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第4章「妻と柴犬」⑯

 坂本は、肩掛けの鞄を開くと、小さな箱を取り出した。さらにその中から小瓶を二つ摘み上げ、ベッドの横のテーブルに並べる。一つの瓶には、赤黒い粉末が満たされ、もう一つには、ルビー色の小石が幾つか入っていた。

 大隈は、相手の意図がつかめず、困惑した。坂本は無言で彼を見つめ、その行為で小瓶への注意を促しているようだった。

しばらくして、大隈は思い出した。

「あのときの、砕けた石か」

「そうだ」

うなずくと、坂本は目を閉じ、深く長い息を吐いた。


 あの日、砕けた石を、どう取り扱うか考えた。持ち込まれた経過も考慮し、粉末状にして捨てることにした。標本作成用の機械で細かく破砕し、翌日に廃棄するためケースに入れておいた。

「次の日にケースを開けると、元の形に戻っていた」

 昨日は粉末だったものが、凝固し、再び砕ける前の赤黒い塊になっていた。坂本は自分の目を疑った。

「生き物は、体内に侵入した毒物を排出しようとする。だが、時には免疫反応の結果、異物を体液でくるんで無害化することがある」

 赤黒い塊は、屋敷の地下の実験室で、人為的に作られたそのようなものではないかと考えた。どうして犬を用いたのかは判らない。まったくの専門外だが、犬を用いた土俗的な呪術行為なのかもしれない。

「だが、所詮無機物だとたかをくくっていた」

 元の形に戻るなど、予想外だった。

 それでも、再度同じように破砕し、今度はケースに収めると、その部屋で見守ることにした。

 

 日付が変わっても、粉末のままだった。同じ結果が再現されないことに安堵しつつも、拍子抜けした気分になり、あくびが出た。眠気を払おうと瞼を触ると、目の奥に吸い込まれるような感覚を覚え、次の瞬間、部屋の外から光が差し込んでいた。朝だった。坂本は自覚なく眠りに落ちていたことに驚愕し、慌ててケースの中を確かめると、粉末は、再び赤黒い塊に戻っていた。

「何度も繰り返したが、同じ結果だった」

長年の飲酒の結果で正気を失ったのだろうか。坂本は深く恐怖を覚え、その塊を鍵のかかる箱に封印した。





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