SNSでバズる方法
俺は普通のサラリーマンだ。バズることを目的とした呟きをSNSで発信しているが、なかなかバズらない。
「はぁ、どうにかバズらねぇかな……」
そんな時、とある広告を見つけた。
『バズる方法教えます!初回限定1000円です!!!』
と書かれていた。
んなバカなと思う一方で、もしかしたら?という気持ちも湧いてきた。たった1000円。昼飯を2回我慢すれば出せる金額だ。
そう思った俺は、広告にあったリンクに飛び1000円を支払った。キャリア決済ができるようで助かった。
だが、支払い画面の後の羅列された文字列に疑問を浮かべた。
「投稿して待つだけ……?」
払い終わった後だったため、後悔が押し寄せる。が騙されたら騙されたでその授業料だと思おう。
その後、俺はSNSに呟いた。内容は「今のメディアに踊らされたくはない、自分で見たものが全てではないか」ということだ。半信半疑のまま、その日は眠りについた。
次の日、朝起きた時にSNSを見て驚いた。今まで見た事もない速度で通知が来ている。いいね数は多いときでも2桁だった。フォロワー数も昨日までは100人程度だったものが、今は4桁になっている。
「いいね数6000……!?やっば!バズった!」
初めて”バズる”経験をした。思わず、SNSのいいね数をスクショした。つぶやきについている返信を見ると。
『わかります』
『百聞は一見にしかずだよな』
『いいこと言うな』
などなど、肯定的な意見ばかりだった。もちろん否定的な意見もあるが、今はそれも気にならない。
自分が世界に認められたような錯覚になる。
最高の気分だ。その日は機嫌よく会社に向かった。
夜になり、また俺は呟いた。内容は「何かあったらすぐに写真を撮り、SNSにあげるのは不謹慎ではないか」ということ。
翌朝、そのつぶやきを見た俺は衝撃を受けた。
「なんでいいね数が伸びてないんだよ!」
フォロワー数もいいね数もバズる前に戻っていた。念の為広告がページをブクマしていたから、そのページに飛ぶと。
「ん?なんか書いてあるぞ」
書かれていたのは、「当広告は、1投稿のみの効果となります。再度ご利用されたいお客様は追加料金をお支払いください」
追加料金だって?と見ると金額は2000円だった。ただ効果は前と変わらず1投稿まで。
「1投稿か……まぁ、2000円だったら……いいか」
昼飯を4回なら、まぁ、いいか。コンビニでおにぎりでも買えばいいし。そう思い2000円を支払った。これでまたバズる、そう思っていた。
次の日SNSを見て、俺は怒りを覚えた。
「は!?どうしてバズってねぇんだよ!」
昨日の投稿が全くバズっていなかった。腹が立ちまたあの広告に飛んでみる。
よくよく見ると、さらに小さな字で「場合によってはバズらない可能性もあります。その際の責任は一切負いかねます」と書かれていた。
「は?また課金かよ……」
そう思いつつ、バズった時の高揚感を思い出し、また購入ページに飛ぶと赤字でこんなことが書いてあった。
『おめでとうございます!ただいま確率が2倍になりました!』と表示されていた。
「バズる確率がってことか……?」
金額は4000円。隣にはまた赤字で「バズる確率が3倍になります」と書いてある。
「というと……6倍か?」
その時のSNSの様子を思う。その妄想に武者震いすらした。
「4000円かぁ……まぁ、いいか」
その後、呟いた投稿がいいね数が1万を超えた。
「1万超えると、端数が表示されねぇんだ!すっげぇ!」
これに味を占めた俺は、その後も広告で課金を続けた。
たまにバズらない場合もあったが、そんなの関係ない。まるで、自分が世界で必要とされている天才だと思った。
「金が足りねぇ……」
あれから課金をし続け、とうとう金額が7万を超えた。家賃と光熱費を抜くと、もうこれ以上は払えない。けど、このままじゃバズれない……。
「普通のバイトじゃ、稼げねぇし。なら、工事現場?いや、無理だわ。体力ねぇし俺」
とうとう、俺は犯罪に手を染めた。当たり屋になった。昼間は会社に行き、夜は狙いやすそうな人を見つけて当たった振りをし、示談金として金銭を得た。
そのうち、歩行者では満足な金額が得られなくなり車にわざと当たるようになった。もちろん怪我をしないように。会社にバレないように。
「今日は、あの車かな」
今日も狙いをつけて当たりに行った。だが、その車が突然スピードを上げた。
まともに当たった俺は地面に転がった。全身が痛い。誰か救急車を。
周りがざわめき始めた。助かったと思ったが、誰も彼もが声をかけてこない。
痛みに耐え、薄目を開けると皆一様にスマホをこちらに向けていた。
なぜだ、だれか、たすけてくれ、しにたくない。
あぁ、なんでこんなことになったんだろか。おれが、わるいのか?SNSにのいいね、なんかむちゅうになったから?
目を開けているのがしんどい。目を閉じ意識が薄れていくのを感じる。
最後に誰か何か言った気がするが、それすらわからない。
「今回のバズったの料金。確かに頂きました」




