捕鯨反対!
「Waooooo!」
大歓声が上がった。
潮が高く吹き上がったのだ。
「ワンダフル!」
「アメイジング!」
海岸から見つめる人々は驚きの声を抑えなかった。
「西海岸だけじゃなく、こっちにも来るなんて最高!!」
白人女性が指差す方に親子連れらしい3頭のクジラが悠然と泳いでいた。
アメリカ東海岸にクジラの親子が回遊しているとテレビニュースが流れ、
大勢の見物客が集まっていた。
「こっちだけじゃないぞ。今朝のニュースでやっていた」
太った、白人の中年男性が言った。
「こんどはどこなの?」
白人女性はクジラに視線を向けたまま言った。
「ミシシッピー川だ。
河口付近に現れたそうだ」
太った男は答えた。
「そうなの~」
彼女は残念そうに言った。
この癒される光景を他人には見せたくないようだ。
「ちょっと不安だな。
こんなにクジラが来るなんて」
黒人少年が言った。
「何が心配よ」
いい気分に水を差す黒人を白人女性は睨んだ。
「異常気象とか、地震とかありそうで」
黒人少年は小さな声で答えた。
「そんな心配いらないわよ。
あんなに気持ちよさそうに泳いでいるもの」
白人女性は指を差した。
「日本じゃこんな光景見れないだろうな~」
太った男は言った。
「それもそうね」
白人女性は賛同し、高笑いを上げた。
「どうして?」
黒人少年は本当に意味が分からなかった。
「どうしてって、決まってるじゃない。
日本人に見つかったら、食べられちゃうでしょう」
彼女はホークで差して口に運ぶ手振りをした。
笑い声が巻き起こった。
「こんな優しくて賢いクジラを食べるなんて、
本当に日本人は野蛮よね」
白人女性は観客の方を向いて言った。
「クジラを取るな」
「捕鯨反対」
「日本人は野蛮」
と人々は叫んだ。
丘の上での人々のやり取りに関係なくクジラの親子は悠然と泳いでいた。
いや・・・
そうでもなかった。
人々の話に耳を傾けていた。
「バカな奴らだ」
笑い声が上がった。
「貴様らの命は俺の手の中にある」
C国海軍中佐は呟いた。
最新鋭クジラ型潜水艦の中で。