始まり-4
ラキは跳ねる心臓を抑えながら、シンとした自室の空間に少し怯え、ハッピーを優しく撫でた。
「やな夢…」
少し経って、ようやく鼓動が落ち着いてきたかと思ったその時。
下の階から、誰かが話している声が聞こえた。
1人は老婆の声のようだが、もう1人の話し相手はどうやら老爺ではなさそうだった。
ラキは不思議に思い、そっと自室の扉を開け、軋む階段をできる限り静かに降りていった。
その時、急に老婆の声が大きくなった。
「うちには私と夫以外の誰もいないよ。」
その大きな声に驚き、ラキは思わず足を止めてしまった。
(どういうこと?おばあちゃん、私がいるの忘れちゃったの?)
ラキはそっと身を動かし、耳を澄ませてさらに声に聞き耳を立てた。
老婆と会話をしている男の声が続く。
「…そうか。そうか。それでもよい。見上げた精神というものか。」
その声が落ち着いているのに反して、老婆は思い切り音を立てて椅子から立ち上がった。
「何を言っているのか分からないけどね。私は夜中にあまり音を立てたくないんだ。私が寝てる時にうるさくされたら嫌だからね。」
普段より少し大きな声で老婆が言葉を続ける。
「さて、そういうわけだからね。ほら、私と行くよ。」
男は少し考えた後、静かな声で答えた。
「…ふっ。良いだろう。その心情、中々奥ゆかしい。」
その後、家の扉が開く音が聞こえ、老婆と男が家を出て行った様子だった。
ラキは家の扉が閉まったことを確認し、急いで窓から外の様子を見た。
しかし、外には2人の姿は全く見当たらなかった。
次にラキは家の扉を開け、外を見回してみたが、やはり2人を見つけることはできなかった。
困惑と不安が交錯する中、ラキはそのまま自室に戻り、ハッピーに包まれるように震えながら眠ることにした。
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