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二度目の修行と、その間の取り引きと(3)

前回のあらすじっぽいもの:湖を見つけはしゃぐナナ姫と、それぞれの水着姿を想像するアキラ

「どう? ナナちゃん」


 そうしてアキラが脳内で水着に着せ替えしている間にもナナ姫へと追いつき、砂浜にいるナナ姫にコガが道の上から声をかける。


「気持ち良いです! 水に乗せられた風が、程よく冷たくて……『変化術』で作られたとは思えませんっ」


 振り返りながら、嬉しそうに答える。


 その笑顔を見てコガもまた、妹を見る姉のような、優しい笑みを浮かべて、そう、と返事をする。


 二人のその様子を見て、仲が本当に良いんだなぁ、とアキラは思った。


「では、そろそろ行きましょうかっ。コガちゃん」

「もう良いの?」

「はいっ。十分見ましたからっ」


 二人はそう引き続いて会話をし、ナナ姫が水際から離れようと歩いてくる。


 その時、砂に足を取られたのか――


「あっ!」


 ――思っていた以上の力が足の裏にかかったのか、くんっ、と足が引っ張られたかのように一歩を踏み出せず、その場で尻餅をついてしまった。


「大丈夫!?」


 ドジを踏んだなぁ、と苦笑いを浮かべるアキラとは対称的に、コガは慌てて飛び降りて、ナナ姫のもとへと駆け寄る。


「腰とか打ってない? 立てる?」

「そんな、大袈裟ですよ。ちょっとこけただけです」

「それでも心配は心配っ。足とか怪我、してない?」

「本当、大丈夫ですよ。ちょっと手をついて汚れてしまったのと、あとは服にも砂がついてしまったぐらいです。ごめんなさい」

「謝らなくていい。汚れなんて落とせば良い。服だって洗えばいい。怪我さえして無いなら、それで良い」


 過保護すぎるなぁ……とアキラは思うが、一昨日「露出癖のある変態」のレッテルを貼られた時の被害妄想を思えば、むしろこうならないとおかしいか、と思いなおした。

 大方、これで捻挫してそれがキッカケで歩けなくなるのでは、とか考えてしまったのかもしれないと。


「……ん?」


 それよりも……アキラは気になるものを見つけた。


 手を取り、ナナ姫の肩をコガが抱えるように立たせた、その足元近くの水面に浮いている……ちょっとした金の存在。


 ちょうど、ナナ姫の手の大きさぐらいのソレは、プカプカと、水の上に浮いていた。


 ……いや、そう思っている間にも、沈んでしまった。

 それでも浅い場所なので、その形は離れて上から見ているアキラでも十分に分かるのだが……光を反射するソレは、間違いなく金色の薄い何かだった。


「ねえ」

「あ、はい。すいません。ドジを踏んでしまいまして……」

「ああ、うん。怪我してないならそれで良いんだけど……それよりも、それって何か分かる?」

「それ?」


 と、アキラの指先をナナ姫が追う。

 そして見つける。

 自分のすぐ近くに、金の塊が落ちているのを。


「アレ? どうしたんでしょう、これ?」


 しゃがんで拾おうとするナナ姫を手で制し、コガが代わりに拾い上げる。


 指だけで掴みあげることが出来るほどの、小さな金の塊。


「……水への『変化術』に失敗した分の金?」

 水属性の前は金属性なので、その可能性は十分にある。

 塊ではなくこうした小さな塊群から、水を金に変えていったのなら、だが。


「これの何にそんなに引っ掛かってるの?」

「……いや、オレにも分からんけど……ちょっと……な」

「……そう。で、どうするの? 持って行く?」

「…………いや、いらない。どうせ必要になったら水から作れば済む話だし」

「そ」


 その答えを聞いて、塊を水へと変えるコガ。

 そこに『形態変化』も忘れず、手の平で包み込める水のボールが完成。

 水に触れれば液体へと戻るよう細工したソレを湖の中へと投げ込んで、金を水へと戻して終えた。


「…………あれ?」


 そこで、コガはあることに気がついた。



 金属の板を仕込んでいるはずのナナ姫に触れているのに、『変化術』と『形態変化』を、あっさりと行えたという事実を。



「……もしかしてナナちゃん、今お腹と胸に鉄板、仕込んでない?」

「っ!」


 そう指摘されて、ナナ姫もようやく気がついた。

 自分の隠し事に、ボロが出てしまったことを。


「どうして? もし襲われたら危ないのに……」

「それは……」


 言い淀む。


 だが……ここで隠す方が、コガのネガティブ妄想を加速させるだけだと思い、ナナ姫は告げた。


 昨日の夜行った、自分の覚悟と行動を。



「……実は昨日から、『変化術』を教わってるの」

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