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14 バルタザール

 そんなベネディクトの強化計画を練った後、僕は胸ポケットにベネディクトを入れて、一人で寝室に入った。


 アンジェリカお姉ちゃんたち側近候補は、今頃側近たちから仕事を教わっているはずである。


 その間、暇なんだよね。なんだか僕一人にされてつまらないし。


 そんなわけで、僕は自分の寝室へと戻ってきたわけだ。


 いつもの通り、バルタザールを魔法の糸で縫っていく。バルタザールが動くようになるまで、あとどれだけ時間がかかるんだろう?


「早く動いてほしいなぁ」


 早く動いているバルタザールを見たい。できるなら、バルタザールに乗って空を飛んでみたい。


 想像するだけでわくわくするよ。


 僕は、もうすぐバルタザールが動くのではないかという予感を感じていた。


 まぁ、僕の勘は父上やブライアン兄上のように鋭くないから、どうなるかはわからないけどね。


 でも、あとちょっとで縫い直しが完成する。


 あとは目の部分をちょちょっとすれば――――。


「できた……!」


 完成だ!


 その瞬間、バルタザールの瞳に光が宿った気がした。



 ◇



 そこにはなにもない。


 久遠の虚無が広がっている。


 自他の境界が曖昧であり、我の感覚はないのか、それとも無限に広がっているのかすらわからない。


 摩耗していく自我。


 はて、我は何だったか?


 否。断じて否である。


 我が名こそバルタザール。神々の牙にして、蒼穹の支配者なり。


 しかし、それもここでは記号以上の意味を持たない。


 永久にも続く虚無に苛まれ、我は我を失くすことすらあった。


 そんな地獄に変化が起きた。


 光だ。


 それが光だと思い出すのにずいぶんと時間がかかったが、光がこの虚無しかない世界に現れた。


 これはどういうことだ?


 この光はどのような摂理でこの虚無しか許されない世界に存在している?


 しかし、我はまるで救いを求めるように光に縋った。


 ないはずの腕を伸ばし、光を掻き抱くように、しっかりと。


 その瞬間、我は失っていたものを取り戻した。


 少し窮屈だが、窮屈を感じる肉体がある。


 靄がかかったような意識も明瞭に澄み渡り、我の瞳には、こちらを紫の瞳を光らせて見ている少年の姿があった。


 現世に、戻った?


 すぐさま否定しそうになるが、我の感覚のすべてがそれを否定する。


 あの強力無比な久遠結界をどのように破った?


 いや、それよりも――――!


 我は久遠の果てにもう一度声を発することになる。


「汝は何者なりや?」



 ◇



「バルタザールがしゃべった!?」


 え? 今、しゃべったよね!?


 バルタザールのぬいぐるみは、グッと床に落ちていた首を持ち上げると、僕を見下ろす。


「いかにも。して、汝は――――」

「バルタザール!」


 僕は堪らなくなってバルタザールの太い首に抱きついた。


 バルタザールが、あのバルタザールが動いてる!


 たしかにぬいぐるみだよ? でも、僕はバルタザールが大好きなんだ!


 神々の牙、蒼穹の王、神殺し!


 バルタザールを讃える称号はいくつもあるけど、やっぱり神殺しのお話が僕は好きだな!


 突然、この世界に侵略してきた異世界のモンスターと異世界の邪神。それらを迎え撃ち、遂には邪神を殺すという偉業を成し遂げた。


 相打ちという形で、だけど……。


 でも、バルタザールだからできたことだ!


 この世界のために、自分の身を犠牲にしてまで邪神を討ったことを、この世界の者たちはみんな感謝している。


 もちろん、僕たち人間もそうだ。


 他の種族から忘れっぽいと呆れられることが多い人間だけど、バルタザールの偉業だけは、絶対に忘れなかった。


 それだけ感謝しているんだ。


 そんな英雄が、世界を救った英雄が僕の目の前にいる!


 これで興奮しないなんて嘘だよ!


「会いたかったよ、バルタザール! いや、正確には毎日会っていたんだけどね! でも、こうして動いているバルタザールを見られるのがすごく嬉しくって! あのね! あのね! あー! バルタザールと話したいこと、訊いてみたいことがいっぱいあったんだけど、頭から飛んでいっちゃったよ! でも、これだけは言わせて! ありがとう、バルタザール! バルタザールのおかげで、僕たちはこうして生きてるんだ! だから! ありがとうございます!」

「…………」

「どうしたの? また動かなくなったら嫌だよ?」

「いや……。少年、汝はニンゲンだろう? ニンゲンがなぜ我に感謝する?」

「え? そんなの当たり前だよ! バルタザールが邪神を倒してくれたんでしょう? 僕たち人間は確かに忘れっぽい種族かもしれないけど、この恩だけは決して忘れていないんだ! だから、ありがとうございます!」

「正確には討伐ではなく、封印なのだが……。まぁ、よい。少年、名は?」

「僕?」


 僕はいったんバルタザールから離れると、大人の真似をして敬礼をして答える。


「僕はアーサー・シド・エインズワース! ここエインズワース王国の第三王子だよ!」

「エインズワース王国……。懐かしい名だ。まだ続いていたのか……」

「知ってるの!?」


 バルタザールが僕の国を知っているなんて嬉しいな!

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