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12 自己紹介

 僕は側近候補たちの自己紹介を聞き終えて、一つ頷いた。


 僕は彼らのことを報告書を読んで知っているけど、でも、それだけで本当の彼らがわかるとは思わない。彼らとの生活の中で少しずつ知っていく努力をしないといけないだろう。


 試されているのは僕も同じだ。僕も彼らの主に相応しいか試されている。


 しばらく気の抜けない生活になりそうだなぁ。ちょっと憂鬱だけど、がんばらないと。


 さて、側近候補たちの自己紹介を聞いた僕だけど、ならば、次は僕が彼らに自己紹介すべきだろう。


「僕はエインズワース王家の第三王子、アーサー・シド・エインズワースだよ。先月、五歳になったばかりだ。キミたちの主に相応しい存在になれるように努力するつもりだよ。僕は、兄上たちのように国のために役立てるような存在になりたい。そのために、みんなの力を貸してほしい」


 僕の話を、側近候補のみんなは真剣な表情で聞いてくれた。


「僕が賜った『魂の魔法』は【糸】なんだけど、これだけだと何ができるのかわからないよね? 僕も何ができるのか調べている最中なんだけど、ノアとミアを実際に見てもらった方が説明するよりも早いかな? ノア、ミア」


 僕が呼ぶと、ノアは嬉しそうに駆け寄ってきて、ミアはすたすたと澄ましたように優雅に歩いてきた。


 オズワルドを除く側近候補たちの目が驚きに見開かれるのがわかった。


 そうだね。だって、ノアもミアもよくできているけどぬいぐるみであることはよく見ればわかるはずだ。


 そのぬいぐるみが、まるで本物の犬や猫のように動いている。


 僕はノアとミアを撫でると、側近候補たちに向き直った。


「これが僕の『魂の魔法』だよ。この子たちは、実は特殊な能力が使えてね。ノアは汚れを落とす光を出すし、ミアはなんでも影に飲み込んじゃうんだ」

「えぇ……」


 それは誰の呻き声だったのか。でも、側近候補たちの心を雄弁に語っている気がした。


「まぁ、だから僕の離宮では、ぬいぐるみが動いていても驚かないでよ」


 僕はポカンとした顔をしている側近候補たちを見ながらそう締めくくった。



 ◇



 これは、想像以上ですわね。


 わたくし、アンジェリカ・ラ・エアルドレッドは、肌の粟立ちを抑えることができませんでした。


 ぬいぐるみが動く。それはアーサーらしいかわいらしい『魂の魔法』だとほっこりしましたわ。


 ですが、ぬいぐるみが能力を持っている?


 アーサーの話しぶりだと、かなり便利な能力のようです。しかも、ぬいぐるみごとに別の能力を持っている?


 正直、底が知れませんわ。


 王国の影を司るエアルドレッド公爵家の長女であるわたくしが動くのも納得できるというものです。


 まぁ、今回の人選は、思想に問題ない人物が多いのでわたくしの仕事はないと思いますが……。


 問題があるとすれば、ナディア・ソン・マギニスですが……。その変人ぶりは有名ですが、王家への叛意はありません。


 ですが、アーサー様に御せるかどうか……。


 推察するに、ナディア・ソン・マギニスはアーサー様への御してみせろという課題なのでしょう。


 ならば、わたくしが手を出すのも無粋ですわね。


 それにしても、ぬいぐるみと戯れるアーサー様は本当におかわいらしい。このままひっそりとお持ち帰りしてしまいたい程です。


 まぁ、実際にはいたしませんが。


 ……しませんよ?



 ◇



 自己紹介が済んだ僕たちは、一度離宮に戻ってきた。


 その時、僕は足元に僕の拳より一回り大きいくらいの緑色の亀のぬいぐるみがあるのに気が付いた。


「ベネディクト? どうしたの、こんな所で?」


 僕はしゃがんで亀のぬいぐるみ、ベネディクトを手に取った。その顔は悲しそうなものから嬉しそうなものに変わる。


 いつもは僕の部屋の日当たりのいい所でジッとしているのに、ベネディクトが廊下に出てくるなんて初めてのことじゃないかな?


「もしかして……」


 僕もノアもミアもいなくなってしまったから、置いて行かれたと思って追いかけてきたのだろうか?


 でも、かなしいかな。ベネディクトは亀のぬいぐるみ。その歩みはとても遅い。


 ベネディクトが素早く動ける手段があるといいんだけど、そんな方法なんてあるのかな?


「うぅーん……」

「いかがいたしましたか?」


 どうしようか悩んでいると、ティファニに声をかけられる。


 僕一人で悩んでいても仕方がないな。ここにはちょうどみんな揃っているし、みんなの知恵を貸してもらうのはどうだろう?


 うん。そうしよう。


「みんなに紹介するよ。この子の名前はベネディクト。見た目通り、亀のぬいぐるみだから足が遅いんだ。そのせいで、今日はベネディクトを置いて来てしまった。きっと寂しい思いをしたことだろう。どうにかして、ベネディクトがもっと速く動けるようになる手段はないだろうか?」


 側近たちも、側近候補たちも、少し困った顔で僕が持っているベネディクトを見ている。


 やっぱり難しいかな?

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