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第1章「柴犬と私」⑬

振り上げられたハンマーの先端は、部屋の照明で輝いていた。

私は、目の前で何が起こっているのか理解できず、彼の動作をただ凝視していた。だが、ハンマーの尖った釘抜きがこちらを向いていることに気が付き、

「これはいけない」と、両手を顔の前に出した。

もし、そうしなければ、最悪の結果になっていただろう。


私は、手首で最初の打撃を受け止めたが、防ぎきれず、釘抜きの先端が頭部に刺さり、とたんに血が噴き出した。

周囲から悲鳴が聞こえる。

しばらくは両手で防ぎ続けていたが、彼はハンマーの先端をくるりと回して、平坦な金属面を私の手首に打ち付けた。左手首の橈骨と尺骨が折れる。


ようやく、他の社員が駆け寄って彼を羽交い絞めにした。私はそれを見ながら、膝から床に崩れ落ちた。頭から流れる血がべっとりと頬を濡らした。

「ぜんぶ、おまえのせいだ」という彼の絶叫が聞こえる。その声は悲鳴のようにも聞こえた。徐々に意識が遠のいていき、誰かが私に声をかけてきたが、うまく返事ができなかった。

目を閉じると、頭の奥から引っ張られるような感覚がして、そのまま意識を失った。


目覚めると病院のベッドで、医師から、全治1カ月を告げられた。

彼は、警察に逮捕され、その後、私とは別の病院に入院していた。


退院後、警察で事情聴取を受けた。

担当の警察官は、私の状態に配慮しつつ、誠実に対応してくれた。

担当者の説明では、加害者は、私への一方的な逆恨みにより、強い殺意を有していたと認定される可能性があるが、しかし、責任能力を問うことは難しいだろうとのことだった。


私は、出来るだけ彼のことを考えないようにした。

仕事に打ち込むことで、余計な雑念を振り去ろうとした。

けれども、私は、会社に行くことができなくなってしまった。


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