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「(そこは、黙るとこだろ?)」

「参ったなぁ………」


〈ドウラク街〉改定後→〈聖翼の街〉の裏山。

開けた平原の隅っこにある落とし穴の下にトトムはいた。


恐らく中型の獣用の落とし穴は深く、訓練でいくば鍛えた程度のトトムには這い上がれない。助けを呼ぼうにも女性がらみで狂気じみた友人から逃げるように山の奥底へと足を進め、途中から何を思ったか歩道を外れ獣道に。そしてそこに仕掛けられた罠に掛かった事をトトムは知っている。


つまり、助けは絶望的だ。

あるとすれば、罠を仕掛けた本人が確かめにくることだが、足下に広がる落ち葉のクッションは今が夏であることを考えるに、大分前からこの落とし穴が存在していたことを告げている。

あれから何日も経ったし(カズマサ)は、探してはくれているだろう………しかし、まさか山の中で落とし穴に掛かっているとは夢にも思うまい。


「参ったなぁ」


伊達にスラムで贅肉をこさえていた訳ではない。

トトムは手段さえ選ばなければ後数ヶ月、この穴の中で生き長らえることが可能である。だからといって、希望もない中薄暗い落とし穴の下でただ虫や雨水を食らっていられるほどトトムのメンタルは強くなかった。


「友よー!」


柄にもなく叫んでみる。

ーーけれど当然そんな声に反応する、


「うぉぉぉぉ」

『わるるるふ!』


カズマサと銀狼は空から降ってきた。


……………



………


……



「で、黒いあやつからそちは逃げて来たと。」

「仕方ねえだろ、あの忍者執拗に三郎殺そうとしてくるんだぜ。スペックとか生霊圧倒してんのに、庇いながら勝てる訳ねぇよ。」

「まぁ、あやつは前々から怪しいと思っていたがまさか名前がダブったからそちのペットを狙うなど………暇を言い渡して正解であったな。」


無事引き上げられたトトムは、焚き火を囲いカズマサの言に耳を傾け………黒装束の男を思い浮かべる。実力だけは、と騎士団の間でも注目を浴びていた男だが、いかんせんコミュニケーション能力と言うものが足りていない!とスカーが嘆いていた。また密兵の癖に文字も読めないとは致命的だ!とかなり扱いづらい存在だったらしい。

どのみち報連相を重んじる騎士団ではやっていけまい。今回のことが原因で聖翼は大幅な戦力ダウンを受けることになったが、理由さえあれば身内にさえ牙を剥く猛犬を追い出せたと思えば釣りが帰ってくる。



「よしっ冷えた体も暖まったし、帰るか」

「そうだな。」



なのに何故だろう。この胸のざわめきは。


黒いあの男を追い払った結果ーー我が友は、近い未来、取り返しのつかない過ちを犯す……そんな気がした。


「友よ、やっぱり連れ戻したほうが良くないか?なんかすっごい悪いことが起きる気がする。」

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