ある日の日記8回
八回
二月十四日
アァ~、もう僕はこんなくだらんこと、やりたくなくなりましたよ。
何がどうしてかって?――
そりゃ~、当然でしょう。
誰も――
誰一人として、僕にチョコレートをやらないんだもんねっ。
今日はバレンタインデーでしようが?
どうして誰も僕にくれないのかなぁ?――
これまでさんざん君達の為に、時間と労力を費やしてきたとゆうのに、誰もくれないなんて、どうかしてるよ。世の中間違っとるよ!
もう僕は君達と絶交だよ。いくらやったって、君達は僕に良い目を見させてくれないんだからねっ!
冗談だと思ってるんでしょう?
「今、あの子は拗ねてるのよ。放っときなさい。そのうち諦めて、またしぶしぶ書き出すから」
もうどうしようもありませんねっ。君達は僕をオチョクッテいるんでしょう?
バカにするな!
もうごめんだよ!
こんな、アホくさいこと出来るか!
いくら、君達とこうして交友の仲でいられるからといっても、もう僕は、それではつまらなくなったのだ。
まったく、これじゃ~、前のスナックでの恋遊びと同じじやないですか!
こんなことをしているくらいなら、金を費やしてでも、向こうのミツエさんに会いに行ったほうがまだマシですよ!
何ちゅうたって、向こうに行けば、金をつぎ込んだしこ、彼女の微笑みと暖かい言葉が聞けるんですからね。
それに――、それに君達のように醜い顔をしているのか、くずれた顔をしているのか? 分からないような女性達に、いくら気を使ったって、僕はチッとも心がウキウキしてこないのだ。
それよりも、ミツエさんの世にも美しい顔を見つめながら沈黙して、ビールでも飲んでいた方が、よっぽどましですよ。
もういやだ!
アカンベ~だ!
今度、お金が入ったら、即、君達を振り切って、ミツエさんの顔を見に行っちゃうから、見ててくんしゃい――
ざまあみろ!
「「アァ~、何を書きましょうか?」」
とにかく僕は、これまで必死になって、あらん限りの声を張り上げて君達に訴えてきたのです。
僕は――
僕は当然、君達に僕の声が聞き届いているものとばかり思っていました。
しかし、それは全て、錯覚だったんですね。
いくらあらん限りの声を張り上げて、叫んでいるつもりが、実は、僕の心の中で叫んでいたに過ぎなかったのです。
昨日、フと、ある奇妙な事に出くわしました。
それはアルバイトの人達に、仕事を頼む時、ああしてくれ! こうしてくれとゆう、考えがあったのです。
それをアルバイトの人達に命令しようと行動に出ました。
しかしそれが、不思議にまったく声が出ないんです。出てこないんです。
一生懸命、声を張り上げて、アルバイトの人達に、僕の考えを訴えようとしたのですが、まったく手まねきしかやっていなかったのです。
アルバイトの人達はどうしたんだろう?――
口があるというのに、口をパクパクしてばかりで、チッとも喋らないよ!
おかしな人だなぁ~と思ったんでしょうねッ。
怪訝そうな顔をして、僕のことを見やっていました。
確かに今までの行動全てが、そのような仕組みになっていたのです。
僕は常に、君達に向かって声を張り上げて叫んでいたのです。
だから当然、君達は僕のことを一部始終、理解してくれているものと思っていました。
それがどうですか……
ある人が六階を通る娘に
「藤田にチョコレートでもやったらどうかい!」などと言われていたのに
「イヤダー! 恥ずかしいわ。別に、あの人のこと全然知らないのに、やれるわけないじゃないの」という――
まったく愛想のない返事をよこしやがった。
それでまた僕は、シヨボ~ンの、シヨボ~ンとなりました。
もうダメだ! とても耐えられない。
こんなことしていたって、まったく価値がない。
もう彼女達のことは、振り切って、いよいよ本当の彼女でも作ろうか? と――
フッと、決意らしきものが芽生えてきたのです。
確かに――
八回




