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一滴の波紋【原文】2巻の1  作者: 藤田ユキト
一滴の波紋【原文】2の2
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ある日の日記6回


六回



 僕がこの頃、どうして文化的で、きちっとした生活をしていられるか? ということを、お話しいたしましょうか。

それはやはり、君達(悪霊君達)を知ったからなんです。

それも自分が一番恋い焦がれているモタイ殿が、四六時中、僕を見つめてくれていたからなんです。

そう言えば、だいたいのご想像はつくでしょう?

当然ですよ!


 自分の好きな人から見つめられている――

そのことを思っただけで、とても恥ずかしい(だらしのない)生活状態など見せられる訳がありませんよねっ!


 朝、目を覚ます時にも、眠くて布団の中でグズグズしていると、すぐ彼女の叱責の声が飛んでくるのです。まるで僕の女房みたいにね!


「何をグズグズしてるのよ。早く起きなさい! 本当にアンタって、だらしがないわねっ」などと――


そんなことを言われたら、一変に目がいて、飛び起きます。

また、前夜、夜更かしして、それでも早く目が覚めた時なんかは


「アラッ、もう起きてるは。随分頑張るわね」などと――、お褒めの言葉を受けるのです。

そのような言葉を聞くと、つい気持ちがウキウキして、張り切っちゃうんです。


そして仕事を終えて寮へ戻って来ると


「お帰りなさい、寂しかったわ!」などと――

僕が帰ってくるのを待ちどおしかったといわんばかりの、やさしい囁きをしてくるのです。

しかしたまには疲れていて、つい居眠りなんかしてしまうと


「ダラシがないわね! みそこなったわ。もっとチャンとしなさいよ。そんなにダラしないんだったら、ウチ、もう来てやんないわ」などと――ハッパをかけられるのです。


そして――


「サア~、そんなにグズグズしないで、日記でもつけなさい。本でも読みなさい。音楽聴きたいから良いの聴かせて」などと言って――

僕の怠慢な気持ちを叱責して、奮い立たせてくれるのです。


 そうやって、音楽を聴き、本を読み、日記をつけて、価値ある思索をしたりしていると


「随分頑張ってるわねっ。アンタがこんなに勉強家だとは思わなかったわ! 真面目な人だとは思わなかったわ!」などと、お褒めの言葉を授けてくれるのです。


ダンダン、ダンダン、僕の生活は部屋に閉じこもって、マイペースの文化的、価値的生活を営めるようになってきたのです。


 また、この日記に関してでも、上手い文章を書いた時には「本当に上手いわね!」とか、ひょうげて(ふざけて)書いている時には、「またひょうげて書いてるわ! 好きねえ~」



 又、何(なに?)やる時なんかは、この頃やっと恥ずかしさを覚えてきたせいか、とても明るい中で堂々とやることが出来なくなったのです。それで真っ暗にして、見えないようにしてやってると


「この頃、ちっとも見せないわね。つまんないわ。夏の頃が一番良かったわね。布団まくり上げて、堂々としていたんだもん」などと言われると――

ついその頃(夏頃)のことを思い起こして、照れ臭い気持ちになります。

そしてたまには、ご機嫌とってやろうかなぁ~とゆう気持ちが湧いてきて、布団をまくり上げてする時もあります。

それでもやはり、昔のように堂々とはやれませんよ。

やはりあの頃は、最高に気がおかしかったんでしょうねッ。これが今の自分の生活状態です。お分かりですかなっ!



 また、この前、こうゆう出来事がありましたね。

僕が夜遅くまで起きているので、寝る時にベッドがきしんで、その音がうるさいらしくて


「この頃、不眠症に悩まされてるんだよ! 藤田さん、もう、まったく人のことなどかまいもしないんだから。あれじゃ皆から嫌われるのも当たり前だよ!」などとゆう、悪口を言いふらされました。

それを聞くまでは、正直言いますと、夜遅くまで起きていて、よく頑張る人だナァ~と思われ、皆からも僕の頑張りが褒め讃えられているような空想をしていたのです。

その事は、確かに一時は功を奏していた頃があったように思います。


しかしそれが度を越して、このような迷惑をかけることになりました。

それで慌てて僕はベッドがきしまないようにしたのです。

早く言ってくれれば良かったのにと思いましたが、日頃、口も聞かない間柄だったので、言い辛かったんだろうと思います。


 本当にこのような事ってあると思いますよ。

まったく人に迷惑をかけていることなど気付きもしないでやっている事が……

そういう時には、思いもよらないほど相手が腹を立て、ムシャクシャしているものです。


 僕が隣の奴のステレオの音がうるさくて、嫌がらせをしているんだろうとばかり思ってた――

ある夜中、怒鳴り込んでいった所、「そんなことまったく知らなかったよ! もしそんなこと知っていたら、やりゃ~しないよ」などと言われたことで――


やはり言いたいことがあったら、腹を立ててムシャクシャする前に、一度本人と話し合わなければならないなっとゆうことを、その時つくづく思わされたのです。


 それが今回の事件においては、立場がまったく逆であって、僕も本当に気が付かなかったのです。


「神経質だからだよ! そんなこと言うべきことじゃないよ」という、批難を一応、彼はうけていましたが――


 しかしやはりそれでもこのようなことで不眠症に悩まされているというのだから、何とかしてあげなければならないと思い、早々に手を打った次第です。


それによって、彼も喜び


「やっぱり、良い人なんだよ。かげでコッソリ気を使ってくれる人なんだよ。皆が言ってるような自分勝手な人じゃないよ」ということが分かってもらえたなら幸いに思います。


この事件は、一応これでカタがつきましたねっ!


    六回




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