ある日の日記18回
十八回
こんなことを思い、言っていると――
つい僕の心は涙ぐんで書く字まで見えなくなってくるのです。
だからこの頃の字は、ミミズのはったような汚い字になるのです。
君達は、そんな僕の気持ちも知らないで、東京へ行っちっちじゃないが、馬鹿笑いして
「もっと上手に書けないのかしら! あれで学があると言えるのかしら!」
――などと、僕をバカにしてばかりいるのです。
もうアホくさ!
「本当に上手いわね!」などと、おだてても、もう僕の心はチッとも喜ぶ気持ちなんて湧いてこないのです。
もう終わりですね。ハイサヨウナラ!
こんな事を言うと、またまた君達は僕の気持ちを見透かしたように
「ほっときなさい。その内、また書くようになるから」と、ぬけぬけと落ち着いているし……
もうこんなゴタクを並べていても始まりませんね!
そろそろ本題にでも入りましょうか――
ねっ。
アァ~、もうよそうかなっ!
面白くなくなってきたよ。
書き甲斐が無くなってきたよ。
どうして奴は、こうまで僕の夢を壊すようなことをするのかなぁ~。
アァ~、どうも失礼しました。
やはり醜いですね。
自分の望みが叶えられなくなったら、あっさり、嫌味なんか言って、背を向けるなんて、男じゃありませんね。
僕とモタイ殿との愛情は、そんな単純なものじゃないのです。
彼氏と彼女、男と女、何をやる遊び道具――
そんなものに置き換えられるほど安っぽいものじゃないんです。
兄妹――――かぁ! 儚い夢ですねっ。
たとえ兄妹の愛情ほどの気持ちを持っていたとしても、やはり寂しいものですよ。
今までずっと、幼い頃から手を取り合って――
鼻をたらして、おカッパ頭の彼女
寝小便をしていた彼女
朝起きて寝ぼけた顔をしている彼女
アクビをしている彼女
オナラをしている彼女
小便をしている彼女――
そのような男と女という意識の外で、育ててきた愛(兄妹愛)らしきものがあったとしても――
やはり他の男に身を委ね、夢の中を飛び回っている姿を瞼に浮かべると寂しいものなんです。
あいつもやっぱり女だったのか!
鼻をたらしていたおカッパ頭が――
寝ぼけた顔で、アクビをしていた――
あのやんちゃな小娘が――
夏の暑いさ中にも、裸になるのが恥ずかしいと言っていた十七、一八の娘だった奴が――
彼氏が出来ないといって、思い悩んでいた奴が――
男なんて大嫌い! ウチ絶対、一生男の人に身体を許さないわ! 不潔よ! あんなことするなんて!――
と言っていた奴が――
とうとう女になったのか?
人生って面白いもんだね!
子供の頃には、想像もつかなかったような、大人の世界が、今、彼女の目の前に開けようとしている。
年下の奴が、俺よりも早く、大人の世界に入っていくなんて、本当に癪に障るよ。ウラヤマチ~~。
俺も早くお嫁ちゃんをもらいたいなぁ~。
だけどお金は無いし、今の仕事もパッとしないしなぁ~(これ、皮肉よ!)
嫁さんもらっても、その女にメシ食らわせるのももったいないし、そんなくだらん生き物を養っていく為に、セッセ、セッセと、くだらん仕事にこき使われるのも、癪に障るし――
アァ~、まだまだ大分その日は遠くになりし――かな?
何だか今日は、全然関係の無いことばかり話しているみたいですね。
僕もそのような気がするのです。
しかし今までのことをまとめて書くとなると、この先、徹夜してでもおっつかない程に、莫大な量にも及ぶのです。
面倒臭くて、面倒臭くて、とても手をつける気にもならないのです。
別に書かなくても君達には事の始終がお分かりになっていらっしゃるでしょう。
またまた僕を困らせるようなことをおっしゃる――
もうダメです。
これでおシメ~。
やめた。ヤメタ。野目駄!
十八回




