繋ぎと紡ぎ、その手の中で~とある妹さんのアルバイトな日々~①
中学には、いいなと思う人はいたけれど、そこから何がどうとか動くこともなく終わってしまった中学生活。そして今は新たな出会いは期待できない高校上がりたて。母の仕事先にいつも顔を出していたこともあって、いつもお客さんと向き合う場所に行き来していた。そのせいか、関わらない人と話すのが苦手……ううん、下手をすると好みの人の前に立つだけで、石像の様に固まってしまうかもしれないと危機感を抱いていた。
そんなわたしを後押ししてくれたのは、周りの友達とパパ。曰く、「笑顔が柔らかいし、周りが温かくなれるんだからカフェにいっといでよ」なんて、根拠も何も無いけれど、意を決して方向転換。わたしが選んだバイトはカフェでした。
「あ、あのあのっ……こ、ここで働かせてくれませんかっ?」
人通りの激しい中に、ポツンと佇んで見えた古風なお店。中から出て来たオーナーさんらしき人に、深々と頭を下げてお願いしてました。
「いいね。丁度、奥手そうな女の子を求めてたんだよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
そこがどういうお店で、どんな風なのかなんて、見もしなかったのです。店を見上げたその時、わたしの心は再び、ときめき出しました。まぁ、わたしは奥手ではないんだけれどこれも何かの役に立ちそう。
「い、いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」
「キミの笑顔を一つ!」
「はぁ? むしろお前が笑顔見せろよ? さぁ、早く!」
「ゾクッゾク来るね~そうそう、その調子。キミは、冷笑が似合うよ。ボクちんが保証しちゃう」
「てめえみたいなザコに保証されるいわれはねえんだよ! ……こ、こんな感じですか? オーナー」
「そうそれ! その素のギャップが最高! 実はSの方が向いているのかもしれないよ?」
「あ? 誰がS?」
「おおぅ……背筋が冷たくなるねぇ。いい! 実にいい!」
男とはこうもおバカばかりなのだろうか。少なくともパパはそうではなかったのに。でも、Sだとしてそれもわたしの属性として受け入れてくれるおバカな男の子がいれば、わたしはその男の子を好きになるかもしれない。だから今はくだらなくても、このバイトを頑張ってみよう。まずはわたしを見つけ出すんだ。