ある日の日記16回
十六回
二月十九日
わざわざ来ていただいて本当に申し訳ない事ですが、今は時間が無くて(忙しくて忙しくて)仕方がないのです。
しばらくはこの状態が続くと思います。
だから君達も、もっと気を長く持って行動をとって下さい。
今日のように、来ていただいたのに、チッとも来甲斐がなかったという日もあるでしょうし、またどうせ行っても何もやってないだろうという日に、あるいは一生懸命、君達を楽しませようとしている日もあると思います。
これからは、その事が君達の意に反して、なかなか満足いかれないようになると思います。
だから、――ね。
仕方がないんです。
この時間は、僕の時間ですから、僕のペースで使っていくしかないのです。
とにかく、これから変えていかなければならないことは、早寝、早起きをすることなんです。
朝の勤行が一番大切なんです。
今まで君達が来てくれているということで、夜遅くまで起きて、書きものをしてきましたが、これからは、大分控え目にしていかなければなりません。
結局は、これでお別れということになるんでしょうね~!
それにこんな大した男でもない僕を見に来ても、ツマランでしょうが!
どのような気持ちで、このようなことをなさっているか、存じ上げませんが――
もう僕のことは見捨てて下さい。
もう君達の支えがなくとも、立派に自立していける自信がつきました。
本当にここまで育ててもらっていながら、何の恩返しもせずに、このようなことを言うのは、僕としても辛いことなんですが……
「「誰ですか!」」
またまた僕のロマンチックを壊すようなことをおっしゃるのは――
「それならそれでも良いのよ。ウチ達は何もあんたのことを心配して来ていたんじゃないのよ。ただあんたがあんまりしつこくしていたから、それが面白くて来ていただけなのよ。
あんたが見捨ててくれと言うんだったら、ウチ達も何も言うことはないわ」
――「「アッ、そうですか。ホナラ、サイナ~ラ!
アバヨ、グッバイ、おっ死じまえ! とくら~」」
「藤田さんもバカだね! ウチ達は何もそんなことで来ているんじゃないというのに……」
「そいじゃ、何の為に来ておらっしゃるのですか!
俺にはサッパー分からんチッ!
もう勝手にしちくれっち!
時間がないので、一つ短文でも書いて終わることにしましょうか。詳しくは、また明日ね。」
隠れたスターに祭り上げられ、我が心は天にも登る居心地でした。
それがはからずも、首切り断頭台に、登らされているとは思いもよりませんでした。
結局、君達が計ることと言ったら、この程度のものでしょう。
僕は首切り寸前まで、それとは知らずに、上り詰めていました。
そしてその刹那、僕は君達の企みを見抜いたのです。
もう一歩というところで、君達の手によって、真っ逆かさまに叩き落とされるところでした。
僕は男なんです。君達は女――
女である君達が、男である僕を喜ばせようと思ったら、もっとましな知恵でも浮かばないんですか?
君達の下でギロチンされるなんて、男として最高の喜びにたえません――ハイ!
では、オヤスミナサイ!
二月二十日
アァ~、もう僕は頭の中が破裂しそうです!――
どうしていいのか? 分かりません。
こんなにもお粗末な文章を、どうして君達はそんなにまでして、物珍しそうに見に来るのでしょうか?
もう僕は煩わしくて、仕方がないのです。
口で言えば、ものの十分とはかからない内容のものだというのに、僕にとってしてみれば、この文章を書き収めるのに、自分の自由な時間の大半を費やさなければならないのです。
君達からスターの座を叩き落とされてしまった今としては、もう本当にこれで縁を切ってしまえば良いと思うのです。
そんなにまでして自分を苦しめていながら、君達はまだ僕を苦しめて、もて遊ぼうとゆうのですか?
何の報酬も望めず、何の価値も残せない、このつまらない作業から君達はいつになったら解放してくれるのでしょうか?
今まで、あまりにも図に乗って、もて遊んできた罰とでもおっしゃるのですか?
僕が大事な座談会へ行こうとすると、君達はすぐ
「自分の用事が出来たらさっさと、ウチ達を置いて出ていくんだから。せっかく来てやっていたってゆうのに、今までのことは、やっぱり遊び半分でやってたのかしら。本当に自分勝手な人ね!」
などと言われて本当に自分の心はグラグラグラのグラ~~っとなって――
ウ~ン、行こうか? 行くまいか?
行かなければならないのだが、彼女達もせっかく来ているのだし……などと――
真剣になって思い煩い、そして
「マァ~、良いや。これで彼女達から振られるんなら振られた方がましだ。もう誰一人として、僕のお嫁さんになってくれるという娘も居なくなったことだし、これ以上、いくら彼氏のいる君たちにおべっかい使っても何の価値もない」――と思って……
とにかく出ていくのです。
しかし……しかし、どうしてか、どうしても君達のことを放ったらかしにしていられないのです。
十六回




