停止ピクトグラム
エレベーターで逃げたら、奴が階段で追って来ているのが見えた。やはり、予定通りトイレに逃げ込むしかない。俺は元々学校サボるつもりだったが、向こうは次の電車に乗らないと遅刻だ。要は次の電車まで粘れば撒ける筈だ。
トイレの中は、一限には間に合うが朝礼に間に合わない生徒によって鏡や個室、洗面台が使えなくなっている。どこか似た者同士の雰囲気を感じる人が多く、こちらに気付いた洗面台を椅子だと思ってる群が端へ詰める。座んないけどな。
壁に寄りかかってボーッと時間が過ぎるのを待つ。さっきの人型はなんだったんだろう。だいぶ早く走れていたのに階段や線路へ逃げて行かなかったところをみると、あいつもホームから出られなくなっていたのかも知れない。看板に描かれたマークがそのまま降ってきて、しかも動いていた。追いかけてきた女子も妙な技みたいなのを使ってきた。まあ、転ばせるためって感じの地味なやつだったが。走る人型を俺に対して投げ寄越すように言ってきた以上、あれは俺のものなんだろう。どこであんなのになつかれたんだ?
そんな考え事をしても結局分かることはなく、ダラダラゲームをしていたらいつの間にか周囲の朝礼遅刻群がいなくなっていた。しかも、清掃のおばちゃんが入ってきた。出よう。
出てすぐのベンチに、あいつが座っていた。Uターン。「清掃中、他所を使え」という看板が置かれていた。地面をブラシでこする人が描かれている。トイレは立ち入り禁止状態になった。
「あっ、出てきた!」近くに非常口の看板を見つけると、やっぱりあの人型が出てきたのが見えた。少し離れた場所でじっとしている。あいつを使って隙をみて逃げよう。さっきの感じから、多少はあの人型が言うことを聞くと信じてみる。
「ずっと待ってたのか…」
「おかげで遅刻確定。今日中にあんたを片付けて明日からはいつも通りに登校するの。」
「別に何かした訳じゃ無いんだから、他の奴を追ってくれよ」
「仲間がいるのね?」
「いや、俺があの走るやつを見たのは今日が初めてだ。お前はその前からずっと何か探してキョロキョロしてただろう?」
「あー。あそこで『代弁者』を出してたのはあなた以外にもいたのね。」
「代返者?」
「『代弁者』。サボり友達じゃない。彼氏があのモンスターたちをそう呼んでんの。」
「なんなんだあいつら?」
「一人一種類呼べてー、総じて人の形をしててー、普通は見えなくてー、普通は触れなくてー、」上を見ながら特徴を列挙する女子。俺はそーっと距離を取り始める。ガスッ。下顎に何か当てられた。
「こんなかんじで召喚した人の言うことを聞くやつもいてー、」ぶつかったのは、さっき俺を転ばそうとした一対の人型。が、ずいぶん縦長に伸ばされたもの。この女子が仕掛けてこなかったのは警戒を解いていた訳ではなく、逃げても追撃できるからだったようだ。
「召喚中は召喚した人に異常がみられてー、あと、召喚者の願い事に関係ある技が使える。ぐらい?」
「詳しいな。ああいうのを退治してまわっているのか。」
「ええ。先月から。」
「浅っ、なんか特別な団体なんだろうと想像してたわ。」
「彼氏が召喚できる人で、だんだん私にもわかるようになっちゃったの。」
本題。「なんで俺みたいな他の奴を攻撃するわけ?」
「さっき、召喚した人に異常が出るっていったじゃない?私はそれが、『近くの代弁者を消すまで、倒すためにガンガン行動する』っていうものなの。代弁者が「止まれ」のマークだからだと思う。あなたは多分…、『遠くに逃げられない』ってかんじじゃない?」
「それで、電車に乗るのを待たず襲ってきたわけだ。」俺が逃げ出さないよう、どんどん知っていることを教えて足止めしているんだろう。それにしても、俺の人型を引っ込めないと俺はまた見えない壁に邪魔されるわけか。
俺は、人型に看板に帰るようジェスチャーした。人型は「あっちいけ」を「こっちこい」と勘違いした!
「居たァ!」俺の人型に向けてなんども地面から一対の人型が伸び上がって襲いかかる。
「あーもう。さっきみたいに戻すから一回攻撃やめろ!」
「消えろ!消えろ!すばしっこい奴ねぇ!」聞いてない…。
「おーい、看板に逃げ込めー!」人型はパニクっている。清掃中の立て札にタックル!当然その看板には入れないそのまま男子トイレに逃げ込んでしまった!
「クソがぁっ!お前は逃げれるのかよ!」怖っ。性格変わってんじゃん。
「ギャーーー!なんだいコイツは!?」トイレ内から、おばちゃんの叫び声が聞こえた。
○以下設定
・主人公
名 覚束 すすむ
本人 面倒なことからすっと遠のくので、周囲の人は彼に役割を任すとき、来ない前提で動く。それなら下手に関わんない方が効率的、という言い訳でさらに遠のく。
代弁者 非常口マーク「逃げたい」
特徴 見た目はそのまま走っている人のピクトグラム。
多少言うことを聞くが、危機感を覚えると逃げ惑う。今のところ看板がないと呼べない。
呼んだ人は、そこから出られなくなる。
由来 昔、親が離婚したとき、どっちに付いてくるか聞かれて決められず家を飛び出す。保護されるころには親権者が決まっていた。それから、決断、とか、役割、とか、選択とか面倒なこととかから逃げるくせが付いた。本当は逃げるのも面倒で皆の方から離れてほしいと思っているため、周囲に出口を示すマーク。
能力一覧(一人計9つ覚えたら最後に奥義が出る。技の対象ごとに3つづつある。)
1 ×代弁者が壁走りも出来るようになる。看板がなくても一体呼べるようになる。
2 ×自分の逃走・回避・反撃が上手くなる。
3 ×相手が視界・同じ敷地・同じ地域から逃げるようになる
奥義 緊急事態(奥義の効果は皆まだ秘密)
追ってきた人
名 楠出 花菜
本人 彼氏はゾンビ使い。最近彼氏と二人そろって遅刻や早退をして代弁者狩りをしている。名前は くすではな と読むが、殆どのひとに なんでかな とか かな と呼ばれる。
代弁者 止まれマーク「待って」
特徴 見た目は背丈の違う二人組のピクトグラム。
出てきて欲しい場所に出てくるが、動かない。
召喚してなくても、近くにいる代弁者を倒すために召喚者は積極的・短絡的(自覚なし)になる。
由来 幼少期、撫でようとして追いかけた猫が車に轢かれたのがきっかけの一つ。行動力が高く、色々な物事に関わってまわるためトータルの失敗回数が多いだけだが、それを自分が短絡的だからだと思っている。ただ、失敗時周りのフォローから自信を失うには至らずに済んだ。そのため、自分がしっかり考えて行動すればうまくいくと考える。短絡的な自分、どんどん変わる状況に「待って」。
能力(○は既に出来ること。×はまだ。)
1 ○代弁者を出て欲しい位置に出す。何もないところに出現させることと、地面から飛び出させることができる(長さ可変)。×いずれ、面積自体をそのまま大きくできる。
2 ○自分の動きを止める。×自分の時間・状況を止める。前者は周囲の干渉を受ける。後者は受けない。
3 ×相手の動きを止める。自分の周りのものを止める(3m)。全ての状態(自分の思考以外。自分も動けない)を止める。
奥義 交通安全
先の展開は決めてるけど、次回の内容は未定。目についた身の回りの人型をどんどん敵として追加していこうかなと。今のところ登場人物達を今一つ好きになれない。