八話【共通する過去 後編】
ミニ登場人物紹介。…読者の皆さんは絶対読むだろう。
赤羽実玖……大和の幼馴染。
最上加奈……お嬢様。
山中祐二……大和の親友。
橘美佐……転校生だよ。
深く帽子を被り、サングラスを付けてさらにはマスク装備という不審者極まりない
男(夕菜の兄)が俺達を尾行しているのだ。……アレでばれないとでも思っているのだろうか。
思っていたとしたらアホだ。
「どうしたの、お兄ちゃん、なんか、挙動不審だけど」
「……いや、何でも無いんだ、何でも無い……」
アイツを突き出し洗い浚い喋ってほしい所だが我慢だ。
まぁ今は……楽しみますか。
■
『その大根は抜いちゃ駄目。その大根を抜くと……!』
『いや、俺はこの大根の為に生きてきたんだ…』
『駄目よ。その大根は』
『――――この大根を持ち帰ったら俺……結婚するんだ』
『マルコォォォォォォォ』
この台詞を言った主人公(ダンディな俳優)は適役に殺されました。
『世界の中心で味噌汁を啜る~大根forever~』……やべえ、1200円糞無駄だったわ。
俺と夕菜は映画館に来て、今の映画があったので見ていたのだが……。
感想としては『何この糞映画』だ。
たぶん、今期、見なければ良かった映画ベスト1にランクインされるだろう出来。
なんだが。
何故、夕菜が泣いているのかが俺には全く俺には理解不能だ。
「悲しすぎるよ……最期の晩餐が味噌汁だなんて……ハンバーグ位食べさせてあげようよ」
そこかよ!? その前に題名が味噌汁だろうが。
「感動したよね、お兄ちゃんも」
「あ、ま、まぁ少し……」
……後不審者が啜り泣きをしていたような気もしたがスルーだ。めんどくさいし。
映画位俺に涙を流させてくれよ。
■
俺もう泣きたいわ。
「お、お兄ちゃん……もういいよ、別の所行こうよ」
「……俺に喧嘩を売ってくるとは、なんという勇ましい奴だ……。ここまで来たら――戦争だ」
――UFOキャッチャー。俺に勝負を挑んでくるとは……俺は今六千円をコイツのせいで浪費しているのだ。
「お兄ちゃん、もういいって。あの熊の人形は諦めようよ――」
俺の横で夕菜が何かを言っているが完全無視。
「俺の破滅か。UFOキャッチャーが勝つか。勝負だ」
残りの俺の金――2800円。
俺は気付かなかった。UFOキャッチャーは二度と戻ってこない貯金箱だと。
そしてバイトで必死に稼いでいる生活費にも手を出してしまい明日からの生活に困った事など。
まぁ、どうでもいいことだった。
結果的に熊の人形は取れたのだから。
★
「この熊の人形ありがとね。夕菜大切にするよ」
「……別にいいんだ。俺はもう屍なのだから」
夕暮れ。ついに俺達は別れの時を迎えた。……終わってみると何故か寂しいような
哀愁感に襲われる。……今日は気分良く眠れそうだ。
「あ、後お兄ちゃん……。今度から一君って呼んでもいい?」
「一君……なんかそんなあだ名で呼ばれてないから照れるけど……いいぞ」
今度は夕菜が俺に近寄ってきて小声で、
「じゃあね。一君」
そう言って消え去ってしまった。反則だろ。
見えなくなった頃、不審者に蹴りを入れようと思い後ろを振り向いた、が。
「アイツ……いねえ…!?」
……月曜日に、会ったら制裁を加えてやる。
■
月曜日の朝。……俺が教室に入ると、劉蜂や赤羽やら最上やら橘やら山中までいた。
……何故か皆が皆俺をニヤニヤしているのは俺の気のせいだろうか。
すると全員が笑いながら、
「「「「「一(君)」」」」」
……はっはー。絶対劉蜂は冥土に送ってやる。
後日談。なんと劉蜂はビデオカメラで俺と夕菜を撮影し先程まで鑑賞会をしていたようだ。
……日本でプライバシーの権利ってあるよな?
共通する過去編終局。……いやはや長かった。
…一君(笑)編はもう少しだけ続きます。
もしかしたら近いうちに投稿するかもしれません。