表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/55

第2章「俺と黒い犬」⑩

仕事で訪れた繁華街の漫画喫茶で、俺は声を聞いた。

「もうどうなってもいい」

頭の中に声が響く。店内を見回すと、深くフードをかぶった少年がいた。

彼の姿を視線で追うと、人目を避けるようにして、ブースに入っていく。彼を呼び止めとめ、驚く彼にやさしく微笑みかけた。


ホテルの部屋で服を脱がすと、体のいたるところに痣が残っていた。

新しいもの、ずっと昔の古い傷跡、一つ一つを確かめる。

「こいつは、俺に似ている」

行為の間、少年は虚ろな目をしていた。

俺は最悪な人生から抜け出せたが、こいつはまだごみ溜めの中にどっぷりはまっている。

だからといって俺が引きあげてやる義務はない。


別れ際に金を渡しながら、俺は少年にアドバイスしてやった。

「いま、考えていることをやればいい」

少年はびっくりした顔をして俺を見た。

無表情だった顔が、やがて薄く笑顔に変わった。


そのしばらく後に、会社帰りの20代の青年が、少年にナイフで刺殺された。

「幸せそうな人間が許せなかった」

新聞にそんな動機が書かれていた。

俺は満足した。


あるとき、町の公園を歩いていると、ベンチに座っている男の声が聞こえてきた。

「全部、あいつのせいだ」

俺以外の人間は気にも留めずに通り過ぎてゆく。これも、俺にしか聞こえない声なのだろう。

「どうやって思い知らせてやろう」

俺は近くのホームセンターで買い物をし、紙袋を彼の横に置いた。

こちらを見上げる男の目は病んだ瞳をしていた。

「これを使ってやればいい」

男は、俺の目をじっとみつめ、袋の中身を取り出した。

ハンマーをじっくり確かめると、男は俺に笑顔を見せた。


そのあとに何が起こったは知らない。

興味がない。

俺は、聞こえた声に、答えただけだ。

赤い石は、どんどん美しくなっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ