ツギハギテイル~魔法使いが紡ぐは~
お久しぶりです!長編ツギハギフェアリーテイル最新話執筆中の翡翠美鈴です。『ミライショウセツ』という小説家発掘企画で執筆し、公開した作品その一・短編で、その時のテーマ募集の一個目が魔法使い・・・なんです
ぜひ、読み楽しんで下さいませ
ボクの魔法使いのお爺ちゃんは昔精霊に関する書物を読んでこんな事書いてあったんだよ。と昔、
よくボクに話してくれたんだ
『ウンディーネは水の近くで罵倒するとウンディーネは魂を失い、水に帰らなければならないことと
恋に落ちた男が他の女と恋に落ちた場合、その男を殺さなくてはいけない二つの鉄則があるのじゃ。
だが、その言葉に嘘があればその掟の効力は効かないのじゃよ』と
お婆ちゃんとお爺ちゃんは似た者同士だね
精霊に関した話が好きなところは一緒だ
ああ・・・お婆ちゃんが話してくれたのも・・・・・・
「様々な話がこの世界に溢れている
魔法使いだって、話に魅せられているんだ
―こんな話を聞いたことはないかい?
これはボクが小さい頃よく読み聞かせてくれたお婆ちゃんに、もう一回読み聞かせて・・・とよくねだったお話なんだ」
むかぁし、むかぁし とある湖に一人のウンディーネが住んでいました
ある日ウンディーネは湖に通りかかったある村人に見ました
少人数の男性たちと楽しそうにお喋りしたり、急ぎ足で走っているのをウンディーネは眺めていました
村人が嬉しそうにしていると、ウンディーネは幸せに
村人が辛そうにしていると、ウンディーネは悲しくなるので
『なんであの村人を見ているとこんな気持ちになるんだろう』と疑問でいっぱいになりました
ある日、村人は湖に住んでいるウンディーネに気付きました
「・・・ねぇ」
「!!!」
「君は誰なんだい?」
わ、私はと言おうとして声が出てきません
何故ならウンディーネは本来人間が持っている『心』を持っていないからです
「僕はツカサ。君の名前は・・・?」
「・・・・・・」
どうしよう、話しかけてくれたのに話せれないなんて
嫌われる・・・・・・どうしよう
慌てているウンディーネを見かねて村人はこう言いました
「-ねえ、名前が無いのなら僕が名付けてもいいかい?そうだな・・・
君はー」 湖に咲いている睡蓮を見て
「スイレンって呼んでもいい?」と言いました
村人に名付けられたウンディーネは村人と仲良くなり
春には舞い香る花を共に楽しみ、夏にはウンディーネが住んでいる湖に涼みながら二人でお喋りをし、秋に美味しい物を分け合って食べたり、冬には凍って綺麗な湖で温かいカフェオレとココアを寄り添いながら飲んでいました
二人はどんどん仲良くなっていきました
しかし・・・・・・
それをよく思わない人がいたのです
それは・・・
「ああ・・・っ忌々しい村人め。あのウンディーネは私が先に目を付けてたのに・・・!!!」と
遠くの木に隠れながら村人を睨んでいました
この魔法使いは相当悪い魔法使いで、昔惚れた女が自分に気がないと分かれば、魔法をかけて不幸せにしていました
ある女に惚れ、プロポーズをしたのに断れば相手を人形にしたり、嫌がれば幼い少女に姿を変えさせていました
ウンディーネはあの村人に恋慕を抱いている
さて、どうやって諦めさせようか・・・と企んでいるとある悪い考えが浮かび
早速行動をしようと湖から離れ、自分の家に帰りました
グツグツッ・・・
キュッ・・・ポンッ
コポポッ・・・・・・ボワンッ!!
煙が建物中満たしました
「ゴホッ。よ、ようやく出来上がったか・・・」
悪い魔法使いが作ったのは
「黒トカゲのしっぽ、マンドラゴラの粉末に毒入りワイン等々で出来た対精霊用嘘つき薬。飲めばたちまち
正反対の言葉を吐きかけ、ウンディーネの心はズタズタ!!この私が優しい言葉をかければ・・・
『あんなガサツな村人やめてよかった・・・だって貴方と出会えたんですから❤』と惚れちまうのさっ!!」
悪い笑顔を浮かべ、すぐ実行しようと思い・・・村人の家に行こうとしました
道中、悪い魔法使いはまたこう思いました
これは口移しだろうと妖精が飲めば人間になってしまうから、気を付けなければ・・・と
チュンチュン・・・村に鳥の鳴き声が響きます
村人の家の前に悪い魔法使いは物売りの婆さんに化け、作った薬はワインボトルに詰めていました
トントン ツカサの家のドアを叩くと、はーい待っててくださいと声がし
待っていると・・・
ガチャとドアが開き、「すみませんなんでしょうか?」とツカサが出てきました
「フェフェフェ。ワインは如何ですかなと物売りの婆が来たのですよ」
「あっ・・・美味しそうなワインですね」とツカサはワインに興味を引かれました
「お兄さん、よければ如何ですかな?このワインとても美味しいのですよ」
「えっ!?いいんですか?」
「ええ今試飲をしておりまして、是非・・・」
「わあっ・・・ありがとうございます」とツカサは婆さんが持っていたワインの入っていたグラスに
口を付け、飲んでしまったのです・・・それが特製の薬とは知らずに
「ぐっ・・・」ツカサは気を失い、倒れてしまいました
「くくくっ・・・間抜けな村人だ。精々あのウンディーネを泣かせないことだな」と
意識のないツカサに言葉をかけ、その場を去りました
―・・・しばらくしてツカサは目を覚ましました
「う・・・一体なんだったんだろう?」
今回起きたことをスイレンに話そうと湖に行きました
「スイレン、実は・・・」変なことがあったんだと続けようとしたら
「ある村娘のことが好きになったんだ」と口に出していました
二人とも驚き、慌てだしました
なにか言い換えなくては・・・とツカサが悩んでいると
「だから・・・」
「・・・そっか」スイレンは悲しそうに笑い、「応援してるよ」と言い残し湖の浸水部に姿を消しました
数日間スイレンはなんで水に帰らなかったんだろう?村人のこともっと先に告白していればよかったと
哀しみと後悔に暮れていました
何気なくドリアードの歌声に耳を澄ますと・・・
「あの村人は騙され~♪
悪い魔法使いの薬を飲んで嘘つきに~♪」と聞こえました
聞いてすぐツカサの家に行きました
「バンッ!!」大きなドアの音を立て、スイレンは中へ飛び込んでいきました
「ツカサッ!!」
「スイレン・・・」
「話は聞いた。どうすればいい?」
「それは―・・・お前みたいな化け物がボクの目の前から失せればいいんだ」
ツカサは泣き出しそうな表情とは裏腹に酷い言葉をかけだしました
「・・・」
「お前みたいな化け物はボクは大っ嫌いだ」
「・・・・・・」
くしゃくしゃに泣きながら、言いました
「どっかにいってくれな」言いかけたツカサの口をスイレンは唇で塞ぎました
「!?」
「・・・」
みるみるうちにツカサの顔は赤くなりました
同時にスイレンの姿はみるみるうちに姿を変えていきました
尖った耳は丸く、髪の色は藍色から茶髪に変わり・・・
人間になりました
「「え」」
二人は驚きました
「わ、私人間になっている?」
「綺麗だ・・・」ツカサは本心で称賛しました
「・・・・・・」カアッとスイレンは顔を赤くし、俯いてしまいました
「あ・・・すまない。罵倒した人に褒められても嬉しくはないよね」
「・・・ううん、魔法は解けたのよ」とスイレンはツカサに抱きつきました
この後、様子を見ていった悪い魔法使いは二人が結ばれたのを知るとウンディーネのことを諦め、
この村から出ていきました
ツカサとスイレンはいつまでも幸せに暮らしましたとさ
めでたしめでたし・・・
「面白かったかい?よかった・・・またここにおいで、次はもっと不思議な話をするよ。
バイバイ」
目を瞬きするとさっき話してくれた少年はいなかったそうだ
おしまい
次回は人外×少女ものの同じミライショウセツで公開していたもの(連載物)
当時回収していないキャラの過去話やら、色々書き切れていなかった話があつたので、今回それを加えたものもあります
お楽しみに