニは少し不思議そうな声で問いかけてきた。
「ノア、ミア、やってくれる?」
「ワフ!」
「にゃー」
ノアとミアに問いかけると、ノアは尻尾をぶんぶん振り、ミアは僕の頭の上から僕たちの前方にジャンプして着地した。もう行く気満々だ。
「引っ越し作業にノアとミアを派遣する。ティファニ、ノアとミアは、僕の使い魔という扱いなんでしょ? なら、使用人と同じように引っ越し作業のお手伝いをさせてもいいはずだよね?」
「それは……。そうかもしれませんが……」
後ろを向いてティファニに問うと、ティファニは困ったような表情をしていた。
困らせてごめんね、ティファニ。
でも、やっぱりがんばってるみんなを見ているだけというのは辛いんだ。僕も何か手伝いたい!
「というわけで、僕はノアとミアに指示を出すために行かないとね! じゃあ、行ってくるよ!」
「あ! アーサー様!」
僕はそれだけ言うと、壊れた離宮の中に飛び込んだ。
埃で汚れてしまった家具やぬいぐるみはノアの光で綺麗する。
そして、綺麗にした家具やぬいぐるみは、ミアがどんどん影の中に飲み込んでいく。
ミアの影の中にはカーペットからタンス、鏡台、大量のぬいぐるみなどなどたくさんのものが入った。ミアの影に入れられる量に限界なんてないんじゃないか。そんな考えも浮かんでしまうほど、本当になんでも飲み込んでいくんだ。これには引っ越し作業を手伝ってくれていた使用人たちもビックリだ。
「これが、アーサー様のお力……!」
「正確には、あの黒猫のぬいぐるみの魔法のようですよ?」
「ぬいぐるみがどうして魔法を使えるのでしょうね?」
「それはアーサー様のお力としか……」
「あら? もう荷物はないのですか?」
「全部あの黒猫ちゃんが運んでくれるんですって」
「まあ!?」
そんなこんなで一気に離宮の荷物をミアの影の中に入れてしまうと、今度は新しく僕の寝床になる離宮へと移動する。
バルタザールを抱きながら移動する僕の後ろにはノアとミアが続き、その後ろには荷物を運ぼうとやってきた使用人がずらりと付いてきた。
そして、僕は離宮の奥にある部屋へとやってきた。
そこでは、もう一人の側近のメイドであるグレイスが使用人たちに指示を出していた。
「そのぬいぐるみは寝室のベッドの上に。あら? アーサー様? どうされましたか? ご見学ですか?」
「僕もみんなの力になりたくてね。ノアとミアに手伝ってもらったんだ。元の離宮にあったものは、ノアが全部綺麗にして、ミアが持ってきたよ」
「……はい?」
グレイスはその事実を飲み込むのに少しだけ時間を要したようだった。そのふくよかな見ていて安心する顔が、今は凍ってしまったように固まっている。
「あの大量の荷物が、入ったのですか?」
「うん!」
すると、グレイスは改めてビックリしたと言わんばかりに右手で顔の右半分を覆ってしまった。
「まさか、そこまで強力な力をお持ちだとは……。これは陛下に報告せねばなりませんね……」
「そうなの?」
たしかにミアの魔法はすごいと思うけど、父上に報告しないといけないほどなのだろうか?
「私はあまり軍事には詳しくはありませんが、物の流れに革命が起きることは間違いありません。ものを運ぶというのは、それはそれは大変なことでございますので。そして、おそらくそれは軍事面でも――――」
「話は聞かせていただきましたぞ!」
そう言って現れたのは、僕の護衛騎士であるクライヴだった。もう六十代も近いというのにピシッと伸びた背筋、左の頬に走った古傷が目を引く大柄な男だ。
「これはもう戦略レベルの代物ですな。間違いなく、陛下にお知らせした方がいいかと」
クライヴがそう言うと、うんうんとグレイスが頷いていた。
「こういうことは早い方がいいですな。ブラッドリー!」
「ここに!」
クライヴが声を張ると、寝室の方からブラッドリーが姿を現した。その顔はちょっと緊張しているみたいだ。
「グレイス、書くものを」
「こちらに」
「ありがたい」
クライヴとグレイスの熟練のやり取りの後、クライヴはサラサラと何事かを書いた紙をブラッドリーに渡した。
「こちらを陛下にお届けするのだ。その時、必ず陛下の側近から質問があるはずだ。その時は、クライヴが陛下に大至急お見せせよと言っていたと言って、側近に渡すといい。できるか?」
「やれます!」
「よろしい。では、頼んだぞ」
「はっ!」
ブラッドリーはクライヴから紙を受け取ると、走り出した。
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