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不幸な少女は神になる  作者: カモノハシ
序章-死神と少女-
2/42

始まり-2

ラキにとっての最初の不幸は、六歳の誕生日に訪れた。


 


その日は雪が降っていた。


 


白い粉が静かに舞う夜の中。小さな部屋の中には、三つの影と一匹の犬。


その中心には、ケーキが置かれていた。


 


べちゃっとしたスポンジ。


じゅくじゅくとしたイチゴ。


細いチョコレートが、垂れた糸のように文字を描いている。


 


見た目は、正直なところ少し不格好だった。


けれど、手作りのそのケーキを囲む顔には、あたたかい光が宿っていた。


 


老夫婦とラキ、そして愛犬のハッピー。


皆がケーキの周りに座り、小さな祝いの火を見つめている。


 


 


「ハッピバースデー ラキちゃん。ハッピバースデー ラキちゃん。」


 


老婆──ラキの義母とも言える存在が、年老いた声でゆっくりと歌う。


その声は少しふるえていて、どこか懐かしい響きを持っていた。


 


ハッピーも、どこか分かっているかのように、タイミングよく「ワン」と一声あげた。


 


「前にも見たことある行事だぞ」とでも言いたげな顔をして。


 


 


ラキはというと、ほんの少し緊張した面持ちでケーキを見つめていた。


 


(うまく消せるかな……)


 


去年は、うまくいかなかった。


口を閉じすぎて、息が出なかったのだ。


 


今年こそは、かっこよく一息で火を吹き消したい。


 


「ハッピバースデー ディア ラキ〜」


 


そして、おばあちゃんは歌の最後で、いつも息を溜める。


 


 


──間。


 


 


それから、演劇のフィナーレのように、声を張り上げた。


 


「トゥ〜ユ〜〜〜〜!」


 


 


その瞬間、ラキはきりりとした顔になり、目をぎゅっと閉じる。


そして思いきり、息を吹きかけた。


 


 


部屋の中に、静けさと緊張が走る。


 


……火は消えたのか?


 


ラキはゆっくりと目を開けた。


 


 


そこには、ちゃんと消えた蝋燭。


 


老夫婦は、ぱんぱんと拍手を送ってくれた。


それは少し大げさなほどに優しくて、ラキの胸をくすぐった。


 


 


「ラキ、お誕生日おめでとう。」


 


「開けてごらん。」


 


そう言って渡されたのは、小さな包み。


 


中には、手編みのマフラーと、老夫婦からの手紙。


 


それを見た瞬間、ラキは足をじたばたとさせて、満面の笑顔を浮かべた。


 


「開けていい?」


 


「もちろんよ。」


 


 


ラキは、その時思った。


 


自分は、きっと世界一の幸せ者だと。


**********


この作品を読んでいただきありがとうございます。


コメントや評価、レビューを是非お願いします。

モチベーションに繋がり、日々を頑張れます。


1話毎の文字数は多くならないようにしているので、気軽にお読みいただければ幸いです。


**********

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