51章 不穏な空気
読んでいただいてありがとうございます。長くなりそうだったので切りました。
5月21日 編集しました。ちょくちょく内容が変わりましたが、特に最後の方が大きく変わりました。
ルチルの元を離れてギルドに向かおうとするが、その道のりを曖昧にしか覚えてない俺は腕に抱いているナナを見る。
ナナはギルドの横にあるリガールと言う宿屋で働いていたと言うので断然俺より詳しいと思い、尋ねるとナナは嬉しそうに話しだす。
『もうーバル様はホント私が居ないと駄目ですね…』そう切り出すと機嫌がさらに良くなり、ギルドへの道を教えてくる。
そんなナナに道を聞きながらギルドに向かって歩いていると変な集団が馬車を連れこっちに歩いているのが目に入る。
『なんだあれ?』全員が黒い服を着ていて黒い布で顔を隠して歩いて来る姿に思わず声が出るが、ナナは体を震わし、怯えているのか俺の胸に顔を埋めて集団を見ないようにしている。
怯えるナナに異様な雰囲気を感じつつも歩みを止めず、その集団とすれ違うがナナは怯えて体を震わし、さっきまでの嬉々とした様子は何処にもない。
『ナナどうした?大丈夫か?』心配になりそう話し掛けるが俺の言葉にナナは答えず、小さい声でギルドへの道を話すだけでそれ以外は黙ってしまう。
無事にギルドの前に着くがナナは落ち着くことはなく、依然として怯えており、明らかに普通ではない為、こっちも不安になって話しかける。
『ナナ?さっきの奴らに何かされたのか?』『大丈夫です…何もされてないです』俺の言葉に小さい声で返答するが、その様子から先程の集団に不信感を募らしつつ、後で詳しく聞こうと思いギルドの扉に歩き出す。
ギルドに入って受付の前に行くと下を見て何かを書いていた受付の女性は俺を見て驚き声を上げる『依頼のもうし…え?大丈夫ですか⁉』
その声に釣られ、別の女性が現れるがその人は以前、ギルドでラニーとジョエルの聴取が終わるまで、待つための部屋をわざわざ用意してくれた人で顔は知っているが名前は知らない受付の女性が心配そうに声を掛けて来る。
『バトスさん?…その怪我は?』『あー怪我は大丈夫です。それよりカイルはもう来てますか?』『あ、はい。もう来られてます…それとギルドマスターから部屋まで案内を頼まれてます…』
受付の女性は俺の全身を見て、血まみれでありながら平然とする俺の姿に困惑しながらカイルが居る部屋まで案内をしてくれる。
『バトスさん。何があったんです?』途中そう聞かれ、なんと答えるのが正解か分からず『いろいろと…』としか言えなかったがそれ以上は何も聞いてはこなかった。
扉の前に着くと受付の女性は扉をノックして扉の向こうに居る人物に俺が来たことを伝えると軽く頭を下げその場を離れていく。
『おお!やっと来たかーバトスー!入れ!入れ!』中からカイルの声が聞こえ、扉を開けると中は酒臭くジョエルだけがやつれた顔で俺を迎えてくれる。
『バトスさん…お久しぶりです…』ジョエルの挨拶に軽く返事をして、椅子に座るシラフのジョエルにこの状況を聞こうとするが、ある物を見て理解する。
それは机の上にある酒瓶で、そのうちの数本は空になって地面や机の上で横に倒れている。
これはカレンが大事に抱えて持っていた酒瓶だと嫌でも分かる為、カレンを探すと壁に背を預け地面に座るカイルが話し掛けて来る。
『バトス~遅かったな!先に始めてるぞー!』元気に酒瓶を掲げ、ぐったりするダリルの首に腕を掛けてそう話すカイルにジョエルは口を挟む。
『こんなことになってすみません…バトスさんを呼びに行ったカレンさんが一人で帰って来るなり、バトスさんはすぐ来ると言って酒を飲み始めまして…』
そう言ってジョエルは目線を手前にあるソファーに目をやるので覗き見るとカレンはソファー全体を使い大の字になって気持ちよさそうに酒瓶を持って寝ている。
『…まぁ見ての通りです…先に一人で潰れて…その後は残りの酒をカイルとダリルが勝手に飲み始めてこうな…』『ジョエルとバトスも飲めって!これ滅茶苦茶うめーぞ!』
ジョエルの言葉を遮り、話し出すくらい完全に出来上がっているカイルを無視してジョエルは俺に話しかけて来る。
『…まぁ立って話すのもあれですからどうぞ座って下さい』そう言われカレンが眠るソファーの対面にあるソファーに行き、ナナを下ろそうとすると、落ち着いたのかいつの間にか寝ており、そんなナナを横に寝かして、俺も座るとジョエルが話し出す。
『それで…この酒瓶と連れてくるはずのバトスさんはどうしたのか、カレンさんに事情を聞く前に寝てしまったので直接バトスさんに何があったか聞いてもいいですか?』
ジョエルには帝都に入る時も子供の薬代を世話になったりと、で信用できると思い、カレンには内緒にしていたナナが拉致されたことを話す。
俺から事の経緯を聞いたジョエルは考え込む、そこで気になっていた事を尋ねる『べアルスファミリーってどういう存在なんだ?』俺の質問にジョエルは口を開く。
『バトスさん厄介な連中に目を付けられましたね。それにその連中が何者かと言いますと裏社会の人間ですね。私が聞いた範囲では違法薬物と帝都では認められてない奴隷の売買で大きくなった犯罪組織です。
昔はべアルスと言う孤児院があったのですが、そこの経営者が死んでグレッグと言う息子が引き継いだらしいんですがその息子が相当な悪人だったらしく、気付いた時にはべアルスファミリーと名乗り、孤児院は閉鎖して本拠地になってたそうです』
マフィアか何かだとは思っていたが確かにやばい連中に目を付けられたな…それに何とかカレンのおかげであの場は助かったが…次は無いと思った方がよさそうだな…
そんな事を考えているとジョエルは真剣な表情で話しだす。
『バトスさんが会ったそのボルガっていう奴ですが…帝都全体を収めているボスです。それに何人か兄弟が居て、長男のボルガ以外は帝都には居ないですが、兄弟の一人が王都にも居るそうなので気を付けて下さい』
『何故、王都の話しを?』『王都に奴隷の子供達を返すって聞きましたから一応言っておこうと思いまして…』ジョエルには王都に行く話をしたことが無いのにそう言われ驚く。
『それとバトスさん帝都に居たら隠れる事は出来ませんよ?何処にでもべアルスファミリーの息がかかった人間は居ます。悪い事は言わないから早く帝都から出ることをお勧めします』
ジョエルからの助言に感謝を伝え、帝都から出る準備を早めようと考えていると、今回の本題と言ってもいい話を切り出す。
『さてお金の話ですが…ここに四百万ラルあります』そう言って袋を地面から持ち上げ俺に見せて来る『バトスさんとラニーには百五十万、百五十万の三百万ラルで残りの百万ラルは私たちの物で大丈夫ですか?』
そう聞かれるが金銭の価値が分からず、ジョエルからのこの提示も適正かも分からない為、素直に尋ねる。
『少しおかしいと思うかもしれないが俺はこのラルの価値が分からないんだ。例えばパン一個すらどれくらいの値段するのかも分からない…』
俺の言葉に鳩が豆鉄砲を食ったようを喰らったような表情をジョエルは見せる。
『あーえー………まぁバトスさんは帝都の人間じゃないので分からない事もあるでしょう…』少し変な間があり、何かを察したのかジョエルはそう前置きすると話し出す。
『バトスさんの例えで言えば、パン一個だと大体は銀貨の五百ラルがあれば買えて、余ればおつりで銅貨の百ラルを渡されるといった感じです。
あと今回のバトスさんに渡す百五十万ラルですが…それだけあれば帝都で二年くらいは生きていけますね。もちろん豪遊などしなければの話しですけどね』
淡々とそう話すジョエルにお金の種類を聞くと簡潔に教えくれる。
『十万ラル一万ラル五千ラル千ラルの四種類の紙幣に五百ラルの銀貨と百ラルの銅貨の硬貨二種類があります。
昔は全て硬貨だったらしいのですが勇者の仲間の一人である賢者が紙の作製方法を発明した結果、王都で紙幣の発行が始まり、今ではあらゆる所で紙幣で取引出来るようになりました。
それと以前使われていた金貨があるのですが金額で言えば一万ラルです。もうほとんど換金されて見かけませんが…あと銀貨と銅貨は一番流通量が多かったのでまだ残っているといった感じです』
ジョエルからのお金の話しが終わり感謝を伝え、聞きたいことをジョエルに話す『少し話が変わるが、食堂とかの料理人として働いたら、いくらくらい給料がお貰えるんだ?』
ナナが働いている話を聞いた時、自分が情けなくなり少しでもお金を稼げる知識と、騙されないようににそう訊ねる。
『正直いくら貰えるかはわかりませんが、一日に五万ラル貰えたらいい方ではないでしょうかね?すみません…私も詳しくないもので…ですが、冒険者の事でしたら詳しくお話しできますよ?』
そう言われ冒険者の話をジョエルから聞く。
『冒険者が受ける依頼やランクによりますけど、Cランクで魔物などの討伐依頼だと金額の変動はありますが約四十万から二十万ラルは貰えます。
DとEランクはそこから半分以下くらい金額が減ってしまいますがギルドからの強制依頼が無いので、薬師や肉屋とかが副業で冒険者をやる人がEランクには多いです』
『副業という事は稼げるのか?』俺の些細な疑問にも優しくジョエルは答えてくれる。
『いえ、稼ぐ目的じゃないです。帝都の外に出て自分で素材を集める為ですよ。帝都は他の国と比べて遠くに行かなければ比較的安全で魔物も少ないので、
薬師なら薬草を肉屋ならハーブを取りに外に出るのですが、冒険者のドッグタグがあればいちいち通行料を払わなくてもいいですから』
なるほどと感心しているとジョエルは冒険者ギルドの成り立ちを教えてくれる。
『ちょっとした小話ですが、今の冒険者ギルドは何でも屋に近いです。ですが、はるか昔は冒険者ギルドはそうでは無かったそうです。事の始まりは貴族が奴隷や犯罪者を自分の領地に居る魔物と戦わせる娯楽でした。
ですが奴隷や犯罪者は丸腰でしたので、死んで少なくなると次は領民が標的になったのですが、そんな事を進んでやりたいと思う領民は居なかったので、お金で釣って魔物を戦わせるといった形になって、
結果的には魔物が減っていき兵士の仕事だった魔物駆除が無くなり、領地に居る魔物が少なくなって安全になった事で、それを自慢した貴族から広まり、色々あってお金を払う仕組みをちゃんとする為に冒険者ギルドが作られるといった感じです』
そんな話を聞いているとカランカランッと何かが落ちる音が鳴り響きカレンが目を覚ます『う…うるさいな!寝れないじゃない!』そう怒鳴ると体を起こし目を擦りソファーに背中を預ける。
落ちた物の正体はカレンが持っていた酒瓶で手が緩んだのかそれが落ちて音が鳴り、目を覚ましたようだった。
カレンは上を向き頭を押さえ声を漏らす『う~気持ち悪い~』『水か何か持って来ようか?』俺がそう声を掛けるとカレンは『水持って来て~』と力なく言葉を返す。
立ち上がり部屋の隅に置いてある、水が入ったピッチャーに向かう俺にジョエルは話し掛けて来る。
『バトスさん、部屋に入って来た時から気になってたのですが…服とズボンが血だらけですけど大丈夫ですか?』そう聞かれグラスに水を満たしながらジョエルに言葉を返す。
『一応大丈夫のはず……さっき話したボルガって奴にナイフで足を刺されたんだが、そいつが治療の能力持ちで…治してもらった?治された?んです』そう話して水の入ったグラスをカレンに渡す。
『そ…そうですか……えー、ナナさんは何とも無さそうでよかったです』少し困惑した様子のジョエルにこの流れでさっき見た集団について尋ねる。
『そういえば、ここに来る前はナナは元気そうだったんだが、黒の服で顔も黒の布で覆った変な集団が居て、ナナがそいつらを見てから怯え始めたんだが、何か知ってるか?』そう話すとジョエルは驚き声を上げる。
投稿が遅いのは忙しいのもありますが、設定を細かくし過ぎたせいで、いちいち確認をしないと駄目のが進まない原因だと思う…




