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第4章「妻と柴犬」⑦

吾郎が勤務していた警察署は、幾つかの市町を管轄していた。

今も彼が居住している町は、商業施設が数多く所在しており、周囲の町からの人の流入も頻繁であって、それなりの発展を続けていた。現役で勤務していたころは、毎日、何かしらの事件の対応で忙しい日々だった。


その町から少し離れたところにある、幾つかの町や村が合併した町、ひとまず「U市」と呼ぶことにするが、そこは古くからの温泉地があり、観光地として知られていた。湯治場には遊興施設が多く存在し、それを目当てにした県外からの観光客が大事な収入源だった。

まぁ、要するにいかがわしい店目当ての客がたくさんあったのだ。

そのような店の背後には、反社会的な組織がいて、普段は表面には出てこない。だが、もめごとの気配を感じると、いつの間にか当時者の間に割り込み、仲裁をするように振舞って、弱みに付け込む。

なにがしかの見返りを要求する。


かつて、その町に一軒の豪邸が存在した。炭鉱で財を成した資産家が、贅を尽くして建造した屋敷だったが、資産家が没落したのち、県外から流れてきた人物がその家を買い取った。その人物は、対外的には成功した事業家というふれこみだったが、実際のところは、豊富な資金を有して、違法な高利貸しを営んでいたのだ。


ふらりと流れてきたような印象の男は、町の反社組織に対し、彼らの上部組織に連なる人物を介して、その世界の「仁義」を通した。そこまでされては、町の組織も屋敷の男を粗略にはできなかった。ひとまずは、お互いを尊重する体で、町の中で共存することにしたようであった。その時点においては。


高利貸しは、普通の金融機関から相手にされないような人間が顧客だった。

そのような人間が、たやすく返済することはない。

回収には、実行する手段が必要だった。その実働部隊の供給元が、町の組織だった。

需要と供給が合致していたのだ。

最初の数年間は。


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