触らぬ神に祟りなし①
「ガハハ!お前たちは今日から自由だ!喜べ!」
突然のことに混乱が広がる。衝撃に馬車が揺れ盗賊でも現れたのかと身を震わせれば、皺の深い純白の騎士が現れたのだ。それどころか瞬く間に奴隷商その護衛達を斬り伏せ「自由だ」と優しく囁く…
状況を飲み込むには展開が早すぎた。
違法奴隷…その最底辺を強いられてきた僕たちは自由を得た?そういう認識で合っているのだろうか。
それから、半日。
ヒイッ!何故アイツがこの大陸にッッ…などと明朝、僕たち商品を積んだ馬車をこの世の終わりのような顔をしながら走らせていた主人が死んだ。
騎士様によれば、用事が済んだから片付けたらしい。
子供には刺激が強いと死に様は見せてもらえなかったが、騎士様は証拠としてあの主人が命より大切にしていた黄金のブレスレットを懐から取り出した。
胸がすく気分だった。
街まで送り届けられた。
大人達はそのまま解放され、子供は一箇所に集められた。
「一応、この街にある孤児院に君たち全員を預ける事はできるのだが、」
トルと名乗る騎士様と目があう
分かっている。僕は今年で12歳。孤児院での引き取りは11歳まで。
「分かっています。けど、少しだけでいいんです。路銀を分けて貰えないでしょうか?」
「いや、しかし…君のような子供が一人で、」
「大丈夫です。泊まり込みで働けるところにアテがあるんで。」
銀貨2枚を貰い、僕…ロキは本当の自由を得た。
……のだが、困った。
幼少の頃お世話になった祖父の鍛冶屋を頼ろうと思ったのに、道が分からない。
まぁ物心ついてすぐに攫われ売られ、クワを握って、人様の畑を死に物狂いで耕していたので覚えているわけもないのだが、参った。こんな事なら厚かましく道案内を頼めばよかった。
革命開け?とかで妙に人通りは少ないし、こりゃどうしたもんか…
「ニシニシ……そういやぁ三郎どこ行った?オッさんも居ねぇし、アイツらほっといたらどっか行くよなぁ〜」
途方にくれていると
休業中と描かれた店から爪楊枝で歯の間をつつく少女が現れた。
肩まで伸びた銀髪に目がいく、おかしな格好をした子だった。若干行動がオッさん臭い。けど、目鼻立ちは物凄く整っている。
「あ、あのっ!」
「あぁん、誰お前?」