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夜への約束

作者: 双子座

初カキコども………


筆が暴れて好きに書かせてもらいましたッ

「ねぇ、人って死んだらどうなるのかな」


俺の隣で寝転びながら夜空を眺めている少女


「|知らねぇなぁ……妥当なところだと天国とかじゃねぇの?」


俺はあまり関心を示さずぶっきらぼうに答える。


実際興味はない。生きている時に死んだ後の事を考えことなんて想像もしたことなかった。


「もぉ!夢もロマンもないんだから!」


そう言うと少女、俺の幼馴染の柚子は俺の顔にむしり取った雑草をかけてきやがった


何しやがる、青臭すぎるぞ


顔についた草を払いやられたように雑草をふりかけてやった


「わぁぁぁ!なにすんだよ!」


慌てて柚子は雑草を振り払う。ざまぁみろ


「夢とかロマンとか俺には分からねぇけど今を生き抜くので精一杯だよ俺は」


やり返されたのが気に入らないのかジトッとした眼を俺に向けてきた柚子に答えてやる


「リアリストだよねぇ君は」


柚子は座り直し改めて星を眺め始めた


俺達は田舎の展望台にいる


祖母の家がある地域は星が綺麗に見えるということで有名だった


その話を柚子にすると異様な食いつきを見せて行ってみたいと駄々をこねてきやがった


夏休みを待って渋々連れてきてやったが失敗だったかもしれない


柚子と俺は恋仲ではない


だが仲は良いほうだと自分でも思う


それに本人には絶対言わないが柚子は可愛いことで有名だ


スタイル良くて愛嬌もある、モテないわけがない


ただ幼馴染というだけで俺達はここにいる


学校の奴らからは恨まれているがな


「お母さんが言ってたんだ」


柚子は右手を宇宙に向かって伸ばした


「人は死んだら星になっちゃうんだって」


ありがちな話だ、星となって側にいてくれるってやつだろう


「ありきたりな話だな、よく聞くよ」


俺はちょっも呆れながら答えた


「えへへ、確かにね。でもお母さんはその後こう言ってた

 星になったあと見守ってる人に星になった自分を見つけ 

 てもらえれば永遠にいっしょなんだって」


「……急なヘビー展開だな」


俺は持ってきたお茶を飲む


初夏を過ぎた夏は夜でも暑い、汗がじっとりとにじむ


だけど暑さ以上に俺は別のものに圧を感じた


恐る恐るその方向に顔を向けると先程まで上を向いていた柚子がこちらを見ている


その瞳にはいつの間にか輝きを失っている


柚子は偶にこうなる。俺がクラスの女子や部活の女友達と話していると何処からか現れて間に入ってくる


「……私はさ、死んじゃっとしたら悠馬に見つけてほしい」


じっとを俺を見つめる柚子の瞳はどんな夜よりも暗く見えて、吸い込まれそうだった


「わかったよ………見つけてやる、約束だ」


俺は諦めたように言い放つ


頭をポリポリと掻きながら隣に座る柚子の頭を撫でてやる


「お前みたいにやかましいのが空に居座ったら他の人が可哀想だ」


くしゃくしゃになった頭を柚子は慌てて直している


いつも通りの柚子だ


「うん、約束。ちゃんと私を見つけてね?」


満面の笑みを浮かべた柚子の顔が歪んでいく


ちゃんと見つけてね


約束だよ


ピピピピピッ


無機質なアラームで俺の意識は覚醒する


「……またこの夢か」


俺は布団から起き上がり目ざまし時計の横に飾ってある写真を見つめる


二人で撮った最初で最後の写真


俺はそっとそれを手に取り顔をしかめる


「柚子…………許してくれ」


柚子は死んだ


呆気ない最後だった


トラックに轢かれそうになった子供を助けて柚子は死んだ


俺が部活の大会で居ないときに起きた事故だった


あいつらしい最後だった


でも俺は受け入れられなかった


葬儀にも出れなかった


線香すらあげれなかった


初めの方は学校の奴らも悲しんでいたが時が経てば皆忘れる


教室にあった柚子の机はいつの間にかなくなっていた


それが俺には耐えられなかった


柚子という存在が消えてしまったみたいで


時は流れる


俺がいくら現実を無視しようとも世界は流れ続ける


高校を卒業して


大学に行った


地元を離れて暫く経つ


いつからだろう


柚子が夢に出てくるようになったのは


今日は柚子の命日


いつまでも会いにこない俺には痺れを切らしたのだろう


俺は服を脱いでシャワーを浴びる


冷たい水は俺の意識をはっきりとさせこちら側に持ってくる


「そろそろ、ケジメつけないとな…」


俺は今年、柚子の七回忌に行く


自分と柚子の思い出にキチンと終わりをつけなければならない


身支度をして俺は車に乗り込み地元へと向かう


車内で色々なことを考えてるうちにあっという間についてしまった


実家に来るのすら久しぶりだ


「ただいま…」


俺は帰ってこれていない罪悪感から声がどもってしまう


「あら、久しぶりじゃん悠馬」


台所から母さんが出てきた


相変わらず歳の割に見た目が若すぎる


挨拶や思い出話も程々に俺達は喪服に着替えて柚子の家に向かう


鼓動が早くなる


柚子の両親は俺を許してくれるだろうか


葬式にも来なかったクソガキを許してくれるだろうか


「悠馬くん………大きくなったね…」


柚子のお母さんは俺を見ると俺の手を握って少し泣いていた


「すみません…葬式にも出れなくて、でもようやく踏ん切りが付きました」


俺は声を震わせながら言葉を紡いだ


話している最中に涙が溢れてきやがった


ちくしょう、泣かないって決めてたのに


柚子のお母さんは俺の頭を撫でてくれた


「よく頑張ったね、辛かったもんね。柚子も喜んでくれるわ」


俺よりも柚子のお母さんのほうが辛いに決まってる


一人娘を亡くして今は夫婦だけ


一番可愛い盛りの娘を亡くしたんだ


辛くないわけがないだろう


俺は柚子の七回忌後に柚子の家に呼ばれた


「ここ、柚子の部屋なの。あの時のまま……いつか悠馬くんが来たらここに来てもらおうと思って」


柚子のお母さんは俺を柚子の部屋に通した


柚子の部屋


俺はあいつが生きていた時にはよくここで遊んだものだ


押し入れに入ってかくれんぼしたり


窓から屋根に上って遊んだり


……いかん、泣きそうだ


「………失礼します」


俺は泣き顔を見せる前に部屋に入った


部屋に入った瞬間に懐かしさに襲いかかられた


柚子の匂いだ


人間は匂いを忘れない


あいつの匂いだ………柚子の…


俺は泣き崩れた


俺の心は柚子が本当に居ないことを書き記した


死んでることくらいわかってる


でも認めたくなかった


ここに来なければ柚子は生きている様な錯覚をしていた


だけど俺はここに来た


柚子との約束を守るために


机の中には日記みたいなものが入っていた


あいつの趣味だ


その日起きたことを書いてよく俺に聞かせてくれた


俺はそれが好きだった


あいつが


笑ったことや


泣いたこと


怒ったこと


悲しんだこと


全てが愛おしかった。


あいつの全部が


好きだったんだ


俺は泣きながら柚子の日記を見続ける


懐かしいことや面白かったことに溢れていた


新しい日記を読もうと引き出しを開けようもすると鍵がかかっていて開かない


「柚子のお母さんに開けてもらうか……ん?」


読みかけの日記の最後の方に文字がかかれていた


【○月○日 悠馬との天体観測!!】


赤マジックでデカデカと書かれていて柚子らしくて笑ってしまった


ページの隅っこに小さく


告白するっ!


と書かれていた


「…柚子」


柚子はオレに好意を向けていてくれた


わかりやすく好きだとアピールしてくれていた


ガキだった俺には少し甘酸っぱすぎた


周りから茶化されるのが嫌で一度本気で怒鳴ってしまったことがある


それ以来、柚子は人前でそういうことをしなくなった


あの時の悲しそうな眼を今でも覚えている


………約束を果たしに行こう


見つけられなくても怒るなよ?


俺は部屋を出て柚子のお母さんに声をかける


「ありがとうございました。おかげさまで、前に進めそうです。」


「うん、そのほうが柚子も喜ぶわ。もう遅いし、うちに泊まっていきなさい。お父さんもきっと喜ぶわ」


柚子のお母さんは嬉しそうに笑ってくれた


「その前に、柚子との約束を守ってきます。あいつとした数少ない約束なんで」


「約束……?そんなに気負わなくていいのよ?それにもう遅いわよ?」


まだ弱ってると思われたかな


本当に優しい家族だな柚子


「いえ、ちょっと行くだけですので!じゃぁ!」


俺はそう言うと柚子の家を出てあの日、約束した場所に向かう


自転車だと遠く感じたあの山も車で行けばすぐだな


柚子と走った道を車で走る


思い出が頭を巡る


ここは柚子と買い食いをした商店


ここは柚子と水遊びをした川


ここはカブトムシを取って遊んだ山辺


全部が大切な思い出だ


車を止めて展望台まで歩く


時刻は夕方18時、秋が近くなり周りもオレンジ色に染まっている


……?こんな坂道続いたっけ?


子供の頃の記憶には無かったような坂を登りつつ俺は展望台へと登った


俺の眼の前には一面に広がる地元の山々と暗くなりつつある宇宙だった


柚子、見つけに来たぞ


さっさと出てこいよ、これからはずっと側に居るんだろ?


俺は暗くなった空にを見ながら星を見る


…………うん、やっぱり居ない


わかっていた事だった


星になったアイツを見つける


メルヘンにも程がある


それでも


俺はアイツを


見つけたかった


側にいて欲しかった


会えたら今度こそ


好きだって


言いたかった


「…感傷に浸りすぎたな」


俺は来た道を引き返そうとする


すると坂下から突風が吹き荒れた


「うわっぷ……」


俺は思わず眼をつむった


何なんだ……俺が眼を開けるとそこには平な道が続いている


坂がなくなった


さっきまであった坂がなくなり平坦な道が続いている


言いようのない恐怖に俺は襲われた


やばい、何か猛烈にやばい!!!


俺は慌てて帰ろうとした


その時だった


「置いてくの??こんなに可愛い私を!?」


聞き覚えのある声


何度ももう一度聞きたいと願った声


神にさえ祈ったほどに会いたいと想った人


振り返ってはだめだ


本能はそう言う


だけど考えるよりも前に俺は振り返っていた


そこには


柚子がいた


あの日事故で死んだはずの柚子


声が枯れるくらいまで泣き叫んで会いたいと願った


「柚子………柚子なのか?」


「はぁい!柚子です!」


俺の困惑とは裏腹に柚子は明るく笑いながら答える


変わってない


あの時のままの柚子


「柚子……………!柚子!なんで、死んじゃったはずじゃ……」


俺がまだイカれてなければこの世界には死者を蘇らせることなんて出来ないはずだ


「…この山の神様がね?会わせてくれたんだよ、もう一度悠馬似合いたいって強くお願いしたら今のタイミングが丁度いいって」


柚子は涙でぼろぼろになった俺の顔を手のひらで包む


触れる、柚子はいるんだ


「柚子…!ずっと言えなかった、好きだって!いつまでも当たり前のように俺の隣りにいるって信じてたから言えなかった………愛してるんだ……」


みっともなくてもいい


男らしくなくても良い


今はただ、伝えたかったことを伝えるだけだ 


柚子……もう離すもんか……ずっと一緒だ


「悠馬……私と一緒に居てくれる?あの時の約束通り、ずっと一緒にいてくれる?」


柚子は恥ずかしそうに照れながら聞いてくる


あたりまえだ


もう離してやるもんか


「俺達はずっと一緒だ」



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本日のニュースです


1週間ほど前から行方がわからなくなっていた


四辻悠馬さんが崖の下で遺体となって発見されました。


遺体には外傷もなく他殺と見られ捜査が進められています。

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