文学少女は、血が止まるまで流れてるのを知らなかった
「月が綺麗ですね」は、「あなたが好きです」という意味なのです。夏目漱石
「強い者が勝つのではない、勝った者が強いのだ。」フランツ・ベッケンバウア
私は宇佐見緋音です。緋色のヒ、音のネ。
人を愛して、人に愛されて、普通に生きています。
いつの間にか特別に成られました。
私がただいい人になりたいんです。
***
あの日、私と同じ色の人に出会った。見たことがない景色を見ったし知らない自分を知ったし、全ての始めだ。
「太宰...ナツメ?」私は作文に没頭してる彼の文章を覗き読んだ。
「誰?」彼が驚いて、後ろを振り向いた。
「ペンネームですか?」書かれてる名前は彼の本当の名前か知りたかった。
「勝手に読まないで!」彼が逃げるように去った。
私達は互いの名前を知らないまま、初めの出会いを終わった。使わない文芸部の部室で日記か随筆か遺書か書く彼の事が気になって、なんかほっとけなかった。
私が勝手に彼の世界に入り込んで、お節介してみた。部室がナツメの色に染まって、又私の色を重ねた。それは私達の景色だ。
「なぜ友達にならなきゃ?」彼が聞いた。
「だって君の後ろ姿が悲しそう。愚痴る対象なら、あまり知らない人がいい。私達の交差点はたったここのようだ。」
「癒されたい人は君じゃない?そんな気持ちを持ってるから、他人のが見える。」
私はあの時になぜその部室にいるか思い出した。
「実は恋人に振られた。好きな男ができたって。勿論悔しいけど、ほっとする気持ちもある。幸せかどうか分からないけど、楽な恋愛にきまってる。涙も出ない私が本当に恋人を愛するか自分にがっかりした。」
「僕からすると、君が恋人を大事にしてた。」彼の言葉が私の胸に刺さった。ずっと出せない涙がすっと流れた。
この日、彼の色が私と同じことを知った。私達がどこまで似てるか知りたくなった。
彼と何度もその部室で会った。下らない話をしながら、相手の事を知っていく。例えば彼がわざと片仮名で名前を書く理由は好きな人との絆で、繋がってる証みたいな物だ。
そして私達は互いを利用することにして、秘密ができた。
しかし私がこの大切な関係を壊した。彼を知れば知るほど、彼が欲しくなる。好きに成れないと思ったのに、男も好きになった。
私なら彼に一番相応しい恋人に成れると思うけど彼に選ばれる人こそ特別だ。「強い者が勝つのではない、勝った者が強いのだ」のようだ。
彼と夏の夜の月を見たいけど彼がただ夏に届きたがってる。季節ではなくて人だ。
***
私も彼も普通に人を愛して、愛される。
私達もただ好きな人の特別になりたいんです。
いつの間にか悪い人に成りました。
ご覧いただきありがとうございます。この小説が好きなら、ぜひ「腐向け異世界で恋のために戦う」もお読みいただきます。主人公達は現実世界に過去の話が書かれています。緋音と棗、棗と夏目、夏目と夜月、彼らの話がまだ終わりません。