た…し…か……ァ!!!!!!
ーー…しゅ……あ……
声が聞こえる
ーー…ッ…し……か……だ……
泥沼のように沈んでゆく意識の中、何かが自分に…
ーー…しゅ…か……だ…
繰り返し、語りかけている
ーーぶ……ゅ……あ……
同じ言葉を反復しているのだろう、その声は段々と鮮明になって行き
ーーぶた……は……ダァ…
ーー豚は出荷かダァァァァ!!!!!
最後に鉈を持った幼女が飛び込んで来た。
…………
……
…
「ブビフッ!?」
「おっ起きた。」
中年王子が目を覚ました。
生命の危機を感じた豚のような第一声は、会った頃の丸々と太った彼の面影を感じさせ思わず頬を緩ませる。
「ヒッヒィィ!出荷だけはご勘弁を!!」
「何言ってんだ?」
昨日まで瀕死だった人間とは思えない超高速土下座に、間抜けな声が出た。
人の顔を見ていきなり赦しを乞うとは…寝ぼけているんだろうか?
……
…
あのドラゴンを寝かしつけた後、生霊を足にして山の頂上までひとっ飛びに上り詰めた和也は、結果的に言うとエリクサーの泉を発見できた。
ただエリクサーの泉は『泉』と言うより水溜まり程度の残量しかなく爺さんに渡されたボトルに貯めると殆ど土に吸われて蒸発してしまった。
伝説の泉で豪遊する俺と可愛い子ちゃん達…風呂一杯分ぐらい汲んで帰りたかったのに非常に残念である。
まぁ、飲み仲間の中年王子と、よく知らないご近所さん達を救えたのは良かった。
爺さんも褒めてくれたし、治験のバイトも近々再開されるようだ。
しかし、これでは自分に利がなさすぎでは?
「なぁ爺さん」
「なんじゃ?」
「俺、ちょっと国滅ぼしてきたいと思うんだけど、手伝ってくんない?」
第1章【血を吐く王子、倒れふす住民達、絶対絶命の時、彼女は何を思うか!「ごめんね約束守れなかった…主よ、この身を捧げます」『邪龍討伐編』】完結