始まり-3.5
ラキは、柔らかな温もりに包まれていた。
ああ、幸せだ。
──ラキは今、広大な緑の大地にいる。
遠くに見える山の影響か、時折、暖かな風が吹いてくる。
その風は心地よく、ラキの髪をふわりと揺らす。
ラキは横になり、柔らかな草の上に身を預ける。
草は沈み込み、まるでラキを優しく受け入れるかのようだった。
そのまま空を見上げると、ふと、空中に何かが浮かんでいることに気づいた。
「誕生日おめでとう」
ラキはその文字を見て、嬉しくなって少しニヤけた。
楽しかったなあ。
嬉しかったなあ。
ふと、ラキは考えた。
老夫婦の誕生日を祝ったことがなかった。
「明日、聞いてみよう。」
ぼーっとしているうちに、ラキは視線を横に向けた。
すると、どこかで見覚えのある少年が忙しなく走っているのが目に入った。
誰だったかな…。
考えているうちに、その少年は木々の中に消えていった。
少しの間、ラキは少年のことが気になり、探してみることに決めた。
ラキは立ち上がり、少年が進んだであろう林の中へと足を踏み入れた。
最初はまばらに木が生えていたが、進むにつれて木々は徐々に密集していった。
やがて、木々の間隔は狭く、ラキは枝を掻き分けないと進めないほどになった。
それでもラキは諦めず、枝を押し上げ、木の根元をくぐり抜けた。
しばらくして、ラキがまた枝をグッと掻き分けると、視界が開けた。
そこには、先程まで木々に隠れて見えなかった光景が広がっていた。
背を向けている老婆が見えた。
その背中は、どこか頼りないようにも感じられた。
ラキは老婆に声をかけようと手を伸ばし、静かに近づいていった。
そして、老婆の背に隠れていたものが、次第に見えてきた。
ラキは足を止めた。
口に手を当て、思わず息を呑む。
老婆の前には、さっきまで追いかけていた少年が、首を吊って死んでいる姿があった。
ラキはどうすればいいのか分からず、ただ立ちすくんだ。
その時、老婆が背を見せたまま、静かに呟いた。
「お前が…」
ラキはその言葉に凍りついた。
「お前のせいだ。」
その言葉が、胸に響いた。
──
──
ラキは、掛け布団を蹴飛ばすようにして跳ね起きた。
同じ布団で寝ていたハッピーも、その音に驚いて跳ね起きた。
ラキの鼓動が、部屋中に響いているようだった。
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