10 側近候補たちと会う
僕が『魂の魔法』を賜ってから十日。
『魂の魔法』を賜ってからの日々というのは、劇的な変化があるようで、実はあんまりない。
まぁ、ノアやミアが動くようになったのはとっても嬉しいのだけど、勉強の時間はなくならないのだ。
勉強はつまらないけど、これも僕が立派な王族になるために必要なことだよね。
僕は兄上たちみたいに国のために働きたい。でも、そのために必要な知識を持ってないと始まらないよね。
でも、今日はそんな日常に新たな風が吹いた日になった。
この前に父上たちと決めた僕の側近候補。彼らが王城にやってきたのだ。その中にはアンジェリカお姉ちゃんもいるらしい。
僕はさっそくアンジェリカお姉ちゃんたちに会うことにした。
向かったのは、王族の私的な共有スペースにある応接間だ。
「おう、アーサー!」
「こんにちは、アーサー」
「父上、母上!」
応接間に向かう途中で、まるで僕を待っていたような父上と母上に会った。
どうしたんだろう?
もしかして、僕が側近候補に会うのに付いてきてくれるかな?
僕も一人で知らない人たちに会うのはちょっと不安だったし、助かるね。
「もしかして、父上と母上も付いて来てくださるのですか?」
そう僕が期待を込めて両親を見上げると、二人はちょっと困ったような表情を見せた。
なんで?
「あー、アーサー、実はな……。その逆なんだ……」
父上が珍しいことに歯切れ悪くそう言った。
「逆、ですか?」
僕は逆の意味がわからなくて問い返す。
「うむ。我らは、アーサーの側近について、これ以上とやかく言わんつもりだ。アーサー、これからは自分で実際に見て、聞いて、側近を選ぶがよい」
「え?」
てっきり手伝ってもらえると思ったら、父上から突き放された形だ。僕は初めてのことに驚いてしまう。
「アーサーももう五歳だ。王族ならば、人を見る目も養わねばならん。無論、上手くいかんこともあるだろう。失敗もするかもしれん。だが、失敗を恐れていては成長はないぞ? 自分の手足として扱う側近くらい自分で選べるようになれ」
「はい……」
当てが外れたことと、父上から始めて僕を遠ざけるような言葉に戸惑ってしまう。
それは自分で思ったよりも大きなショックだったのだろう。僕の口から出たのは、自分でも驚くほど小さな、情けない返事だった。
「おいおい、アーサー! そんなにしょぼくれていては、側近候補たちが呆れてしまうぞ? お前が側近候補を側近に相応しいか観察するように、側近候補たちもアーサーのことを自らの主として相応しいかどうか観察しているのだ! 虚勢でもいい! 胸を張れ! 臆病なところなど見せるな! どんなに危機的な状況だろうと、それがどうしたと笑ってみせろ!」
「父上……。はい!」
父上の言う通り、僕は確かに側近を選ぶ側ではあるけど、側近候補たちに選ばれる側でもあるんだ。
自分の主が自信なさそうにウジウジしてたら、嫌になっちゃうよね。
でも、僕には父上のような強さや、ブライアン兄上のような豪快さ、メルヴィン兄上のような明晰な頭も持っていない。
そんな何も持っていない僕が、他の人に誇れるようなものがあるだろうか?
その時、父上の言葉を思い出した。
『いいか、アーサー。まずは嘘を吐かないことだ。嘘を吐く者の言葉など誰も信用しないからな。そして、自分の言葉を翻さないことだ。言葉を翻す者の言葉など信用できないからだ。まずは人に信用される王族になれ。すべてはここからだ』
そうだ。僕にはたしかに何もないかもしれない。
でも、だったら、せめて信用できる王族になろう。僕の下で安心して働いてもらえるように、信用できる主になろう。そのためにするべきことは、もう父上に教えてもらった。
僕はいつの間にか下を向いていた顔を上げて、父上と母上を見上げる。
「お! いいぞ、アーサー! 男の顔になったな!」
「本当に。いい顔をしていますね。がんばるのですよ、アーサー」
「はい!」
僕は両親に見送られるように、側近たちを連れて応接間へと向かう。
「こちらでございます」
「ありがとう」
オズワルドの母、僕にとっても乳母であるティファニが応接間へのドアを開けてくれた。
入る前に、僕は一度だけ深呼吸すると、部屋の中に入った。
応接間の中には、六人の男女が横一列に整列しており、僕が入った瞬間に跪く。
一番上は十八歳、一番下は五歳だから、体格差がかなりあった。
「みんな、立ってくれ。ここは正式な場ではないからね、楽にしてもらってかまわないよ」
僕は彼らの前に立つと、そう声をかける。
すくっと立ち上がる側近候補の六人。僕と同じ五歳であるオズワルド以外は、みんな僕よりも年上だ。自然と視線が上を向く。
その一番右にアンジェリカお姉ちゃんを見つけて、顔が緩みそうになるけど、アンジェリカお姉ちゃんが真剣な顔をしているのを見て、僕は顔を引き締める。
「知っている者もいるけど、順番に自己紹介してもらおうかな?」
椅子は用意されていたけど、僕は敢えて座らずにそう声をかけた。
すると、事前に決まっていたのだろう。一番右にいたアンジェリカお姉ちゃんが一歩前に出て跪く。
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