始まり-3
らなかった。
何度も飛び跳ねながら、プレゼントの箱をぎゅっと抱え込む。
「おばあちゃん、おじいちゃん、ありがとう!」
ラキの声ははじけるように明るく、心からの笑顔がその場を照らした。
──その刹那。
老爺が、どこからかカメラを取り出した。
ラキに向けて、カシャッと素早くシャッターを切る。
「……うむ。やはりこの子の笑顔ほど輝いているものはないな。」
そう言って、白く長いヒゲを指でなぞりながら、満足そうにうなずいた。
しばらくして、老爺はフィルムを外し、それを丁寧に広げる。
そしてラキと老婆にそれを見せた。
「フィルムを外すと、現像できなくなりますよ。」
老婆が苦笑交じりに言う。
「いいんだ。このフィルムにこそ、本物の景色が写っているのだから。」
老爺はそう答えた。
ラキもまた、その光景を目に焼きつけた。
この時間を、絶対に忘れないようにしようと思った。
──うと。
まぶたが、ゆっくりと重くなる。
普段よりずっと遅い時間まで起きていたせいか、ラキの目は眠たげに細まっていた。
「おじいちゃん、おばあちゃん。今日はありがとう。ラキ、もう寝るね。」
プレゼントの箱を両手で大事そうに抱えたまま、目をこすりながら立ち上がる。
「あら、そうね。もうこんな時間だものね。お手紙は、明日にでも読みましょう。」
老婆の声に、ラキはこくんと小さくうなずく。
そして、きゅっきゅっとパジャマの裾を引き上げながら、階段をのぼっていった。
──ギイ、ギイ。
この日の階段は、いつもよりずっとよく軋んでいた。
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