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【超短編小説】ケツから何番目?

掲載日:2025/12/21

 ターフを走る馬を見ていた。

 おれが買った馬券の馬はどこだ?馬群の中に見失った。いつもそうだ。穴党だからじゃない。

 競馬のセンスが無いのだ。


 思えば生まれた瞬間からケチはついていた。

 人間は馬と違って未熟児として産まれる。

 早生まれと言う時点でビハインド。出遅れたレースは4月生まれに大きく差をつけられた状態で始まり、幼少期の肉体的な差が生む圧倒的なコンプレックスを引きずったまま生きる事になるからだ。

 そうしてその斤量半年以上を抱えたまま長く重いコンプレックスと共に成長する。



 人生はクソみたいなレースだ。

 奴らがゲートを出て半周以上走ったあたりで、おれはようやくゲートを飛び出る。

 しかし最下位争いをするほどに目立てず、かと言って先頭集団に追いつけるような根性も末脚も無い。

 もちろんレースを止める度胸も無いし、柵を飛び越える勇気も無い。

 そうしてぼんやりと、人生にターボエンジンを搭載している様な奴らが直線で思い切り加速するのを見ている。

 


 第三コーナーを回った辺りで馬群がバラける。おれが買った馬はケツから数えて大体は4番目5番目くらいだ。

 誰も注目しない位置。

 ここから差しても万馬券にならない。届く訳が無いからだ。

 おれみたいだな!精々が鉛筆を転がして買うおみくじ馬券みたいなものだろう。


 鉛筆を転がして、買う。



 言いえて妙だ。

 いまこの文章は鉛筆を転がすように、ゆびがキーボードの上を転がりまわっているだけだ。

 いっそ自爆スイッチでもあればいいのにな、と思う。

 あるにはある。

 まぁ爆発はしないのだが、レースを終わらせることはできる。

 強制終了、リタイア、再起不能、ギブアップ、離脱、なんだっていい。



 不毛だと思うのならいますぐにそうすればいい。

 生ききったか?書き切ったか?

 もうやることは無いか?

 知らんよ、そんなこと。

 ただ勝ち目も無いのにレースを辞めないのは、勝てると思っているからではない。



 ただ、自分以外の奴らがそうやって辞めたり離脱したり諦めたりすれば、その分ひとつ順位が繰り上がっていくし、そうなったら掲示板くらいには入れるかも知れない。

 おれが買った馬券の馬以外が立ち止まってレースを止めればいい。

 そういう甘い見立てとか予想があるから終われない。馬券を買い続ける。何かを書き続ける。

 誰かおれを見つけてくれ。

 もちろん、最下位の奴から順に諦めたりしていけば、自分が最下位になる可能性だってある。

 でもそれだって構わない。全員が辞めれば誰もが俺を見るしかなくなる。

 いやがらせの様に生きているのは、その所為でもある。


 馬券が空を舞い、そして今日も日が暮れる。

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