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17 お引っ越し

「あの場所は、アーサーの寝床であったか。知らぬこととはいえ、すまぬことをしたな」

「え?」


 バルタザールが壊してしまった僕の寝室。そのお片付けに追われる使用人たちを見ながら、バルタザールが呟くように謝ってきた。まさかすぎて驚いてしまったよ。


「バルタザールって謝ることができるんだ?」

「バカにしておるのか? 友の寝床を壊したのだぞ? さすがに謝る」

「そっか」


 でも、本当にバルタザールにお友だちって認められたみたいで嬉しいね。


「大丈夫! 他のぬいぐるみたちにも被害はなかったしね! 使ってない部屋もいっぱいあるし! でも……」


 僕は隣に座る大きなバルタザールの体を見上げる。


「なんだ?」

「バルタザールはどこで寝ようね? 離宮に部屋自体はあるんだけど、バルタザールには狭いし、そもそも入れないし……」


 そう。問題は僕の寝室よりもバルタザールの寝床だ。僕の離宮には、バルタザールが入れないし、もし入れたとしてもバルタザールには部屋が狭すぎる。


 また部屋の隅でむぎゅっと詰められているバルタザールを見るのは、なんだかかわいそうだ。


「我をそんな目で見てくれるな。あまり気は進まぬが、方法がないわけではない」

「あるの!?」

「うむ。見ているがいい」


 バルタザールがそう言うのでジッと見ていると、なんだかするするとバルタザールが小さくなっていく。自分の目がおかしくなってしまったのかと、思わず目をぐりぐりとしてしまったよ!


「こんなものか?」


 心なしか声まで小さくなっているような気がするバルタザールが呟く。


 その時には、バルタザールは僕の両手に乗ってしまいそうなほどにまで小さくなっていた。


 かっこいいけどちょっとファンシーなドラゴンのぬいぐるみって感じだ。


「えっ⁉ バルタザールって小さくなれたの!?」

「うむ」

「じゃあ、寝室を壊す必要なかったじゃん! 小さくなって普通にドアから外に出ればよかったじゃん!」


 あの寝室破壊事件は何だったんだ!?


「うむ……。さすがに気が付くか?」

「当たり前だよ!」


 むしろ、何で気付かないって思ったの!?


「うむ……。我は三千年も感覚のない世界にいたからな。我自身も我に何ができるか忘れている部分がある。もっと言ってしまえば、自我さえも曖昧だ。我は自分をバルタザールだと思っているだけのただのぬいぐるみかもしれぬ」

「そっか……」


 三千年というのは、元々寿命の短い人間にとって想像もできないほどの時間だ。そんな長い時間が経ってしまったら、自分の力についても、自分についても忘れてしまっても不思議じゃないのかもしれない。


 でも、それってすごく悲しいことだと思う。


 僕は隣で座っているバルタザールを抱きしめた。


「でも、どんなバルタザールでも、僕はバルタザールのお友だちだよ? それじゃダメかな?」

「カカッ。本当にアーサーは面白いな。そうさな……今、こうしていられるのが奇跡なのだ。存外、面白そうな余生が待っていたものだな」

「ワフ!」

「うわっ」


 すると、ノアが自分もかまえと僕の背中に乗ってきた。


 ちなみに、僕の頭の上にも何か乗っている気配がある。たぶん、ミアだ。


 胸のあたりがもぞもぞすると思ったら、ベネディクトも僕の胸ポケットから顔を出して右前足を上げている。


「みんな……」

「カカカッ。もちろん、おぬしらも我が同胞よ。よろしく頼むぞ」

「ワフ!」

「にゃー」


 離宮を壊したことを問い詰めようとしたのに、なんだかそんな雰囲気じゃなくなっちゃったなぁ。


「そういえばティファニ、僕は今日どこで寝ればいいんだろう?」

「復旧のめどが立ちませんので、このまま別の離宮へお引越しになりそうです。今は可能な限り家具などの移動をしています。もちろん、アーサー様のぬいぐるみたちも一緒です」


 僕は後ろに控えていた僕付きのメイド長であるティファニに問いかけると、柔らかい声が返ってくる。


 それでどんどん僕の離宮から家具やぬいぐるみが運び出されているのか。


 離宮に空きがあってよかったね。


「ですが、今日中にすべてのお荷物を運ぶことはできないと思われますので……」


 言いづらそうにティファニが口を開いた。


「大丈夫だよ。わかっているから」

「感謝いたします」


 まぁ、僕も荷物が多い方だという自覚があるからね。ぬいぐるみとか、膨大な数だし。


 でも、聞いた話では、僕の荷物を運ぶのが急務なので、本当は今日に予定されていた側近候補たちへの教育は数日遅れるかもという話だった。


 離宮を壊したのはバルタザールだけど、その原因を作ったのは僕だし、ちょっと申し訳ないね。


 遠くでは、メイドたちが協力して荷物を運んでいる。


 大変そうだなぁ。僕も手伝いたいところだけど、王族の僕が直接手伝うことはできないらしい。


 でも、アンジェリカお姉ちゃんたちも手伝っているし、僕だって手伝いたい。


「あ……!」


 そこで僕はいいことを思いついた。

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