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血縁関係にない妹が優秀で可愛い

作者: 湧水紫苑

「さて出かけるか」

俺はシューズの紐を縛り立ち上がった。

「うん、そうだね」

お出かけする妹の姿はとても眩しかった。

「……あのさ、本当にいいのか?」

「えっ? どうして?」

「いや、だって……」

言いよどむ俺に、結衣はクスクスと笑う。

「いいんだよ、私が行きたいんだから」

「でもなぁ……」

「私もたまにはお兄ちゃんと一緒に出掛けたいんだもん」

そう言って、結衣は俺の腕にしがみつく。

その笑顔はとても可愛くて。

だから俺は、何も言えなかった。

「じゃあ行こう!」

「ああ、分かった」

そして、俺たちは電車に乗ってショッピングモールへ向かう。

こうして二人きりで出かけていると、なんだかデートしているみたいだ。

そんなことを考えながら、俺たちは歩いていた。

「うわー、人が多いね」

「そうだな。やっぱり休日だからかな」

今日は日曜日で、人が多く賑わっている。

「ねえ、どこに行こっか?」

「そうだな……まずは服屋に行くか。結衣の新しい服を買いたいし」

「あっ、それ賛成!あと、文香さんたちにプレゼントする小物とかもいいかも」

「確かにそれもアリだな」

2人で話しながら歩いていると、すぐに目的地に到着した。

このモールにあるブランドショップに入ると、店員さんたちが明るい声で迎えてくれた。

店内を見渡すと、様々な商品がある。

メンズ用のシャツ・ジャケットはもちろんのこと、レディース向けの洋服もある。それに、バッグや靴などの小物の類もたくさんある。

以前来た時よりも品揃えが豊富になっている気がする。リニューアルしたのか?

「うわぁ……凄く素敵なお店だよぉ……」

「だろ? 俺もよくここで買い物をするんだけど、どれもセンスが良いんだよ」

「そうなんだね。なんかワクワクしてきたよ」

そう言うと、結衣は子供のように目を輝かせる。

いや、子供なんだけど。

そんな結衣を見ているだけで心が和む。

「よし、行くぞ」

「うん!」

そして、俺たちは服選びを始める。

「これ可愛いなぁ……あっ、これもいい感じかも」

結衣はたくさんの服を見て回る。

すると、その中の1つを手に取った。

「ねぇ、お兄ちゃん。これどう思う?」

結衣はその服を自分の体に当てる。

淡いピンクのワンピースで、フリルが付いている。結衣の雰囲気にも合っていると思う。

ただ……胸元が大きく開いていてセクシーに見える。

まあ、今の結衣なら似合うとは思うけどさ。

「いいんじゃないか?結衣によく似合いそうだし」

「そ、そうかな……えへへっ」

俺の言葉を聞くと、結衣は照れくさそうに笑った。

それからしばらく色々な服を着てみて、最終的に2着まで絞ることができた。

1つはベージュ色のロングスカート。もう1つは水色のミニスカートだ。どちらも夏らしいデザインとなっている。

「どっちか迷っちゃうなぁ……」

結衣は頬に手を当てながら悩んでいる様子。

俺は2つのスカートを持って、試着室の前に移動する。

「結衣、どっちにする?」

「うーん……決めた!私はこっち!」

結衣はすぐに決めて、水色の方のスカートを受け取る。

「じゃあ、着替えてくるね」

「おう、待ってるよ」

カーテンを閉める前に、結衣は俺にウインクをして見せる。その仕草がとても可愛かった。

しばらくして、カーテンが開かれる。

そこにはさきほど選んだ水色のスカートを着た結衣の姿があった。髪はポニーテールにしている。

その姿を見た瞬間、俺は思わず息を呑んでしまった。

眩しい、眩しすぎる。

見ている俺のほうが恥ずかしい。

「どうかな?」

少し恥ずかしそうにしながら尋ねてきたので、俺は慌てて答える。

「すげぇ似合ってるぞ」

「本当!?ありがとう!」

結衣は嬉しそうに微笑み、鏡の前でクルッと回ってみせる。

「うん!やっぱりこっちの方が良かったみたい!この服を買うことにするね」

「ああ、それがいいだろう」

「じゃあ、ちょっと待っていてね」

「分かった」

そして、結衣は再びカーテンを閉じる。

今度こそ本当に1人になったので、俺は大きく深呼吸をした。

「ふう……」

改めて冷静になってみると、かなり緊張している自分に気づく。

いつも一緒にいるから慣れたと思っていたけど、今日は全然違う。

なんというか……大人っぽい雰囲気を感じる。

もちろん、結衣はまだまだ幼い。だけど、それでも普段より色っぽく見える。

それに、今日はかなり露出が多い服装をしている。

服越しでも分かるくらい大きい胸元。すらっと伸びた脚。そして、大きく開いた背中。

今まで何度も見てきたはずなのに、ドキドキしてしまう。

もしかしたら、結衣のことを妹としてではなく女性として見ているからかもしれない。

もし、この場にいるのが俺じゃなくて他の男だったら……考えるだけでも恐ろしい。

「お待たせ、お兄ちゃん」

気づけば、カーテンが開かれていた。

そして、結衣はさっきと同じように笑顔を見せる。

「……」

俺は言葉が出なかった。結衣の姿を凝視したまま固まってしまう。

結衣は不思議そうな顔をしながら、俺の顔を覗き込んでくる。

「お兄ちゃん?」

「あっ、ごめん……」

我に返ると、結衣はニコッと笑う。

「ふふっ、そんなに見つめられると恥ずかしいんだけどなぁ」

「そ、そうだな……悪い」

「別に謝ることじゃないけどさ。ところで、どうしたの? 何かあった?」

「いや、何でもないよ。それより、早く会計を済ませようぜ」

「うん、そうだね。店員さんも待っているし」

俺たちはレジに向かい、それぞれ購入した商品を受け取って店を出た。

その後、小物などを見て回ったり、昼食を食べたりして、モール内で過ごした。

結衣と一緒だからなのか、すごく楽しい時間を過ごすことができた。

午後5時過ぎ。俺たちは電車に乗って家路についていた。

結衣は俺の腕にしがみついて眠っている。

きっと、楽しかったり疲れたりすると眠くなるタイプなのだろう。

「すぅ……すぅ……」

寝息を立てている結衣の顔を見ると、思わず頬が緩む。

こんな可愛い女の子が自分の妹だと思うと、何とも言えない幸福感がある。

親の離婚を経ているとはいえ、ある意味幸運なことだ。

「結衣」

小さな声で名前を呼ぶ。

「ん……んん……」

すると、結衣はゆっくりと目を開けた。

「あれ……私、いつの間にか寝ちゃっていたんだね」

「ああ、ぐっすり眠ってたよ」

「えへへっ、なんかごめんね。重くなかったかな?」

「大丈夫だよ。気にするなって」

「ありがとう」

結衣は俺にギュッと抱きついてくる。

結衣の温もりと柔らかさが伝わってきて、心が落ち着く。

「ねぇ、お兄ちゃん」

「なんだ? まだ眠いか?」

「ううん、そういうわけじゃないんだけど……」

結衣は俺の肩に頭を乗せる。

「もう少しこのままでもいい?」

「ああ、いいぞ」

「やった!」

結衣は嬉しそうにはしゃぎながら言う。

それからしばらくの間、俺たちは身を寄せ合っていた。

「あー、楽しかった!」

家に帰り、リビングに入ると結衣は大きな声で言う。その表情はとても満足げだ。

「それは良かったな」

「うん!本当にありがとお兄ちゃん!私のわがままを聞いてくれて」

「まあ、たまにはこういう日があっても良いだろ。結衣はいつも頑張ってくれてるからさ」

結衣は中学3年生にして家事全般を完璧にこなしている。それだけでも十分すごいことだ。

それに、毎日料理を作ってくれるし、掃除だってしてくれる。感謝してもしきれないくらいだ。

「ううん、そんなことないよ。私は当たり前のことをしているだけだもん」

「それが凄いんだよ」

「そう言ってもらえると嬉しいな」

結衣は嬉しさでいっぱいという感じの笑みを浮かべる。

俺も結衣の力になれていることに喜びを感じた。

「あ、そうだ。お兄ちゃん、ちょっと待っていてね」

結衣はパタパタと足音を立ててキッチンへと向かう。

そして、冷蔵庫から2つのプリンを取り出した。

「はい、これ!」

「おっ?」

結衣が差し出してきたものは、カップに入ったプリンだった。

コンビニとかでよく見かけるものだ。

「これは今日付き合ってくれたお礼!はい、どうぞ」

「おお、ありがとう」

結衣から受け取ったプリンは少し重かった。

おそらく、結衣も一緒に食べようと思って買ってきたのだろう。

「じゃあ、一緒に食べるか」

「うんっ!」

2人でソファーに座っていると、結衣がプリンを乗せたスプーンを差し出してきた。

「はい、どうぞ。私が食べさせてあげるね」

結衣が楽しそうな様子だったので、俺は素直に従うことにした。

俺は口を開け、結衣がプリンを口に運んでくれるのを待つ。

そして、結衣は俺の口の中に優しく入れる。

「美味しい?」

「……うん、おいしいよ」

「ふふっ、良かった」

結衣は安心したように微笑む。

結衣の笑顔を見ると、俺の心まで暖かくなってくる。

その後も、結衣に食べさせてもらったり、逆に結衣に食べさせたりして、楽しく過ごすことができた。

「ねえ、お兄ちゃん」

「どうした?」

「来週の日曜日って空いているかな?」

「えっと……多分大丈夫だと思うけど……」

確か、特に予定はなかったはずだ。もしあったとしてもキャンセルすれば問題ない。

「そっか!ならさ、また出かけない?」

「ああ、もちろんいいぞ」

「本当!?やった!」

結衣は嬉しそうに喜ぶ。

そんなに喜ばれるとは思っていなかった。

「ちなみに、どこに行きたいんだ?」

「うーん、遊園地に行きたいなぁ」

「分かった。それじゃあ、日曜日に行こうか」

「うんっ!」

こうして、俺は結衣とデートの約束をしたのであった。

翌日。朝起きると、結衣が朝食を作っていた。

俺はあくびをしながら、キッチンへ向かう。

「おはよう、結衣」

「あっ、お兄ちゃん、おはよう」

結衣はフライパンで目玉焼きを作っている最中だった。

「今、できたところだから座っててね」

「ああ、ありがとう」

俺は椅子に座り、結衣の料理が出来上がるのを待っていた。

しばらくして、トーストやサラダなどの簡単な料理が完成していく。その手際の良さに感心してしまう。

「よしっ、これで完成!どうぞ座ってくださいな」

テーブルの上に完成したものが置かれていく。

結衣は俺の隣に腰掛けた。

「いただきます」

「はい、召し上がれ」

結衣の作ったご飯を食べ始める。

うん、いつも通りとても美味しい。

「……あのさ、結衣」

「ん?どうしたの?」

「結衣は……寂しくはないのか?その、父親と母親に会いたくはないか?」

ずっと気になっていたことだ。

結衣は昔から明るい性格だったが、その明るさの裏には寂しさがあるんじゃないかと思っていた。

「全然平気だよ!だって、私にはお兄ちゃんがいるから」

「結衣……」

結衣の言葉を聞いて、胸の奥が熱くなる。

俺たちの両親はお互い離婚した男女が結婚し、そのときの父親が連れてきたのが結衣だった。

しかし結衣を連れてきた父親は結衣を預けてまた離婚した。

つまり結衣の肉親とは全て縁が切れていることになる。

「お父さんとお母さんは会いたいと思ってるかもしれないけど、でもね、今は我慢する時だって思うから」

「……」

「それにね、私は1人じゃないよ。お兄ちゃんがいてくれる。それに、みんなもいるし。だから、私は幸せだよ!」

結衣は優しい笑みを浮かべながら言う。

そんな結衣を見て、俺も幸せな気持ちになる。

「そうか。結衣がそう言ってくれると嬉しいな」

「ふふっ、これからもよろしくお願いします!」

「こちらこそ、これからもよろしく」

それからしばらくの間、結衣と一緒に朝食を食べるのだった。

「お兄ちゃん、行こっか」

「ああ」

結衣をなんとかして幸せにしてやりたい。いい人を見つけて幸せな家庭を築いて欲しい。

もし見つからなかったら、その時は……。

そのためにもまずは勉強をがんばろう。

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