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⑥鬼は雉を狩る  作者: 邑 紫貴


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7/7

未来へ


日常に溶け込んだ何の変哲もない放課後。

雅樂は荷物を持って、笑顔を俺に向ける。

「清一、由以愛を誘ってから行くから。“先に行って” てくれ。」

「わかった、気をつけてな。」

雅樂はもう、俺を置いて行くなとは言わなくなった。

待ち合わせした場所まで、それぞれ個別の移動。

前世の記憶は薄れてしまったのだろう。

九十那と桂花は相変わらず、仲良く信頼しあっている。

前のような背中に飛び乗ってくるようなこともなく、少し寂しいというのは贅沢なことだな。

本来なら、友達にもならず関わりさえなったかもしれない。

「清一、遊磨のいないうちに。早く。」

俺の隣には、絢。

「ねぇ、あなたの最期の記憶を思い出したんだけど。私、あなたを殺してたわ。」物騒なセリフを最高の笑顔で告げた。「え?死ぬ間際、君の冷たい手しか覚えてないんだけど?」

そういえば、背中に刺さる痛みに既視感が……あれだろうか。

「桃太郎の一族のいる山から村への唯一の架け橋を命がけで落とした後、息絶え絶えで。あなたが言ったのよ、殺してほしいって私に。」

とても満足そうな笑顔が全開。

これは、とても強烈な愛の囁き。

「現世では、優しく看取ってね?」

「どうかしら、置いて行かれると思ったら死ぬかもしれないわ。」

平然と、怖いことを言いますね。

「また、残して行くから。延々と続く俺たちの子孫を。」

あれ、簡単に言ってしまったけど。

「ふふ。もう少し、今を楽しみましょう?」

「そうだね、この平和な時代を。」

せっかくのいい雰囲気に、割って入る邪魔者。

「そうそう、私もまだあきらめたわけじゃないし!」

俺の腕に抱きついて、絢を煽るような言動。

絶対、楽しんでいるよね。悪質だなぁ。

「桃太郎が村を守るために交渉していたのは事実、俺はうまくいくことを願っていたよ。」

だから俺に助けを求める桃太郎を信じて行動したんだ、皆を守るために。

例え、俺が死ぬとしても……



『昔々、川を辿って逃げてきた若い女性は、おじいさんとおばあさんに匿われ、子どもを出産する。

その村は平和で、とても多種多様な人型がいた。

そこで幸せを願ったけれど、母娘を追ってきた一族は村の殲滅を決意する。

その日、唯一の道、架け橋が力の強い人外一匹に落とされてしまった。

一族の攻撃に耐え、人外の恐怖は更に強まったのだろう。

数日で橋を直し、村を一掃した。その村の生き残りは、取り逃がした人の姿に近い一族の一部。

追ってでも取り戻そうとした母娘だが……娘と交渉して騙して連れ戻す計画も、村への恐怖から数人の主張する処刑の決定が下された。

時代だったのだろうか……母娘がこなければ?きっと違う別の淘汰の時が来ていただろう……自然ではないと判断した人間による残酷な時代。

現代に居たとして……生き残れただろうか……』



前世の記憶。

失ったものを望むように記憶として留まり、運命に導かれ……

「運命に恵まれている、か……」

「そうね、私たちはあなたに惹かれて集まってきた。運命の中心……」

「歯車を狂わせたのは私だと言われたわ……ふふふ。ねぇ、前世にとらわれず、私を選んでもいいのよ?」

恵まれているんだろうか、本当に。

「俺は前世と関係なく絢を選ぶ。だって前世の記憶は残らない。消えていく記憶……でもここは消えない。現実。それに……遊磨、俺の事を一度も好きだったことないよね?」

絢は遊磨に視線を向けた。

「てへ?」

バレた?みたいな顔で逃げていく。

「こ、殺す!!アイツだけは前世から許さない!!絶対に殺す!!」

遊磨に向ける殺意さえ、俺のものにしたいなんて……俺を優しいと思っている君は知らないんだ。

俺は……鬼は雉を狩る。





END

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