分からないね!
………死にたい
目が覚めた時、この世の全てを呪うほどの後悔を覚えたことはあるだろうか?
俺はある。
時は二日前の宿屋にまで遡るが………
「許して下さい!」
「死にさらせや!」
1.襲撃者の無力化と初めて出会った女性の治療を行った。2.そしたら喧嘩し出した。3.結婚して!いや、無理。
………うん、意味が分からない。
殺人鬼と生霊に抱き抱えられた女性が知り合いだっただけでも複雑な思いだったのに婚約者同士とか。
『女の子に手を上げるような男なんかと結婚出来ません!』
『そりゃないぜ許してくれよベイビー!』
そんなやり取りを目の前で見せられる人の気持ちを考えてみてくれ。
お前ら人の部屋で何やってんだとカズマサは盛大なツッコミを入れたかったが、気だるく風邪がぶり返したのか意識が朦朧としだした。
(あぁ、ヤベエ。早く休みたい)
取り敢えず部屋から追い出そうと立ち上がると、ペケと呼ばれる男が困惑したようにカズマサの肩を掴んだ。
「嬢ちゃん無茶しちゃいけないぜ。」
気遣ってくれているのだろうが、カズマサは何かイラッときた。
「退けよ、そして帰れよ。彼女さん連れて帰れよ」
「そうは言ってもな」
「………殺そうとしたくせに」
「ッゥ!?」
自身の半分もない少女の一言に言葉を詰まらせるペケは思いっきり顔を強張らせた。
「…グウェン出るぞ」
「そう、ね」
「………?」
以外と素直に出ていった事にカズマサは、よからぬ勘違いが生まれていないだろうかと不安に思ったが、疲労がそれより優ってしまいベッドに倒れ込んだ。
――――――ペケ
部屋を追い出されたペケは扉から少し離れた床の上に倒れ込むようにして座り込んだ。
その顔には目に見えて焦燥が浮かんでおり、途中から己に対する自負の念のような激しい後悔を感じさせるものへ変化していた。
「…当然だよな。俺はそれほどの事をしたんだ。死んでないから、生きていたからなんて都合のいい解釈だ。俺は彼女を殺そうとした。その事実は変わらない。」
ペケは時間を巻き戻せるなら、先ほどまでの自分を八つ裂きにしたい思いに駆らせる。
滅多に感情的にならないグウェンがわざと汚い言葉まで使ってペケを黙らせようとしたのか、今さらながらに理解してしまった。
彼女は愛していた男が、堕ちて行くのをただ見ていられなかっただけなのだ。上部だけの愛を唄い人を人として見ず作業のように殺し…被害者を目の前に平然と無罪を主張する完全に狂った化け物のようになっていく自分はさぞ恐ろしかっただろうに。
それを捨てられたなど、彼女の思いも考えず絶望した俺は
「クソ野郎だ」
―――よからぬ勘違いは生まれていた―――
「ペケ、起きてしまったことは取り消せないわ。貴方は彼女に手をかけ私は命を救われた。殺そうとした罪も表だって問いただす気はあの子にはなさそうだった。つまり、私たちは彼女に一生の借りが出来た。そうでしょう?」
「そうだな」
「なら、償いましょう。一緒に」
――そしてそれは強制イベントの始まりだった――
ペケがやらかした事って第三者からしたら完全に狂ってて軽くホラーなんですよね。