ロングソード考察――もう少し点数つけるべき
※ 注意書き
・貴方は、この文章を全面肯定しなくても良い
・貴方の感想と作者のそれとが違っていても、貴方が馬鹿にされている訳ではない
・異なる考えの持ち主は数え切れないし、それらと分かり合えなくともよい
・だが他人の顔にウンコを塗ろうとすれば、相手は当然に怒る
・そして相手と友達ではないのなら、礼儀正しく話しかけるべきである
1、初期の中世ヨーロッパではマイナー
有名なローマ御用達グラディウスからにして、イベリア――現在のスペインで使われていた剣にアイデアを得ています。
なんでも――
イベリアやガリア地方の剣 → ハンニバル「これ、ええやん」
→ スキピオ「パクらなきゃ!(義務感)」
という流れだったとか(異説あり。湿地帯戦で苦労したから発明説もあります)
なので古代から中世初期にかけて、ヨーロッパでは『片刃の大きなナイフ』的な剣が主流だったようです。
刃渡りも長いもので70センチほど。大まかにいうと長い鉈? グルカナイフや剣鉈に近いともいえます。
ロングソードに比べるとかなり短くなりますが、腰に佩く前提ならば適切でしょう。
2、おそらくロングソードはスパタが先祖
グラディウスとは別にローマで採用された直剣がスパタです。
見た目からでもロングソードの系譜と判別できますし、古代日本や中国の直剣とも類似しています。
やはり真っ直ぐな剣というのは、多数ネタともいうべき普遍的発想なのでしょう。
しかし、ロングソードとは大きな相違点があるようにも思えました。
3、剣というのは同じ分類でも二種類ある
それが平時の護身用であるか、それとも軍事用かで違うようです。
これは全世界的な特徴のようで――
護身用は刀身を細く軽くしている場合が多く、刃の研磨も省略しない
逆に――
軍事用は肉厚な刀身として耐久性を高め、刃の研磨を省略することもある
のだそうです。
製品の出来やメンテにうるさい日本刀ですら、軍事用は刃の研磨を省略するケースもあったとか。
暴論ぎみですが……ロングソードとレイピアは、この関係にあるとも?
4、諸刃にも利点はある
ロングソードの様に両側へ刃を付けた剣の場合、斬り返し――振り下ろした剣を、また戻すついでの攻撃――を多彩にできるそうです。
これはフェンシングなどへ伝承されたそうなので、事実でしょう。
ただ、「それはロングソードに適応できないんじゃないか?」とも思ってしまいましたが。
5、斬るという点において、直ぐ刃は不利
反りがある剣の場合、「対象との接触部分を小さくできる=大きな力を掛けれる」であり、その分だけ切断性能が高くなるそうです。
これは世界各国の剣やナイフで――
直ぐ刃より反り刃や湾曲したラインの方が主流である
のと――
伝統的にロングソードだったヨーロッパですら、斬るためには直剣を止めた
のが論拠にできると思います。
ロングソードから派生したレイピアがあったのに、鎧が廃れたらカトラスやサーベルへ移行しましたし。
6、反りがあると衝撃に強い
アーチ構造とも見做せるので、反りのある方が耐衝撃で強いといえます。
7、初期のロングソードが長いのは、苦肉の策らしい
品質の良い鋼や鉄が入手できなかったので、すぐに刃が欠けたそうです。
それへ対処するのは研ぐしか手がなく、かといって研げば研ぐほど剣は短くなってしまいます。
なので逆に――
短くなっても良いように、予め長くしておいた
が発端だとか!?
まるで中学生の制服です(苦笑)
8、突くなら直ぐ刃の剣は優秀
剣先と重心点、柄本が一直線に並んでいる方がベターですし、ほとんどの剣は突けるように設計されてますが――
やはり直剣の突きやすさには負けます。
そして『斬る』、『突く』、『殴る』の攻撃方法を比較すると、『突く』の決定力は侮れません。
西洋剣術が突きにウェイトを置いていたと考えれば、ロングソードの発展も納得できたりします。
9、そして後期ロングソードは、突き特化の形跡がある
なんと重心点を手元へ近づけ、その長い刀身に振り回されないように工夫をしました!
ですが、これは斬ったり叩いたりする道具としては――
当然にスポイルです!
ぶん殴ったり斬ったりしたいのなら、重心は可能な限り先端の方が強いエネルギーを得られます。
ですが――
連続した突きを繰り出したいのであれば、重心は柄本の方がベター
といえます。
その分だけ命中精度や連続攻撃を期待でき、それほど威力も変わりませんし。
実際の映像――某有名武器メーカーの検証動画――から推察するにロングソードと日本刀は似たような貫通力といえそうですが、加えてロングソードの場合は攻撃密度も高くできるようでした。
10、さらに剣先保護の動きすら!
そして剣先を柔軟にし――
あまりに硬い相手だった場合、曲がることで破損を防ぐ
という設計思想へ!
色々な検証動画でぐにゃっと曲がっているのが見れますし、これも事実でしょう。
逆に日本刀などは硬すぎる対象だと、折れたりもあり得る?
11、突き特化には騎士の事情も
サーベルの問題点なのですが――
馬上から斬る武器を使うと、場合によっては剣が抜けなくなって落馬の危険もある
のだそうです。
騎士というのは、その発祥の段階から馬に乗る軍人ですから、使う武器も馬上使用を考えています。
片手でも両手でも使え、場合によっては下馬しても。さらには室内戦闘や日常的な護身武器として。
つまりは――
ロングソード?
長ければ馬上でも使えます。
片手でも使えるので、逆の腕で盾や手綱も保持可能です。
突きが主眼で、引き抜くための工夫――血抜きの溝――も完備しています。
多少は長めでも、剣ですから携帯可能です。
さらに十字剣のシルエットは、キリスト教社会で権威の象徴として十二分だったでしょう。
12、でも大丈夫なのか?
逆説的に環境適応した結果と思えます。
相手が平服だった場合――
研磨の適当なロングソードでも、斬りつけることは可能
です。
検証を観る限り、豚程度なら両断できてます。多少は鈍だろうと、簡単に致命傷を与えられたでしょう。
そして全時代で圧倒的に多かった革の鎧などの場合、斬るのは向かなくても――
突きは通ります。
相手にすれば、むしろ突かれた方が嫌だったでしょう。
『血抜きの工夫=傷口へ空気を送り込まれる』で、ほぼ致命傷コースですし。
そして採用地域が多かったチェインメイルの場合――
突きこそアンチ特効です!
さらにヨーロッパでは少数派な小札鎧やプレートメイル(NOT全身甲冑)の場合、隙間へ刺さらなかったら――
曲がることで剣先を保護!
素早く戻して連撃で隙間を狙い直せます!
(日本人の感性だと「そこは貫通できるように発展しろよ!」といいたくなります)
……あれ? でも……問題ない?
確かに日本刀より斬れないかもしれないけど……兵器としては活躍できてるような?
……というか本当に全身甲冑が相手でも、ロングソードを使って叩いたのかなぁ?
ロングソードが活躍した時代と、全身甲冑の完成した時期もズレまくってるし。
そもそも騎士達は、軍事用ロングソードを研磨すらしないのに……斬る=叩いた?
13、でも、この予想が正しいと……
諸刃で斬り返しが云々は、すこしピントがずれていると言う他ありません。
おそらく実用はされた。技術として伝わっている以上、それは事実でしょう。
でも、それは敵味方が平服前提のレイピアなどで!
じゃないかなぁ?
戦場にあってロングソードは突きがメインで、斬ったり叩いたりは補助的な位置づけ。
だから斬り返しの技も一応はできる程度だったんじゃ?
(そもそも刃を研いでないし。というか、本当に叩いたのであれば……「なぜハンマーや斧を使わないの? これガチな殺し合いだよね? ルール無用で自分の命を的にした?」という疑問も)
そして――
ロングソードじゃなくてエストック系でよくね? というか片手槍でも?
という疑問が必然に!
……これがロングソードによく似た武器は、他の地域で誕生しなかった理由!?
重装騎兵といい、全身甲冑といい……もしかして中世ヨーロッパは兵器のガラパゴス!?
というか日本の武士は日本刀で戦わなかった――あくまでも予備武器だったそうです――のに、どうして中世の騎士は剣で戦ったんだろう?
普通に槍とか長巻――西洋の戦斧かクレイモアに相当――を使えばよいのに?
逆に考えて日本における長巻が、中世ヨーロッパでのロングソードだった?
……これは今後の宿題かなぁ?
14、一応は合理的剣を考えてみた
突き特化はともかく、ロングソードの切先は評価に値するでしょう。
ロングソードみたいに尖っていれば、それだけで似たような効果も見込めます(さすがに曲がる機能までは不要?)
なので――
切先は諸刃の鋭角三角形!
そして突きが可能なように切っ先と重心、柄本が一直線に並ぶ設計を。
さらに――
片刃で反りのある形状!
反りを作るには片刃に成らざるを得ませんし、片刃なら肉厚にするのも容易となります。峰側を厚くすればよいのですから。
そして日本刀の技法をパクリ、簡易合金方式で! つまり――
芯の部分を軟鉄、刃の部分を鋼鉄、峰の部分を鉄
として、硬さと強靭さを両立させる?
製法も贅沢に鍛造? それとも可能なら鋳造で?
(鋳造で安上がりにして、すぐ新しいのと交換できる方が兵器としては○な気もします)
でも――
これって柳葉刀? 少し細身なだけで?
あれよりは肉厚で……反りはあっても直剣よりを考えてたけど……科学的に考えると柳葉刀が最適解だった!?
……もしくは剣先を工夫しなおした日本刀ともいえる?
他にも細かい条件を羅列すると――
ぎりぎり腰にも履け、馬上も考慮して刃渡り80センチ程度前後(やや長い)
両手でも使えるように柄は長く
鍔は日本刀を参考に?(邪魔になり難く強度も確保できる)
戦場での使用を考え肉厚に
中国刀のような幅広デザインは避ける(研ぎを考えるより、交換対応が○のはず)
ロングソードの様に血抜き溝をつける
そして……これなら……あれかなぁ?
つまりは――
先史時代から第一次世界大戦まで使える究極至高の剣!
……かも(苦笑)
ただ、基本的に戦争では予備の武器です。
またファンタジックな世界だと、全く対モンスターを考慮して無いのはNG?
15、そしてロングソードが全ての剣術とはいえない
今回の考察が正しいとしても、それは斬る西洋剣術の否定にはなりません。
そもそもロングソードより長い間、ヨーロッパの人も斬る剣を使ってきたわけですし。
ロングソードは目立っただけで、より普通の剣術的な――我々日本人が剣術と納得できるような手法もあったと思われます。
(ただ西洋の人は合理的過ぎて……一部の剣術などは、完全に失伝したそうですし)
しかし、当時に別系統の剣術があったとしても、それは戦場だとサイドアーム扱いだった可能性が高く……
冷遇されがちなポジション――それよりロングソードや斧、槍の方が重要視される為――で……
さらに日本と違って、長い平和で剣術の見直しもされず……
ヨーロッパでは、かなり違う扱いだったかも?
また『剣=ロングソード=フェンシング的な突きが主眼の武術』が強く意識づけられた可能性もあります。
もしかしたら通常の意味での剣術は、あまり上流階級の嗜むものではなくなってたり?
ただ、その分だけ西洋はナイフ術に特化している気もします。
斬る技術は、そっちへ流れていった?
あと考慮しなくてはいけないのが――
ロングソードは突きが効果的だったけれど、作者が考えるほど特化はしてない
の可能性も?
もう少し剣術的に使ったし、得意技が突きだった程度?
16、そもそも誰がロングソードを叩く武器と言い出したの?
例の再開した漫画に登場する逆刃刀で、よく論じられますが――
日本刀サイズな鉄の棒は、鈍器としても十分な武器になる
があります。
これは否定できそうもありませんし――
日本でも鎧武者を、日本刀で叩いた
と思われます。
それしか手元に武器がなければ他に選択肢はありませんし、多少は効果も見込めたでしょうし。
でも、だからといって――
日本刀は叩く武器ではありません
いわばライフハックならぬ戦場ハックでしょう。場合によっては槍や弓でも叩いたそうですし。
同じようにロングソードでも鎧武者を叩いたはずです。
だからといって――
ロングソードを叩く武器とするのは暴論過ぎる
でしょう。
また、おそらく別系統として進化を続けた斬る剣――ブロードソードや、本格的な叩く剣――ツーハンデットソードなど――と情報が混ざり、錯綜している可能性も?
そしてロングソードは全身甲冑に先駆けて全盛期へ突入し、ほぼ同時期に引退しています。
つまり、最も主流だった時期にロングソードは全身甲冑と戦っていない訳で、活動時期が被る頃には両者ともに引退間近です。
……確かにロングソードは全身甲冑を叩いていたが、それは引退寸前に行われた間に合わせ&延命策であり、決して本来の用途では無かったり?
もし全身甲冑全盛期へ突入していたのなら、ロングソードは陳腐化して引退していたでしょう。
なぜなら対全身甲冑兵器としては、いまいち頼りないから。
そして史実通りに銃器の時代へ――鎧を着用しない時代へ突入したのであれば、オーバースペック過ぎて廃れざるを得ません。
依然として『突き』は決定力で勝るも、『斬る』と併用した方が強いですし。
さらには作者の様な、全身甲冑の実戦投入実績を疑問視する者すらいて――
※
実際にロングソードの使用風景を見た生者はいません。
なので作者の論も含め、ほとんどの説は考古学的な想像から抜け出せないとも。
17、騎士の変遷を想像
・鐙の導入
「へへ……馬賊の技術をパクってやったぜ!」
「これでワイらも馬上戦闘できるンゴー!」
・重装騎兵の誕生
「ふふ……鎧着たまま馬に乗ったた!」
「えげつなww でも、大丈夫なん? さすがに馬が死ぬやろー?」
「なんともあらへん! さすがガリア北部の恵体な馬や! これから品種改良もするしな!」
・騎士盾の開発
「普通に馬上はポールウェポンやったけど、止めや!」
「あん? どないしたん?」
「歩兵の奴ら、左側ばっかり攻めてくるねん。頭きたから左腕には盾を装備や! 足まで隠れる優れものやで!」
「おー……でも、そしたら武器は片手槍やぞ? いけるか?」
「ワイらの剛力なら軽いもんや! それに馬上だと振り回すより、突く方が多いしな。槍で十分だったりもするんや」
・拍車を発明
「ブーツの踵に棘つけたったww」
「なんや? それで敵を蹴るんか? 蹴り難くないか?」
「ちゃう! 蹴るのは乗ってる馬の方やぞ! 鞭の代わりに、これで気合い入れたるんや!」
「おー! 両手が塞がるのなら、足でという訳か……考えたな!」
「これからは突撃が捗るでぇ!」
・騎士鞍への変化
「突撃もええけど、後ろに『ぐわっ!』なって、落っこちそうになるやろ?」
「あー……そこは君、しっかり踏ん張っとかないと」
「せやからな――尻のところを出っ張らせたで! ついでに前も!」
「おー! 考えたな! これで落馬ともさよならやな!」
・ランスへの発展
「ワイら同士の戦いって、結局は槍の長さなところあるやん?」
「まあ……そういうとこあるかも」
「なので突撃専用片手槍――ランスを作りました!」
「ちょww おまww やり過ぎww」
「これ無敵すぐるww どんな奴でも突撃したら一撃ww」
「えげつなぁww ほとんど丸太やないかww ……って、接近されたらどないするん? それに……ちょっと壊れやすくないか?」
「その辺は仕方ないと割り切るんや。壊れたり接近されたら、ロングソードへ持ち替えればええしな。最近は良い剣あるんやで? もう貧乏人の剣とか侮れんのや」
・踏まえての最終形
最初の突撃で使い捨て気味にランスを使用。
そのまま馬上戦闘したり下馬したりでは、ロングソードへ切り替える。
突き主体なのは、片手槍を使っていた流れから。つまり、本質的には剣士じゃない。
結果、あたかもメインアームがロングソードに見えた。
………………とか?
○結論
ロングソードは、刀剣類でもかなり特殊と考えるべきかも? もしかしたら日本刀以上に?
………………異論は認めます。