ある日の日記19回
十九回
二月二十一日
今日は参ったなぁ~。
やはり勤行をやっていても、今日みたいに気持ちが沈んで、心細くなる時があるのだろうか?
久しぶりに、二階の親分さんがお目見えになった時には、本当に肝っ玉が破裂せんばかりの威圧を受けましたよ。
マァ~、疲れていたとはいえ――
昨日、何した為に、こんなに疲れていたのだろうか?(もう聞き流して下さい。気狂いの言うことですから)
やはり俺も人間だったんだなぁ~と、つくづく思います。
ひとせんなんか、僕のことを人間扱いもしてくれなかった彼等にも、やっと僕を人間並みに見てくれるようになって来ましたね。
何しろこの頃は、失策(恥)のし通しですからね。あんまりあり過ぎて、かえって彼等はアッケラカ~~ンと、なっているんでわないでしょうか。
それもごもっともだと思いますが――
しかし僕は決して挫けんのぞ!
どんなに叩き落とされても、どんなに叩き落とされても、谷底に落とされる獅子の如く、僕は必ず這い上がって来るのですからね!
その後の話しはまた暇があったらね。
とにかく今日は、この前の火事の手伝いによって、その恩赦として、お祝い事があるのだそうです。
気持ちがすぐれなくとも、ビール一杯でも飲んだら、少しは気持ちも晴れることでしょう。
とにかく出席します。
一応、さようなら!
この前の続きの話しになりますが――
これまで色々、この日記に述べてきた素晴らしい文を、君達はやっと人前にさらけ出したのですか?
僕はあまりにも周囲が騒々しくて、目が回りそうだと言ったことは、やはり本当のことだっだんですね。
色々、僕の日記のことで皆が面白がったり、嫌ったり、賛嘆したり、卑下したり、批難したりして、賛否両論の渦が巻き起こっていたのですねっ。
「さすが、ウチの会社を背負って立つ人だと言われているだけのことはあるんだね」
「いつもブス~としていて、何の取り柄(面白み)もない人かと思ってたわ」
「ウチ達が今まで思っていた人とは全然違うじゃないの」
「まったく石頭で冗談の一つも言えない人かと思ってたわ」
「そうね。あの日記を見たら、とてもそのような人だとは思えないわね」
「しかしあんなにブス~っとして、無口な人から、どうしてあんな面白い話しが出るのかしら」
「まったくだわ。無口だけど心の中は朗らかなのね」
「今まで一番陰気な人だと思っていた人が、実は一番朗らかだったのね」
「何にも言わないから、皆に分からなかっただけなのよ。あの人はずっと前から、根は朗らかだったのよ」
「しかしそんなに朗らかな心を持っていて、どうして面白く振る舞わないのかしら? そこが不思議でならないのよ」
「でも良いじゃない。あの人が朗らかな人だと分かっただけでも……」
「しかし、よくあんなにすましていられるもんね
こんなに皆から騒がれているってゆうのに、とても普通の神経じゃないわ。やっぱり気がふれているのかしら?」
「ウン。分かんないけど、半分は冗談で言っているんじゃないの」
「しかしウチ、段々あの人のことが好きになってきたわ。
もしあの時、こんな人だと知っていたら、ふったりなんかしなかったわ」
「残念ね! あの人って、いつもそうなのよ。後になって良い所を見せびらかして、自分をふった娘を焼きもきさせるのが趣味なのよ」
十九回




