始まり-1
この物語の主人公は、まだ五歳の赤毛の少女。
名前は──ラキ。
明るくて元気で、よく笑う子だった。
小さな身体で、毎日を全力で駆けまわる。
村の大人たちは、そんなラキを見ていつも笑顔になる。
「ラキちゃんは本当に元気だねぇ。」
そう言われるたび、ラキは得意げに笑った。
ラキが暮らしているのは、山あいの小さな村。
地図に名前が載るかどうかも怪しい、ひっそりとした場所。
便利なものもなければ、派手な娯楽もない。
けれど、風は気持ちよくて、空は広くて、季節の移り変わりがよくわかる。
そんな、静かで穏やかな村だった。
ラキは、二人の老夫婦と暮らしていた。
おじいさんのゲルトと、おばあさんのマリア。
二人とも、血の繋がりはなかった。
でも、ラキのことを本当の孫のように大切に思ってくれていた。
「おはよう、ラキ。今日はいい天気だよ。」
「うん。ハッピーとボール遊びしてくる!」
それが、ラキのいつもの朝のやりとりだった。
老夫婦には、かつて実の子がいたという。
けれど、その子は病で亡くなってしまったらしい。
だからこそ、ラキに注ぐ愛情はとても深くてあたたかかった。
ラキもまた、その愛に素直に応えるように育っていた。
そんなラキの親友は、愛犬のハッピー。
ふわふわの毛並みで、おとなしくて、やさしい犬。
ラキがまだ赤ん坊の頃から、ずっとそばにいる。
毎日、ラキはハッピーとボール遊びをする。
──といっても、ラキが投げたボールをハッピーはあまり追いかけない。
ただ尻尾を振って、ボールを転がすラキを見ているだけ。
それでもラキにとっては、大好きな時間だった。
草の匂い。
空を渡る風。
土のぬくもりと、木漏れ日。
それが、ラキの日常だった。
貧しくても、不自由でも、そこには幸せがあった。
ラキは信じていた。
この毎日は、ずっと続いていくのだと。
……ただ、一つだけ。
ラキには、避けようのない不幸があった。
それは──
とある『死神』に、見つけられてしまったということ。
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