3.変な混ざりもの
気を取り直してまたページをパラパラめくってみる。
この程度でへこたれていては旅人はできない。
旅人は冒険者より総じて弱いため生き残るには武力以外の秘訣もたくさん必要なのだ。
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・グリンスター歴1055年
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え
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、第三節26日
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やばい。
この世界とは全く関係のない日記まで紛れ込んでる。
グリンスター歴とは別の宇宙、「SF世界タイプβ」と勝手に呼んでいる世界の銀河歴だ。
はっきり言ってこんなものがこの世界に流入したら技術革新だのパラダイムシフトだのシンギュラリティどころの騒ぎじゃない。
こちらの世界のこの星も魔導技術はかなり進んでいて近代に迫るほどの発展を見せているが、あちらの科学技術ははるか彼方だ。
はっきりいって某星間戦争の映画が石器時代に見えるレベルで進んでいる。
ほんのわずかに情報を漏らすだけでも数百年単位で技術を発展させてしまう危険がある。
技術間に格差が大きければそもそも伝わらない、というのは楽観が過ぎる考え方だと何度も思い知らされてきた。
前に石器時代っぽい世界に紛れ込んだ時に「ミサイルって何?」と聞かれたときにどうせわからないだろうと軽く構造を説明したら三時間で真似された。
それでマンモスだの恐竜だのを飼いならしまくられて、三か月くらい後にはゾ〇ドみたいな世界観になってめちゃくちゃ後悔した。
この世界で同じ事が発生しないかここらへんの日記をもうちょっとよく読むことにする。
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ログコトン星→惑星ウースキナサス間の宅配バイト、航行三日目。積み荷を確認していたらエナがいた。
とりあえず宇宙船の外に射出した。
なんか船のフロントガラスに張り付いて「あけてくださーい」だの「ひどいですよ~」だの喚いていたが無視してワームホール移動を開始した。
転送が終わってからもずっと窓に張り付いて「私じゃなかったら死んでましたよ~?」とか元気そうに喚いていた。
油汚れよりもしつこい奴だ。
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そういやエナがいたな、と白目で口から流血しながら思い出した。
この世界のとある小国のお姫様。
自国をほっぽって俺の事をストーキングしまくってるどうしようもないやつだ。
もともと議会で回ってる国で王家は象徴として祀り上げられた一族なのでいなくてもいいと言えばそれはそうなのだが責任感がないといえばそれもまた然り。
あいつがストーキングしてきて『各地』でお土産をしこたま集めているうちは日記ごとき気にしなくてもいいだろう。
技術の不自然な成長は望むところではないのだが、彼女は姫で勇者で聖女なのでぶっちゃけ俺には止めようがない。
彼女の周囲も人外の強さを誇るのだがそれを何枚も上回って強いのでまさに歩く光の災害と呼んでもいい。
俺は改めて流し読みに戻った。