リーシアの出歯亀
「あの二人……さっそくやっているわね……」
当一とシェールの後を追いながら、リーシアは言った。
自分がリーシアであると、バレないようにして、黒いカラーコンタクトをしているし、髪は結んで帽子の中に隠している。
「これは見物だわ」
そう言って、カメラを構えるリーシア。
『シェールちゃん達の事をこれで撮ってきてくれないかしら?』
祥子にそう言われたのは、昨日の夜の事であった。
『この年になってしまうと、自分で恋愛をする事もないし、他人の恋愛くらいしか楽しみが無いのよ』
と、続き。リーシアは、祥子からカメラを渡されて、こう言われた。
『二人がキスしているところなんて撮ったらご褒美をあげちゃう』
祥子はそう言い終えると、リーシアの背中を押していった。
「私にとっても、楽しみだからね」
あの二人の事を見るのは面白い。
リーシアは、あの二人がどこかでキスをする事など無いと思っているが、それでも期待をしてしまう。
「どっかで、当一が転んだりして、その拍子に二人の唇が重なるとか……」
あの二人だったら十分あり得る。そう思ったリーシアは顔が緩んでいった。
「クックック……」
たまらずに、笑うリーシア。そこに背後から声をかけられた。
「お前、何を笑っているんだ?」
リーシアが後ろを振り向くと、そこには、あの女の子がいた。笑っていた顔が引きつって、妙な表情のままで固まっている。
「もしやと思ったが、やっぱりお前か……なんかニヤニヤしていて気持ちわるいぞ」
「変装をしたつもりだったんだけど、バレちゃうものなの……?」
その子には、リーシアであるというのが、一発でバレた。
「それが変装? 変なコンタクトをしているだけじゃないか」
自分の特徴であった紫の髪を隠したくらいでは、この子にはわかってしまうものらしい。
「あ……行っちゃう……」
そう呟いたリーシアは、その子の前から去っていこうとした。
「待て! 何をしているんだ」
大きな声を出した女の子。リーシアはその声で当一達が気づくのかもしれないと思い、急いで建物の影に隠れた。
「教えてあげるから黙って……」
そう言い、リーシアは女の子に状況を話した。そうするとその子は、リーシアの事を、ジトリとした目で見た。
「なんだ? 他人のプライベートなんか、覗いて楽しいのか?」
「それくらいしか、楽しみが無いもので……」
リーシアがその子の言葉にそう答えると、小さく嘆息をした。
「お前の行動には呆れるな……まあ、好きにやればいい」
そう言って、その子は、リーシアの前から去っていこうとした。
一度、リーシアがターゲットにしている二人組をチラリと見た。
「あの白い髪は……」
女の子はシェールの事を見て、そう言ったのだ。
そして、その子は隣の少年の事を見て、また驚いた。
「当一……また、あの子と……」
そう、一美が言うと、胸の所を押さえた。
「それじゃあ、私は……」
リーシアがそこまで言ったところで、女の子はリーシアの服を掴んだ。
「私も行くぞ……」
リーシアはその女の子から発せられるプレッシャーを感じながら、無言で首を縦に振った。




