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一滴の波紋【原文】2巻の1  作者: 藤田ユキト
一滴の波紋【原文】2の2
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ある日の日記5回


五回



 この頃は、どうしようもなく不安で仕方がありません。

急にシヨボ~ンと悲しくなったり、虚しくなったり、心細くなったり、寂しくなったり――

今にも崩壊しそうで不安です。


精一杯――、本当に精一杯、僕は気をしっかり持とうと努力しています。

何かの力が僕の肝っ玉をしめつけようとします。

生来の小っこい肝っ玉だとゆうのに、これ以上、威圧が重なれば潰されてしまいそうです。

どうしようもなく不安です。


 だから今は、夢中になって勤行を上げています。

悲しい心を、虚しい心を、心細さを、寂しさを、吹き飛ばそうと――

必死になって、御本尊に向かい、お題目を唱えています。

すると不思議とそれらの苦しみが和らいでくるのです。


アァ~、これが勤行(信仰)の有難い御力(みちから)なのか……

と、ダンダン勤行(信仰)することの素晴らしさ、大切さとゆうものを実感しつつあります。


これを知らない頃には――

虚しい時には、そのままその虚しさに溺れ。

悲しい時にも、寂しい時にも、心細い時にも、そうやって溺れ、無意味な時間を費やしていました。


 どうしようもなかったんです。

それをはらいのける術を知りませんでしたので、ただ、それらの苦しみにもてあそばれておくしかありませんでした。


だから今までの自分は――


「チェッ! 人生なんてつまらん! 

生きていてもチッとも面白くないや。

幸福なんてありゃ~しないよ。生き甲斐なんてありゃ~しないよ」


といって、すぐに立ち直ることを諦めてしまう、弱い自分に成り下がっていました。

ただ単に「他に不幸せな人達がいるから、俺も不幸せでいていいんだ。幸せにでもなったら、それらの人達に悪い」といって、不幸せな時には不幸せのままに甘んじていました。


 しかしそのような事は、ただ単に自分の弱さを余計に甘やかしているに過ぎなかったように思うのです。

立ち直ることに努力を払わないで、ただ前述のようなことをこじつけとして甘えていたに過ぎないのです。

チッとも他の人達の苦しみや、不幸せなど、思いやってもいなかったのです。


 本当に――、本当に、それらの人達の苦しみや、不幸を思いやるのなら、自分がそれらの弱さから立ち直って、強く、雄々しくなり――

それらの弱い人達や、不幸せな人達を救ってやれるようにならなければならなかったのです。


僕がそのように慈悲深い心を持っていながら、どうしてこれまでそのような人達を思いやり、世話し、救おうとしなかったのか?――

それは、ただひとえに、この一点にあったのだと思います。


 今はまだ、誰一人としてかまいもしないし、手助けもしていません。

それによって自分のことしか考えない、自分本意な奴だと、柄にもない勲章を授かっています。


寮にあっては「自分一人、文化的な生活をして、有頂天になってやがる、いい気なもんだよ!」などと、冷やかされっぱなしです。


 しかし今の僕は、決して文化的な生活などしてやしないのです。ただ立ち直る為に必死になって、価値あることを選んで実践しているだけなんです。

音楽を聴き、本を読み、日記をつけ、思索したりして、彼等よりは少し充実した生活を営めているだけなんです。

本当に必死なんですよ。


 それをつかまえ、そのような非難をあびせかけるなんて、彼らにはまったく人の苦しみというものが分からない、めくらだと思います。

やはり今まで僕がさいさん口にしてきたように――

彼等は心の目が開けていないのだと思います。

もし開けているものでしたら、必ず、僕の苦しみが分かるはずだし――

従って、このような浅はかな非難はしないだろうと思います。


 しかし仕方ないですね。やはり今の僕は、まったく彼等とかかわり合いませんし、手助けもしません。

だから彼等と暖かい心の交流など成り立つわけがありませんよ。


 だから今の僕は、そのような非難を浴びせかけられても、腹を立てきらないのです。


もし自分にそのようなことを言われて、自分が正しいという行動をとれていたら、僕は迷わず彼等をぶちのめして、言わせないように口を封じるだろうと思います。

それが出来ないのは、気が小さいからではないんです。ただ、それをするだけの実践というものが、彼等に対してないから、今のところ、彼等のののしることをありのままに受け止めているにすぎないのです。


 しかし、いつまでもそのようなやり方ではいけませんねっ。

やはり前述したように、力をつけ、他の人達を救い、手助けできるようにならなければならないと思うのです。


その為、僕は今、勤行をあげています。

悪しき心のリズムを、大宇宙の完全で、円満で、大調和な生命(リズム)に合わせようとしているのです。

それさえ叶えば、決して僕にもやれないことはないと思うのです。


 今は、ただ、ひたすら勤行をあげ、自己をいい方向へ自己革命していかなければならない時期だと思うのです。

分かっていただけますでしょうか?

今の自分が一人この部屋に閉じ込もって、文化的生活とやらを成し遂げている意味を……


 僕は決してのぼせ上がってなどいないのです。

そして今は、必死になって立ち直ることを精一杯実践しているのです。


    五回






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