5章 異なる常識
読んでいただいてありがとうです。設定は徐々に出来てるけど辻褄が合わなくなりそうで怖い…
目が覚め河から這い上がり仰向けになる『ここは何処だ?うっ!』頭の痛みで思い出す。
子供は?周りを見渡そうと体を起こすと河に数体のゴブリンの死体があり、後ろから物音がし振り向くと奴隷の子供が裸で木を集めている。
痛む頭を押さえ『おーい!大丈夫か?』と声をかける。
どうして裸なんだ?てか女の子だったんだな…勝手に男だと思い込んでいた事を申し訳なく感じる。
声を掛けられた子供は体をビクッと震わせ『あ!起きた!使徒様こそ大丈夫ですか?それにこれからどうします?』と聞いてくるがその前に寒さで体が震えだし、空を見ると日が沈み掛けている。
『ごめん先に火を点けて温まりたい』震えながら言いうと『火ならあっちにありますよ?今ちょうど使徒様が起きているか薪集めのついでに見に来たんです』そう言われ付いて行くと森に入り開けた場所に出る。
焚き火がしてあり木の枝を地面に刺し服を掛け乾かしている、俺も服を脱ぎながら『火はどうやって点けたんだ?』そう聞くと『え?普通に魔法ですよ』そう言われる。
『魔法が使えるのか?人は皆使えるのか?どうやってるんだ?』捲し上げるように質問すると『あの?使徒様は魔法が使えないのですか?』そう聞かれる。
『武器生成は…魔法なのか?な?』言葉の歯切れが悪いと子供が話し出す『えっと私が使っている魔法は初歩魔法と言われる魔法です。適性があれば使える魔法です』そこから魔法について知っていることを聞いた。
適性判断の仕方を教えて貰ったがマナを指先に集めて光ったら、適性があるらしいがマナがそもそも分からないし光らなかった。
魔法は適性があっても大抵の人は初歩魔法だけしか使わないそうだ、理由を聞いたが初歩魔法以上を学んでも使えないかららしい。
一通り話が終わると突然子共が聞いて来る『使徒様って名前はあるんですか?私はナナって言います』俺の名前?名前があるのか?いや名前があったはずだ日本に居た記憶はあるのに自分の名前だけ記憶から消えている?
急に様子が変わった俺を見て『使徒様どうしました?何か気に障りましたか?』ナナが心配そうに聞いてくる『いや俺の名前が思い出せないんだ』
それを聞いたナナは『じゃあ私が名付けてもいいですか?名前を思い出すまで!』無邪気に訊ねて来る。
まあいいか…変な名前なら変えればいいしななんて思い『いいけど変なのはやめてくれよ?』俺の返事を聞いたナナは考え自信満々に言う『じゃあバルバトス!』なんか凄い名前だなって思っていると『うーんやっぱり、バルさんって呼んでいいですか!』と笑顔を向ける。
わざとではないと思うが…『バルはいいがさんを付けないでくれ』さんを付けるとなんか別のを連想してしまう。
『分かりました!』とナナの言葉を聞き『それじゃあナナに聞きたい事があるんだ』そう切り出す『何ですか?』『どれくらい河に流されたんだ?』『どれくらい流されたかは分からないです私も途中で意識が無くなって』
よく助かったな俺たちは…何て思っていると『目が覚めると隣にバル様がいて運ぼうとしたんですが重くて…』申し訳なさそうに話す『でもどうして火を俺の傍じゃなくこの森の中で点けたんだ?』
『川沿いはよく魔獣が水を飲みに来るので火を炊くと縄張りを荒らされたと勘違いして襲って来るんです』なるほどだからポッチたちの村も河から離れてたのか…
『そうだ!犬の獣人達と合流しないと』多分だが河の流れ的に河を渡れたということは分かるが『ここは何処なんだ?森を進めばそのうち合流できるかな?』ナナに聞くと『今日はもう暗いので明日捜索しませんか?まだ服も乾いてませんし?』
その言葉を聞いて少し自分が恥ずかしくなる『そ、そうだな今日はもう寝よう、明日歩きながら考えようか』そう言ったがどうやって寝ようか?と考えていると『見張りは私がしますバル様は寝てて下さい』
その言葉に驚きながらもそうかここは異世界か…こんな森で野宿自体危険だよなと思い『見張りは俺がやるよ!ナナが寝て起きたら交代しよう』
その提案を聞いてもナナは私がやると言ったが無理やり寝かしてから地面に座りため息を吐く、ふと見上げると星が見える『何でこんなことになってんだ?どうせなら森じゃなく町に転生したかった』誰に言った訳でもないが愚痴が零れる。
少し時間が経って、眠気はあるが緊張と火の世話で一睡も出来ず乾いた俺の服をナナに掛け周りが明るくなってくるとナナが寝言を言いだす『やめ…やめて……ごめんなさい…もう』急に起き上がり顔をこっちに向ける。
『おはよう?』と声を掛けると目をパチパチしながら『え?ん?あ!バルしゃま!すいません!今から私が交代します!』とふらふらしながら立ち上がる『まあまあ落ち着いて、服を着て一緒に河に行ってまず顔を洗おう?』俺の言葉にハイと申し訳なさそうに頷く。
俺も服を着てナナと河に歩き出すが『すいません私バル様に迷惑をかけて…』さっきからずっとこの調子でこっちが申し訳ない感じがしてくる。
何て言って励まそうと考えていると、河の流れる音と嫌な匂いがする。
河が見えてくると『バル様!あれ!』ゴブリンの死体が大量に流れ着いており河は血で濁っていて、ゴブリンの死体は剣で切ったり刺した後や真っ二つになったであろう片方があったりで地獄ような状態だった。
少し吐き気に襲われながら『ナナさっき場所に戻るぞ!直ぐに移動だ!』ナナは戸惑いながらわかりましたと返事を聞き、直ぐに焚き火の場所に戻ると『どうして?昨日は死体が数体しか無かったのに…』ナナが取り乱す。
装備を着けながら『ナナ落ち着け!何が起きてるか分からないがとりあえず移動だここから離れるぞ!』焚き火を消し河と反対方向に移動を始める。
河から離れ森を歩いていると何か争う声が聞こえてきて、声と音のする方に進むと整備された街道ような場所に出ると馬が居ない馬車が多数のゴブリンに襲われている。
ゴブリンは馬車を囲むように群がり護衛も馬車を守るように配置していて、見える範囲で三人いるが馬車に近づかせないように牽制している。
俺は武器生成でコンパウンドボウを生成し小声で話す『襲われてるみたいだな。ナナどうする?助けるか?』聞かれたナナは俺を見て『私は何も出来ないですよ?無視してもいいじゃないですか?』そう話す。
ナナの冷たい言葉を聞き少し動揺したが『わかったナナは隠れてろ俺は見殺しに出来ないから助けに行く!』俺の言葉を聞きナナは不満そうに頷き森の方へ隠れる。
さてどうする弓で撃ってもいいがそこそこ距離があり外れたら護衛に当たるかもしれない、それにゴブリンの数は減ってきてるが押され気味だ。
そろそろやばいな武器生成で地雷が生成出来るなら頼む出てこい!手に重さを感じ安堵する。
よし!行くぞ!震える足を叩き森から出る『おい!目と耳を塞げ』そう叫びピンを抜きゴブリンの近くに投げるとゴブリンは一瞬こっちを見るが目の前に落ちたものに目をやる。
『敵が増えたぞ!』と馬車の護衛が声をあげると同時に一瞬の光と音がゴブリンと護衛の聴覚と視覚を襲う。
ゴブリンと護衛が混乱しゴブリンは木の棒を振り回し近くのゴブリンに当たり倒れ、護衛も混乱して声をあげ何かを伝えようとするが何も伝わっていない。
カオスな状況になり混乱しているゴブリンに矢を放ち倒していくと『そこのお前誰だ?これ以上近づくな!』護衛の一人が俺に剣を向けて来る。
剣を向けて来た奴含めて全員が布で口を覆っている事に何か違和感を抱いていると馬車の後ろにいた護衛が声をあげる『ボス!こっちは終わりました』全部のゴブリンを倒したようだ。
『こっちの被害は?』ボスと呼ばれている奴が俺を見ながら会話する『ランスがさっきの音でパニックを起こしてゴブリンに突っ込んで死んだ!』
『クソが!これだからジャンキーは!』と吐き捨てると『ラークお前はそこで周りを見張れ他の奴もだ!ダン!こっちに来い』弓を持った奴が来る『ボスこいつは?』何かを小声で話し俺を見る。
『おいおい!なんださっきのは?そのせいでこっちは一人死んだぞ?』ダンが弓を構えるとボスが続ける『とりあえず身ぐるみ剥いで全部こっちに渡せ』助けたのに恐喝されているんだが?
『ちょ、ちょっと待て!一人死んだのは申し訳ないが助けたんだぞ?』説得するが『ダンやれ』矢が顔の横を通る『助けてくれって言ったか?』話しにならないと思いもう一回フラッシュバンを生成する。
親指でピンを抜き、まてまてと片方の手で大げさに手を振り『わかった!わかった!くれてやるよ!投げるぞ?』と言いコンパウンドボウ投げ、続けてフラッシュバンも投げる。
『あ?なんだこれ』ボスが弓を拾おうとする瞬間、光と音がボスとダンを襲うその隙に森の中に走る。
『ナナ何処だ!』森を走りナナを探す『バル様!こっちです!』声がする方へ見ると木の上にナナが居た。
『ナナ飛び降りろ!受け止めるからすぐにここから逃げるぞ!』何があったのか知らないナナは俺の言葉に動揺しながら答える『は、はい!わかりました』
ひょいっと降りたナナをキャッチしそのまま走る。後ろからは追ってくる気配が無いが、後悔だけが残った。
『ナナの言う通り無視すれば良かったな』とボソッと愚痴が出るそんな俺を見てナナは不思議そうな顔していた。
現実的に異世界にチート能力なしで森スタートは即死もしくは運よく一日な気がします。
理不尽に殺されるなんて普通にありそう。小話ですがナナが死ぬか生きるかで迷いました。