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一滴の波紋【原文】2巻の1  作者: 藤田ユキト
一滴の波紋【原文】2の2
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ある日の日記15回

十五回



 しかしそれで気をつけなければならないことは、あまりに同情し過ぎ、近寄り過ぎて、そのクモさんの餌食にならないこと……

これが今の自分にとって一番気をつけなければならない点だと思っています。


 今、彼は必死なんです。自分の生きていく為の、巣を作ることで精一杯なんです。

だから、同じ生き物(同胞)としての立場から見てみますと、やはり彼は彼なりに精一杯生きているのですし――

そうやって一つも餌が引っかかってこなければ、自分は自滅していくしかないでしょう。

また、自滅したくなければ、自分の今までの巣を離れて、また他の餌が引っかかりやすい場所を見つけて巣(生き場所)を作っていかなければならないということになります。


「アァ~」、僕の口からこのようなことを言わなければならないとは、本当に心苦しいんです。

しかし僕は、今、彼から嫌われていても、彼の身を案じる好意は持っているのです。

今、僕が、タバコの件で反発していることは、決して彼に対しての面汚しではなく、上から押さえつけられていることに対しての抵抗なのです。


 しかし彼はその事を、自分が班長の手前、自分の部下だと思っている僕が、そういうことをやっていると、どうしても、自分の班長としての示しがつかないのです。

その事はつまり、自分の体裁ばかりを気にしての憤りですから、この点だけを取り上げてみると、彼の憤りというものは、間違っているのです。


 しかし今の僕は、彼の恩を飛び越えて、上の者に対しての反発心は消えませんので――

従って、彼から嫌われることも仕方のないことだと諦めています。

そしてここに彼の体面を汚していることを謝罪します。


 僕の目(他の人の目からもそうですが)から見たら、決して彼のやり方は、この厳しい闘争の戦線を切り開いていけるものではないと思うのです。

僕はそう思っているんです。


 しかし案外、彼のやり方の方が弾丸をヒョイヒョイよけて切り進んでいけるのかもしれませんね。

何しろ彼には、自分で事業を経営して、切り盛りしていた素晴らしい実践力がありますからね。

ひょっとしたら、今の何の経験も持ち合わせていない僕には、予測もつかない処世法を身に付けているのかもしれません。

だから何も僕が心配することもないんですね!


 マァ~、当分(この会社に居る間だけでも)彼の素晴らしい処世術とやらを拝見させてもらおうと思っています。

その中から自分の為になる勉強でもすることが出来たなら、また自分としても願ってもないチャンスですし――

とにかく今後の成り行きを見ていてみましょうか!


 マァ~、この事は彼の耳には入れないで下さい。

僕はもう嫌われている身ですし――

これ以上嫌われても大して煩うこともないんです。

ただ今まで通り、彼のペースを崩さないようにする為に、お願いしているのです。


 「「タノンマッサ~!」」(頼みます!)



 僕のことは心配なさらないで下さい。

どのような逆境の巷(血股じゃありませんよ)に置かれていようとも、必ずそこからはい出せる不屈の根性と、それを見守って下さっている高貴な聖霊(守護霊様)がついていらっしゃいますからね。

僕が使い物にならないか? どうか……

マァ~、見ていて下さい。


 僕はこれまでに、もう何度も「いよいよダメか」という逆境を乗り越えてきた経験からの自信がありますからね。

今のところは、ただ沈黙して、人と関わりあわないということだけなんです。

その悪評さえ払い除けることが出来れば、輝かしい幸福の塔を築くことは間違いのないことなんです。


 モタイ殿のことや、川口のあねちゃんのことも話したいのですが、今日は、時間が迫ってきましたので、明日にでもお話しすることにいたしましょう。


 今日も一日、自分のくだらない愚痴を聞いて下さいまして、有難うございました。


 でわ、オヤスミナサイ!


    十五回




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