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一滴の波紋【原文】2巻の1  作者: 藤田ユキト
一滴の波紋【原文】2の2
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ある日の日記27回

二十七回



 甘水あまみずのほのかな香りが、どれほど僕の心を悲しくさせるか知れません。

 心は甘水の方を向いていながら、自分の身体はドンドン、ドンドン悪魔の連れ立つ方へとついて行くのです。


 アァ~、もう俺は一生、彼等から逃れられないのか? 

 あの甘水に浸ることは出来ないのか? と…。

 フッと、天を仰ぎました。


 そらにはあんなに宝石みたいに美しいお星さん達や、自分が弱音を吐いている時に、勇気づけてくれる太陽さんや、僕が恋の痛手に、塞ぎ込んでいる時、そっと優しく慰めてくれるお月さんや……。

 そして、無数に広がる幸福の息吹が漂っています。


 どうして僕には彼等と同じような星のもとに住めないのか? 

 彼等と一緒になって幸福の遊戯にはしゃぎ回ることが出来ないのか?……と――

 ついその悪魔にシブシブついて行く自分が恨めしくなります。


 しかし今の自分にはどうすることも出来ないんだ。

 彼の誘惑の囁きを断る力もない……。

 今は仕方がないんだ……。


 ということなんです。

 本当に今は、その事の苦しみで、たとえ皆さんが僕の前途を祝福してくれるようなお言葉を与えて下さったとしても――

 今の僕には、その苦しみによって、かえって萎縮してしまうのです。

 どうかもうしばらく僕をソッとしておいて下さい!


 イエイエ、それは何も逃げるとゆいことじゃないんです。

 この信仰にめぐり合ってからというもの――

 僕はある事をがんかけたのです。


 この信仰(宗教哲理)が、本当に唯一不二、絶対の力を秘めているというのだったら、もしかしたら、この聴力を癒すことも出来るかもしれない――

 完全の生命力を涌現させてくれるという――

 この御本尊様にすがれば、ひょっとしたら治すことが出来るかもしれない――

 もし、本当にこの信仰が絶対のものであったら、必ず治せるはずだ。必ず……。

 もし治らないということだったら、あるいはこの宗教がまやかしのものということにもなりかねないし――

 または、自分の信仰のあり方が、不真面目であったら――

 ということにもなる。


 だからこれから、この信仰を続けていくことにおいて、この聴力を治すことを一つの信仰の姿勢のあり方を反省する目安にしようと思っています。

 もし、あいも変わらず良くならないのだったら、まだまだ自分の信仰の仕方が甘っちょろいということにもなるし――

 徐々にでも治ってきつつあったら、やはりこの教えは正しいものであり、また自分の信心のあり方というものも、間違っていないということにもなる。

 今後はその事を目標にして、突き進んで行こうと思っています。


 とにかく、今の僕にいくら力が備わっているとしても、この聴力が正常にならない限りその力を完全に現すことが出来ないのです。

 あっても宝の持ち腐れということで――

 君達がその力があるということだけを見て期待すると、今の僕は返って萎縮してしまうということになるのです。

 だからもうしばらく、そのような重責を僕に背負わせないで下さい。


 とにかく今後一年、この信仰にすがって試してみようと思っています。それでもし治らなかったら、あるいは医者の力を借りるかも知れません。

 僕は昔から医者の力を借りることが嫌いで、いくらそれからの苦しみを受けても、治そうとしなかったのです。

 その為、味わう必要もない苦しみを味わってきて、ついに人生を諦め、はかなむ自分に落ち込んでいたのです。


 しかしこの信仰に入り、人生とは自分(人)が生きる、生きていくってゆうことだと教えられてからは、やはりいつまでも世をはかなねてもいられない――

 とにかく生きていかなければならないんだ……! と――

 そう心を改め、それによって今、全ての事を困惑しているこの病を、どうしても治さなければならないと思っているのです。


 どうですか? こんなことを言っても、君達に今の僕の苦しみがお分かりになりますでしょうか?

 とてもその苦しみを味あわされたことのない人には分からないことでしょうね。


 しかしこんな苦しみなんて、わざわざ味わうこともないのです。

 ある彼なんかは、僕が電話受けする時に

「まともに電話もかけきらないで。何が出来るか!」……などと――

 僕の苦しみの一欠片ひとかけらさえくもうとしない薄情な言葉を吐き捨てているのです。

 そのような時、僕は「もし手前てめえが俺の立場に立たされていたら、こんな苦しみに耐えられるか! 耐えられるわけがあるまい。お前はただ五体満足にあるということで、自分自身に甘えているだけなんだよ。甘えてばかりで、自分の努力によって培った力なんて何にも持ってやしないじゃないか。たとえ力量的に俺を上回るものを持っていたとしても、根性ではお前に負けないぞ!」といって――

 彼の吐き捨てる言葉をゴミ箱にポイッと捨てて、彼のことは眼中から外し、また一念に我が道に没頭していくのです。

 確かに……。


 アァ~。この事を説明するにはあまりにも文章がかさんでしまいます。

 だからどうしましょうか? この事を書くには今夜中かかってもおっつかない事でしょうし、今日あったことも書けなくなってしまいます。

 だからチョッピり簡単に書いて済ますことにしましょうか?


 とにかく力を与えられている者は、それに溺れて弱い者の気持ちを汲むことを知らん。

 このような実力主義の会社組織にあっては、自分が良い成績をおさめたら当然その報酬を受ける権利を持っているんだといって、平然として他の成績の悪い者を省みないで自分だけその恩恵を受けてホクホクしている。


    二十七回




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